「家庭教師は知っている」 青柳碧人

「子どもが守られるのは、運によってではいけない」by 原田

休みの日に「面白い本があるかなぁ」と思って
入った書店で出会った本です。
著者の青柳碧人さんは「むかしむかしあるところに死体がありました」
を読んで、発想が面白いと思ったので購入しました。
大好きなミステリー小説だったこともあります。

主な登場人物

原田保典…(株)SCIデュケーション 家庭教師派遣会社主任
沼尻室長…原田の上司
清遠初美…原田の後輩、新人職員
リサ…女子高生、原田の部屋に入り浸っている

気になる家庭を訪れる原田

原田は家庭教師派遣会社の主任。
家庭教師の大学生の面談を行い、気になる家庭を訪問。
虐待の可能性がないか調査する。

以前に虐待の現場を発見し通報した社員の働きをきっかけに
児童相談所から協力を要請される。
会社の上層部は会社のイメージアップもあり
協力を惜しまず、各教室に「訪問担当」を設置する。
原田もその一人。

現場の多くの職員は、この決定に否定的。
原田の上司、沼尻もその一人。
「子どもの勉強以外のプライベートに立ち入られて
嬉しい保護者なんていない。顧客を失う」が自論。

高校生リサの存在

原田の家に入り浸っているリサ。
リサが酔っ払いに絡まれている所を原田に助けられる。
それ以来、原田の家に入り食事を作っている。
原田は家庭訪問先の話をなんとなくリサにし、
リサの何気ない一言でその家の闇に気付くのだった。

原田のトラウマ

大学4回生で卒論を自宅で書いていた時の事。
マンションの2階に原田の部屋から、向かいの家が見える。
昼の3時頃になると男性の怒号が聞こえてくるのだ。

ある日いつもより大きな声が向かいの家から聞こえてくるので
窓を開けると、向かいの家も窓が開いていた。
あざだらけの女の子と目が合う原田。
女の子は父親に引きずられて見えなくなってしまった。
その家には手作り雪だるまの人形があった。
紺色のシルクハットに黄色いマフラー
尖りすぎたニンジンの鼻に赤い二つの目。

原田は次の日から卒論を大学で書くようになった。
少女を助けられなかった負い目が
原田の心を縛り付けていた。

新人職員 清遠初美

以前原田が虐待されている子どもを保護した記事を読み
原田に憧れてSCIデュケーションに就職した初美。
原田に家庭訪問の同行を願いで、食事にも誘う。
単なる憧れだけではなく、原田に好意がある素振りを見せる。

あのぬいぐるみが…

大学生、日比野照之が原田に面談を申し込んできた。
小学年生の博を担当している。
日比野が博の家を訪ねると、女装した博が居た。
自分がトランスジェンダーであることをカミングアウトする。

勉強を見ている時に博の足首に輪をはめた様に赤くなり
所々、かさぶたになっているのに気付く。
傷の事を聞くと博は「いい子じゃなかったから…」
日比野は博が父親から虐待されているのではないかと疑い
原田に打ち明けたのだった。

原田が博の家を訪問すると父親の丈一郎が迎えた。
博の両親は離婚しており、父親との二人暮らし。
丈一郎は博の部屋に案内し、寝相が悪くてベッドから落ちるのを
防ぐために足に手錠をしていると説明される。
その後、丈一郎はスクールカウンセラーで息子の話より
自分の仕事の話を延々と続ける。

原田がふと部屋の飾り暖炉に目を向けると
そこには、あの忌まわしい雪だるまの人形があった。
何故、この家にあの人形が…。
原田の頭は混乱する。

【感想】

本のカバーに大まかなあらすじが載っています。
最後に「驚愕のラストが待ち受ける」の一文があり
どこが驚愕のラストなのか…と予想しながら読みました。

女子高生リサは予想通りでしたが、ラストは本当に
「そこか!? マジか~~~~っ」
青柳さんにやられました。
さすが早稲田大学クイズ研究会OB !!

