遥かなる水の音 村山由佳



今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

https://docs.google.com/document/d/16tYQEzsX76riqN-3FWtc437c5Fegun2IZCzN3u_m1MY/edit#heading=h.n8izfi7mfmtk



テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

ラジオネーム ゆみこさん

「村山由佳さん」

①村山由佳さんのおススメどころ
最近は官能的な側面ばかりクローズアップされている由佳さんですが、本質は深く“人”を描く人。
柔らかくしなやかで、でも心はジュッと焦げそうに熱い人となりも大好きです。

②おススメの作品
直木賞受賞作の「星々の舟」もとてもいいけど、一番は何と言っても「遥かなる水の音」。 

③気になる作家さん
最近出会った作家さんでは一木けい(いちき けい)さん。
ビュー作の「1ミリの後悔もない、はずがない」がど真ん中でした。
次作の「愛を知らない」はちょっと物足りなかったけど、これからが楽しみな作家さんです。

「遥かなる水の音」
パリで、ひとりの青年が死んだ。
最期をともに過ごした同居人は、ゲイの中年フランス人だった。
青年の遺言は、「遺灰をサハラにまく」こと。
フランス、スペイン、モロッコ―。
青年の姉、友人のカップル、同居人のグループは、様々な思いを抱えたまま、遺言を叶える旅に出るが…。

村山さんと深夜特急シリーズの沢木耕太郎さんとの対談が集英社のサイトにあります。

https://www.shueisha.co.jp/harumizu/taidan/index.html

村山由佳 プロフィール
1964(昭和39)年、東京都生れ。立教大学卒。
1993(平成5)年『天使の卵―エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。
2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞した。

著書
『アダルト・エデュケーション』
『放蕩記』
『天使の柩』
『ありふれた愛じゃない』『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』『嘘 Love Lies』『ミルク・アンド・ハニー』『燃える波』など。

著者 一木けい

1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。
2016年、「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2018年、受賞作を含む単行本『1ミリの後悔もない、はずもない』(新潮社刊)でデビュー。
現在、バンコク在住。

「1ミリの後悔もない、はずもない」
【あらすじ】
「俺いま、すごくやましい気持ち……」わたしが好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。あの日々があったから、そのあと人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられた――。
ひりひりと肌を刺す恋の記憶。
出口の見えない家族関係。
人生の切実なひと筋の光を描く究極の恋愛小説。
R-18文学賞読者賞受賞作。

空は逃げない まはら三桃

「森羅万象の呼吸を味方につける」by 光徳

とある大学の陸上部。
棒高跳びの練習をするA太郎とB太郎。
A太郎こと佐藤倫太郎とB太郎こと佐藤林太郎。
AとBは血液型に由来している。

B太郎は高校の時から棒高跳びで好記録を出していて陸上界でも注目の的。
そんなB太郎を羨む気持ちもあるA太郎だが、二人は仲がいい。
芸術学部の絵怜奈が、いつもスケッチブックを持ち二人の跳ぶ姿を描いている。

時は現代。
リンタロウは車いす生活になり写真家として修行中。
もう一人のリンタロウは母校の大学で陸上部、それも棒高跳びの鬼コーチ。
絵怜奈はメキシコで日本人観光客を観光案内して暮らしている。

大学時代のある日、絵怜奈は「自分も棒高跳びをする」と言い出す。
全くの初心者で鉄棒で逆上がりすらできない絵怜奈には無理とA太郎もB太郎も諭すが、絵怜奈はじゃあ…と逆上がりの練習から始める。

陸上競技大会でB太郎は空に吸い込まれる様な跳躍をする。
見ていた絵怜奈は思わずB太郎が心配になり駈け出そうとするがA太郎に止められる。
B太郎は無事に着地したのだ。
絵怜奈は落ち着きA太郎に小学生の頃に友達が自ら命を絶った話を始める。
B太郎の跳躍と過去の出来事が絵怜奈の中でリンクしてしまったのだ。

写真家のリンタロウはアシスタントのコウがマラソン大会に出るのに誘われる。
車いす部門もあるのだ。
リンタロウは選手として登録するよりランナーを撮影することにした。
大会にはリンタロウの大学の後輩が出場することを知り、被写体になってもらうために母校を訪れる。
コーチのリンタロウとも久しぶりに再会。

大学時代にB太郎は久しぶりに師匠に会いに行く。
有名な陶芸家である光徳は滅多に人前には出ない。
光徳は竹のポールで刑務所の壁を飛び越えた逸話があるのだ。
B太郎はA太郎を誘い、その話を聞いた絵怜奈も着いてくる。
3人は光徳の話を聞き、帰りには絵怜奈がどうしてもと欲しがり竹のポールを持って帰ることになった。
A太郎は竹のポールで練習を始め手ごたえを感じ、新しい練習方法を思いついた。

リンタロウが撮った写真は写真家の間では有名な賞を受賞する。
そこで大学時代から初めてA太郎B太郎絵怜奈が揃って顔を合わすこととなった。

Wikipediaより引用

【感想】
最近、よくある技法?ですが、過去の話と現代の話が行き来します。
A太郎とB太郎、車いすの写真家になったのは?
陸上部のコーチになったのは?
読者にどちらがA太郎かB太郎か想像して読ませる設定になっています。
著者も「漫画や映像ではできそうにない仕掛けをしました」とウエブサイトで言っていました。