本書は連作短編集となっています。
4つの家を訪問していくなかで
原田の抱えるトラウマ
女子高生リサとの出会い
新人職員、清遠初美との距離感
などが書かれていて長編としても楽しめます。

この本を書くにあたって、どのような取材をしたのかはわかりませんが
大人のフラストレーションのはけ口が我が子に向かう。
人に知られてはならないこと…悪い事と自覚しているので隠す。
子どもは親を庇う。

ふと思ったのですが、虐待をしている親は他人が家に入られることを
拒むのではないだろうか??
家庭教師を頼むのだろうか??
そんな素朴な疑問が湧きました。

【目次】
鳥籠のある家
逆さ面の家
祖母の多い家
蠅の飛ぶ家
雪だるまのあった家
エピローグ

284ページ
2019年3月25日第1刷発行
集英社文庫
本体価格 620円

著者 青柳碧人
1980(昭和55)年、千葉県生れ。
早稲田大学教育学部卒業。
早稲田大学クイズ研究会OB。
2009(平成21)年、「浜村渚の計算ノート」で「講談社 Birth」小説部門を受賞し、デビュー。
小説執筆だけでなく漫画原作も手がけている。

著書
「浜村渚の計算ノート」シリーズ
「ヘンたて」シリーズ
「朧月市役所妖怪課」シリーズ
「西川麻子は地理が好き。」シリーズ
「ブタカン!」シリーズ
「彩菊あやかし算法帖」シリーズ
「猫河原家の人びと」シリーズ
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』など

遥かなる水の音 村山由佳



今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

https://docs.google.com/document/d/16tYQEzsX76riqN-3FWtc437c5Fegun2IZCzN3u_m1MY/edit#heading=h.n8izfi7mfmtk



テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

ラジオネーム ゆみこさん

「村山由佳さん」

①村山由佳さんのおススメどころ
最近は官能的な側面ばかりクローズアップされている由佳さんですが、本質は深く“人”を描く人。
柔らかくしなやかで、でも心はジュッと焦げそうに熱い人となりも大好きです。

②おススメの作品
直木賞受賞作の「星々の舟」もとてもいいけど、一番は何と言っても「遥かなる水の音」。 

③気になる作家さん
最近出会った作家さんでは一木けい(いちき けい)さん。
ビュー作の「1ミリの後悔もない、はずがない」がど真ん中でした。
次作の「愛を知らない」はちょっと物足りなかったけど、これからが楽しみな作家さんです。

「遥かなる水の音」
パリで、ひとりの青年が死んだ。
最期をともに過ごした同居人は、ゲイの中年フランス人だった。
青年の遺言は、「遺灰をサハラにまく」こと。
フランス、スペイン、モロッコ―。
青年の姉、友人のカップル、同居人のグループは、様々な思いを抱えたまま、遺言を叶える旅に出るが…。

村山さんと深夜特急シリーズの沢木耕太郎さんとの対談が集英社のサイトにあります。

https://www.shueisha.co.jp/harumizu/taidan/index.html

村山由佳 プロフィール
1964(昭和39)年、東京都生れ。立教大学卒。
1993(平成5)年『天使の卵―エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。
2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞した。

著書
『アダルト・エデュケーション』
『放蕩記』
『天使の柩』
『ありふれた愛じゃない』『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』『嘘 Love Lies』『ミルク・アンド・ハニー』『燃える波』など。

著者 一木けい

1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。
2016年、「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2018年、受賞作を含む単行本『1ミリの後悔もない、はずもない』(新潮社刊)でデビュー。
現在、バンコク在住。

「1ミリの後悔もない、はずもない」
【あらすじ】
「俺いま、すごくやましい気持ち……」わたしが好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。あの日々があったから、そのあと人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられた――。
ひりひりと肌を刺す恋の記憶。
出口の見えない家族関係。
人生の切実なひと筋の光を描く究極の恋愛小説。
R-18文学賞読者賞受賞作。

エンジェルフライト 国際霊柩送還士 佐々涼子

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「私の号泣本」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/08/9-3_honsuki-club_20190817.mp3

ラジオネーム きりえ

「エンジェルフライト」佐々涼子 集英社文庫

① この本のオススメどころ
「国際霊柩送還」という仕事をこの本で初めて知りました。
海外で亡くなられた方の遺体を遺族の方に形を整えて届ける仕事を描くノンフィクションです。

亡くなられた方の遺体を迎える遺族の気持ちを考えると涙が止まりませんでした。
特に幼い子供を亡くされた親御さん気持ちは、私にも子供がいるのでよく分かります。
そしてそんな遺族の気持ちに寄りそうように霊柩送還の仕事をされる「エア・ハース」の方々を尊敬します。

② この本との出会い
Facebookのグループで紹介されたレビューが気になっていたところ、レビューを投稿された方が無料プレゼントしてくださるとのことでお送りいただきました。

③ 直近の号泣した出来事
幸せなことに、ここ最近は泣くことなく暮らしていますが、小学6年生の娘の号泣にはたまに付き合います。
「宿題をママが手伝ってくれない」「着たい服がない」など、大人から見たら些細なことで声が枯れるまで泣き叫びます。
悲しければ泣く、イヤな物はイヤという、嬉しければ飛び跳ねる。
本能のままに生きてて羨ましい限りです。

【エンジェルフライト 内容】
外国人が日本で亡くなったら遺体はどうなるのだろう。
日本人が外国で亡くなった場合はどうするのか。
国境を越えて遺体や遺骨を故国へ送り届ける「国際霊柩送還」という仕事があり、エアハース・インターナショナル株式会社は日本初の専門会社である。
エアハースは、二〇〇三年の会社設立以降、スマトラ島沖地震、パキスタン邦人教職員殺害事件、ミャンマーでのフリージャーナリスト殺害事件、アフガニスタンの国際援助団体の職員殺害事件の国際霊柩送還を担当している。
大きな事件、事故では必ずといっていいほど彼らの働きがあるのだが、それが表に出ることはない。
なぜならそれは死を扱う仕事だからだ。
遺族、新入社員、創業者、ドライバー、二代目、そして取材者。
国際霊柩送還に関わるそれぞれの立場から、死とは何か、愛する人を亡くすとはどういうことか、が語られる。


著者佐々涼子
1968年、神奈川県生まれ。
日本語教師を経て、ノンフィクションライターに。
2012年『エンジェルフライト国際霊柩送還士』(集英社)で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。

著書
『駆け込み寺の男』
『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場』(ともに早川書房)などがある。

ホンスキー倶楽部おすすめのエッセイ10選

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル毎週日曜日午前11時~11時半放送
「ホンスキー倶楽部」で紹介した本の中からエッセイを10冊紹介します。

タキモトの世界 久住昌之

紹介者 ラジオネーム KON
【この本のおすすめどころ】
知る人ぞ知る妙なカメラマン滝本淳助さんの独特な世界観を孤独のグルメ原作者で、斜め上なエッセイを得意とする久住昌之さんがレポートした妙な一冊。
ハマる人にはたまらない。
一度、絶版になったものの復刊された伝説のサブカル本。

復刊ドットコム
374ページ
2013年3月16日第1刷発行
本体価格 2500円

負け犬の遠吠え 酒井順子

紹介者 ラジオネーム 風呂好きシャンシャン
【この本のおすすめどころ】
酒井順子さんの言う“負け犬”とは、未婚、子供なし、仕事をしている30代以上位の独身女性のことで。
こういう女性は、世間からの無言の圧力や風当たりがある。

なぜか?結婚し家庭を持ち子供がいる女性の方が、世間的には地位が高かったり女性としての価値を認められる傾向がある。
が、そこにあえて逆らわず反旗を翻さず、最初から腹を見せて「私は負け犬ですよ~でも何がいけないの?」と良い意味で開き直る。その方が生きるのが楽チン。
その開き直りや潔さが、読みながら痛快で負け犬の端くれの私としても、ブラボー

読んでいて気持ちがいいです。
でも、酒井さんは最終的には「負け犬だって勝ち犬だって、それぞれその世界で生きるのが大変で頑張っているんだ」と双方を冷静に温かく見ている。
その酒井さんの冷静で公平な姿勢や分析もとてもいいです。

とにかく世の負け犬の女性たちは、この本を読めばもやもやした迷いや悩みは消え、自分に自信を持って胸を張って溌剌と明るく生きていける元気が出ると思います。

講談社文庫
2006年10月14日第1刷発行
本体価格 610円
電子書籍あり

日日是好日 森下典子

紹介者 ラジオネーム かーる
【この本のおすすめどころ】
茶道具、掛け軸、和菓子などの美しい写真からこの本は始まります。
季節の和菓子も芸術的な茶道具も茶道の楽しみの一つです。
なぜお茶を続けるのか?何が面白いのか?
そんな疑問をもつ方に。

余分なものをそぎおとし、自分では見えない自分の成長を実感させてくれるもの。
すぐにはわからない代わりに、ある日を境に突然、視野が広がるその醍醐味を何度も味わうことができるもの。
それがお茶だと森下さんは言います。

その例えとしての雨の話が印象的でした。
まえがきの中に、
『20歳のときには分からなかった季節の移ろいが、毎年お茶をを繰り返すうちに肌で感じられるようになる描写があります。
あるとき、ふと五感が研ぎ澄まされて土の香りや雨の音がダイレクトに感じられるようになるさまは、驚きと喜びに溢れています』

お茶を通しながら四季を感じられるようになった日々のしあわせ。
これを15の観点から伝えてくれます。
特に第13章「雨の日は、雨を聴くこと」は作者の心の揺れと気づきの素晴らしさに心を打たれます。

静かな動きの一つ一つが人生の記憶として積み重なり、ただ今ここにいる喜びに繋がっていくのです。
茶道の奥深さと人生の深みを伝えてくれる美しい描写の一冊

新潮文庫
252頁
2008年10月28日第1刷発行
本体価格 550円

幸福という名の武器 佐藤愛子

紹介者 ラジオネーム うまうま
【この本のおすすめどころ】
さまざまな週刊誌(週刊朝日、サンデー毎日等)や新聞、季刊誌などで、世相や親子の気持ち、世代、友人とどこかに必ず泣きそうになるのやハハハハハと笑いこけるざっくばらんな辛口エッセイ

集英社文庫
240ページ
1988年6月20日第1刷発行
本体価格 400円
電子書籍あり

人生エロエロ みうらじゅん

紹介者 ピロシキ
【この本のオススメどころ】
この本は週刊文春で連載されていたものを文庫シリーズ化にまとめたものです
現在では「されど人生エロエロ」につづき3冊目の「人生エロエロだもの」までまとめられています

僕にとっては同世代(多分同級生)でありDNAの99.9%が一致しているという驚異のシンクロ率になっているに違いない、とひそかにリスペクトしているみうらじゅん師ですが、この本を読んでしまって、ますます親近感を実感、という楽しい気分よりも、まるで自分のドッペルゲンガーがみうらさんの仮面をかぶって存在しているか、自分が別名みうらじゅんとなって存在しているパラレルワールドが隣にあるんじゃないか?
という妄想まで抱いてしまって不気味な気分にさえなってしまいます。

僕が知らないうちにしたためて封印していた恥ずかしいコトノートをみうらじゅん師がかってに開封し世に出したんじゃねえの?って言うくらいです。

旧ルパン三世の第一話の峰不二子ちゃんや時代劇のおんなくノ一にドッキリとしたり、小学校の行き帰りにわざとピンク映画館のポスターのある街角をより道したりといった小さいころの甘酸っぱい思い出からラブラドールレトリバーはラブドールとボーヴォワールはボーボーアールと連呼して袋閉じを切り取るといった現時点での誤読・みうら迷コピーまで、あるある、あったあったネタ満載で付箋を貼りはじめると横に貼り天地に貼り・・と大変な状態になってしまうのであった。

こんな風にハゲドウ:激しく同意したりしているととリスナーの本スキ女史たちは「馬鹿ねえオトコって」とか、コレ盛ってるでしょ?と感じられるかも知れませんが、ソレ全くチガイますよ。

オトコなんて違うのは髪の毛の量とベルト回りのサイズだけで、中身もアタマのなかも全くおんなじ!自明の定理、宇宙の法則、なのです。
というわけで この本は、いつまでたってもオトナになれない困った男子たちにも、その男子を呆れてしまったり、馬鹿ぶりをなかなか理解できない女子たちにも相互理解と「前進的かつ不可逆的な対話と交渉」のためのレジュメとしても、しっかりと自信をもってオススメし指定図書に値するものであります。

文春文庫
275ページ
2016年6月10日第1刷発行
本体価格 700円
電子書籍あり

とにかく散歩いたしましょう   小川洋子

紹介者 ラジオネーム 大乃国のぶお

【この本のおすすめどころ】
毎日新聞に定期連載されたエッセイをまとめられたもの。
これを読むことは、小川作品の源流を辿ったような気分になれます。
小説のこの部分はエッセイのあのエピソードだ、と繋がるのです。

エッセイの中の章「ふと、どこからともなく」は小説「人質の朗読会」。
エッセイ「悲哀はお尻の中に」は小説「いつも彼らはどこかに」。
ベストの理由はもう一つ。私と同時期にこれを購入した友人に毎日1話分ずつ読んだその感想を送ったのでした。

相手は嫌な顔もせず返信をくれるから楽しくて仕方のない毎日でしたが、やがて終わりがやってきます。
寂しくなるなぁと思い始めた時、思いついたのです。そうだ、振り出しに戻ろう!
そして二巡目が始まったのでした。本と深く繋がれただけでなく、本仲間とも絆の強くなった一冊です。

文春文庫
255ページ
2015年7月10日第1刷発行
本体価格 660円
電子書籍あり

変見自在シリーズ 高山正之

紹介者 ラジオネーム ナンさん

【この本のおすすめどころ】

週刊新潮の時事コラムをまとめた本なので短い文章にも関わらず。
圧倒的な情報量と記者の著書ならではの鋭い指摘と辛辣な視点で世の中に蔓延るフェイクニュースをばっさりと切る痛快さ。

また本のタイトルが第一弾の「サダム・フセインは偉かった」や最新刊の「日本よカダフィ大佐に学べ」から分かるようにブラックジョークを交えた語り口の面白さがあり。
このニュースは裏に、こんな事があったのかと目から鱗が落ちます。

新潮文庫

「百年の孤独」を代わりに読む  友田とん

紹介者 ラジオネーム 冷麺マン4世

【この本のおススメどころ】
まず、ラテンアメリカ文学の代表作であり、ノーベル文学賞の世界的な名作『百年の孤独』が登場します。
ああ、聞いたことある。
焼酎でしょ?そっちじゃなくて、小説?
聞いたことはあるけど、読んだことはないんだよなあ。という方。
あるいは、挑戦したものの登場人物の多さに「The 折(挫折)」した方のための本です。
何しろ作者の友田とんさんが、ドリフのコントのような軽快さと、研究者顔負けの探究心で、代わりに読んでくれるのです。
何を?『百年の孤独』を。
もちろん本家の『百年の孤独』と、あわせて読むと楽しさは倍増します。
副読本としても、大笑いエッセイとしてもオススメします。

203ページ
2018年5月6日第1刷発行
本体価格 1200円

にょっ記 穂村弘

紹介者 ラジオネーム ぶるぼん

【この本のおススメどころ】
穂村弘さんの「現実の話なのか、妄想の話なのか、どちらなんだろう?っていう曖昧なところ」がオススメです。
日記でなく「にょっ記」、「にょ」の響きも好きです。
この「にょっ記」は続編の「にょにょっ記」「にょにょにょっ記」と3冊あるのですが、どれもとても面白く穂村弘さんの文章が軽快でスラスラ読めてしまいます。

クスっと笑えるものや爆笑するものもあれば、たまに切実なものも混ざってますが、穂村弘さんの世界観を堪能できる本だと思います。
実は私が購入したものを少しの間放置していたら先に夫が読んでいて、夫がすっかりハマって3冊一気読みしてました。
難しく考えないで読めるのもいいのでしょうね。

文春文庫
179ページ
2009年3月10日第1刷発行
本体価格 600円
電子書籍あり

探しているものはそう遠くないのかもしれない 新井見枝香

さいごは私がおススメするエッセイです。

【この本のおススメどころ】
筆者の新井さんは東京都内の書店員さん。
芥川賞や直木賞と同日に「新井賞」を発表していて
新井賞受賞作品の方が芥川賞・直木賞作品より
売れるという現象さえ起きている
カリスマ書店員さんです。


GLAYが好きで、一人で居ることが好きな新井さん。
そんな新井さんの書店員としての日常や
家での様子が赤裸々に書かれています。

読んでいて楽しいのは新井さん以外の登場人物の設定です。
実名やイニシャルではなく、その人の特徴を捉えてニックネームで
書いてあります。
課長は人気者書店員で「アルパカ課長」
係長は「カンガルー係長」
売れっ子男性作家の「シェパードさん」
名前の後にはわざわざ(仮名)と書いてある。
わかるよ~~(笑)
そして私はそのニックネームからどんな人か妄想しながら読みました。

話は脱線して違う方向に行ったかと思えば
「ミステリーの様に伏線なのだ」としれっと言い
売れ残ったスープを従業員が持ち変えれるとしたら…
と妄想で話が進んでいきます。

文章でも「私は嘘がつけない」と書いてあるように
嫌なことは嫌とバッサリ切り捨てて小気味よく
果てしない妄想は着地点かあったりなかったり。
それでいて一気に読み終わってしまうのは
新井さんの文章力と表現力と妄想力ではないでしょうか。

秀和システム
231ページ
2017年12月16日第1刷発行
本体価格 1000円
電子書籍あり



なずな 堀江敏幸

今回は5月12日放送のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。

兵庫県 ラジオネーム かのんパパ
堀江敏幸「なずな」集英社

① この本のオススメどころ
この育児小説は、四十代独身の新聞記者である男性が、生後二ヶ月の赤ん坊の世話をすることになった体験を綴っています。

ミルクを作り、飲ませ、げっぷを出させ、一瞬いっしゅんの成長に感動し、小さな変化に戸惑う。
赤ちゃんに対するすべての描写が味わい深く愛しかったです。

「小さな子どもがひとり身近にやってきただけで、ものごとを見る心の寸法は変わってしまうのだ」とは、その通りだと思いました。

これから子育てをする人も、かつて子育てに奮闘した人にもオススメです。

② この本との出会い
今は閉店してしまった、Futaba+神戸マルイ店の店主さんが、閉店翌日ささやかな打ち上げと称して冷麺屋に来て下さった際、今から3年半前、一週間後に出産を控えたわが娘の誕生を祝ってプレゼントしてくれました。
ちなみに、その店主さんは、今は京都・一乗寺の恵文社さんで、後継ぎをされています。

③ 子どもの頃の思い出
自分の幼少期の記憶があまりないので、娘のカノンの、生まれる前の記憶についてお話します。半年前、娘が3歳になった時に聞いてみました。

「カノンちゃんは、こうやって飛行機みたいに飛んでたんだよ」
「真っ暗な階段に並んでて、ちょっと怖かったの」
「ママのお腹のなかは、お風呂みたいに温かくて何か赤と黒と黄色だった」

3歳の証言。リアルでも創作でも、ビックリですよね。

【あらすじ】
新聞記者の私はやむない事情から弟夫婦の子、なずなを預かることになった。
四十代半ば独身の私にとっては、生後二ヶ月の赤ん坊を相手にミルクをあげるのもおむつを替えるのも未知の体験。
何気ない仕草や発声に様々な発見をしながら、ジンゴロ先生や友栄さんら周囲の温かい人々に見守られて、私はなずなとの暮らしを始める。
生命の瑞々しさに溢れた育児小説。
第23回伊藤整文学賞受賞作。

集英社文庫
464ページ
2014年11月20日第1刷発行
本体価格 740円


著者 堀江敏幸
1964(昭和39)年、岐阜県生れ。
1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、
2001年「熊の敷石」で芥川賞、
2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、
2012年『なずな』で伊藤整文学賞、ほか受賞多数。

著書
『郊外へ』
『いつか王子駅で』
『めぐらし屋』
『バン・マリーへの手紙』など多数

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菜の花物語 椎名誠

今回紹介する本は、4月7日に放送したラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した1冊です。
テーマは「春」です。

東京都 ラジオネーム お茶屋のさとし

椎名誠 「菜の花物語」 集英社文庫

⓵ この本のおススメどころ
椎名さんの本はとても読みやすく肩肘張らずに楽しめます。
中でも私小説は実名で書かれたものも多く、デビュー作の『さらば国分寺書店のオババ』から馴染んだ人達が多数お出ましになります。
個性が強い友達が多く、現在でもイラストレーター、編集者、弁護士などと活躍され名前を目にすることも多いのでそれも興味深いです。

こちらの『菜の花物語』は11の短編で、椎名さんには珍しく、関わってきた女性(と言っても恋愛云々でない)との、決して大きな出来事などではなく、仕事や遊びの中での ごくごく日常が綴ってあり 優しさが滲み出ている小説だと感じました。

表題作 『菜の花』はインタビュー依頼があった椎名さんを取材する記者が遅刻を詫び、殺風景と察した仕事場に季節の花を! と持参したものと、椎名さんの記憶にある菜の花畑の思い出を綴ったものです。椎名さんに興味がなくても、ついついその世界観に惹きこまれてしまうようです。
ちなみに表紙画は作中に何度も登場し、椎名作品の殆どのイラストを手がけている 古い盟友沢野ひとし氏によるものです。

⓶この本との出会い
10代は活字が苦手であまり本など読まなかったのですが、たまたま手にした、椎名誠さんの旅エッセイ(わしらはあやしい探検隊シリーズ)が読みやすいうえに途方もなく面白くて、読み漁るうちに、私小説も書かれていて それがエッセイといろんなところでリンクします。

身の回りの事を綴るエッセイがそのんま小説にもなっていて、この『菜の花物語』に辿りつきました。

⓷ お茶屋のさとしさんの春の想いで
僕は四月生まれで学生の頃、誕生日は始業式当日にぶつかることが殆どでした。なので、何かとせわしい始業式に誰かの誕生日など覚えていてもらえず、「おめでとう」と声をかけてもらった事などありませんでした(家庭でもイベントには無頓着でした)

社会人になり、今の仕事がお茶の卸売り業なのですが、『走り』と呼ばれる一番摘みの新茶が九州から届く時期が誕生日に被り、職場でも他人の誕生日どころではないくらい多忙なので ここでもまた同じ轍を踏み、春とは僕としては誕生日がある季節なのですが、だからといってイベントとは無縁な春なのです。


著者 椎名誠 74歳
1944年東京生まれ。作家。
純文学からSF小説、紀行文、エッセイ、写真集など、幅広い作品を手がける。
大の科学好き。1990年、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。
『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)

著書
『家族のあしあと』
『そらをみてますないてます』
『すばらしい黄金の暗闇世界』
『水惑星の旅』など多数


最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。