小説丸 この本私が書きました まはら三桃



いつも一緒だった3人が自分たちの道を大学在学中から進んで行くきっかけになったのは、光徳との出会いです。
人生には「自分の人生の進む方向が決まる」出会いがあります。
小説の3人は大学生の時。
その時には気付かなくても、後になって振り返ると「あの時!!」と思えます。

私自身も「自分の人生の進む方向が決まる」出会いがありました。
それも50歳目前で(笑)
それまでは、ただただ目の前の仕事や家事をこなす毎日でした。
「定年になったら犬を飼って、散歩したいなぁ」ぐらいしか思っていなかったのです。

49歳で次々と新しい出会いがあり、小学生の頃に思っていた夢が実現しました。
「ラジオのDJになりたい」「記者になりたい」
40年の歳月でテクノロジーが発達し、その頃だと「DJ」も「記者」も一握りの人しか慣れませんでしたが、今はネットを通じて可能となりました。

人生の先輩、一歩先を進んでいる人、何事か成し遂げている人、自分より先を行っている人との出会いによって自分の人生を切り開くことができる可能性があります。
人生100年時代も到来します。
何歳になっても夢を持ち続けること。
一歩踏み出す勇気を持つこと。
この小説を読んで、そんな事を思いました。

おススメ度
★★★★

小学館
226ページ
2019年9月11日第1刷発行
本体価格 1400円
電子書籍あり

著者 まはら三桃(まはらみと)
1966年、福岡県北九州市生まれ。
2005年、講談社児童文学新人賞佳作を受賞。
『鉄のしぶきがはねる』(講談社)で2011年度坪田譲治文学賞、第四回JBBY賞を受賞。

著書
『白をつなぐ』 など

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この夏のこともどうせ忘れる 深沢仁

「必要なのは『ちょうどいい人』だ」by 梨奈

【あらすじ】
市井梨奈は高校三年生。
一か月前に別れた彼氏は大学生。
高校生活最後の彼氏を誰にしようか迷っている。
制服でデートしたいので同じ学年の男子を探している。
友達のアッコは「フツーの受験生はそんなヒマないよ」という。
だから梨奈は「ちょうどいい人」を探している。
白羽の矢を立てたのは「生き残り」と呼ばれている篠晃弘。

野球部に入った篠は、先輩からのいじめや超体育会系の練習で他の一年生が辞めたなか唯一残った。
熱中症事件が起こった死のロードワークでも、二年生が全滅になったが篠だけは倒れずに職員室に駆け込み救急車を呼んでもらった…まさしく「生き残り」なのだ。
このことがきっかけで野球部は廃部。
そんなエピソードを聞き、梨奈は篠のことが好きになる。

篠のバイト先に行き、告白するとすんなりOK。
デートをしても篠は口数が少なく梨奈が喋りっぱなし。
それでも梨奈は篠との恋愛を楽しんでいた。

夏休みのある日、私服でデートをしていると篠の両親と妹達の四人とバッタリ出会った。
その日から梨奈がメールをしても電話をしても連絡が取れなくなった。
数日後、篠のバイト先に行くと同僚が携帯が壊れて梨奈と連絡が取れなくなったこと。
篠は風邪でしばらくバイトを休むこと。
連絡先を教えてくれたら後で連絡すること。

篠から連絡があり梨奈は「会いたい」とせがむ。
梨奈の家に来た篠の顔は殴られた痕があり、左腕も腫れあがっていた。
篠は家の状況を少しずつ語り始めた…。

【感想】
どの話も妙に心に引っかかってしまうストーリーです。
特にあらすじを紹介した「生き残り」は胸キュンでした。
梨奈ちゃんが可愛らしいし、篠くんのキャラはど真ん中💕
切ないラブストーリーにやられました。

どの話も主役は高校生。
高校生の夏って子どもでもなく、大人でもない
感受性は豊かで怖いもの知らず。
自分の高校生の夏を振り返っていました。

夜遅くまで友達の家で喋ってたこと。
初めて外泊したのも高校生だった。
バイト先の友達と近所の駐車場で夜中まで遊んだこと。
あれもこれも全部、夏の出来事だったなぁ。
懐かしくてちょっぴり照れくさいあの日の事を思い出させてくれる本です。

【目次】
空と窒息
昆虫標本
宵闇の山
生き残り
夏の直線
あとがき

ポプラ社
268ページ
2019年7月4日第1刷発行
640円

著者 深沢仁
都内在住の物書き。
極度な方向音痴。
気分屋の浪費家。
夜型の嘘吐き。
飽きっぽい。
忘れっぽい。
第2回「このライトノベルがすごい!」大賞優秀賞受賞作『R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く』でデビュー

著書
「狼少女は羊を逃がす」
「英国幻視の少年たち」など

深沢仁 ブログ

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マーダーズ 長浦京

「待ち伏せていたつもりで、待ち伏せられた」by清春

村尾邦宏は元刑事。
在職中に逮捕できなかった未解決事件を追っている。
独自の捜査を行うなかで、警察が気づかない
いくつもの証拠を見つけ出していた。
柚木玲美はそんな村尾から封筒を渡される。


 

 

 

 

玲美は幼い頃に母と姉が行方不明になり、母は死体で発見され
姉は行方不明のまま。
母の死は自殺とされた。
養父母に引き取られて25歳になった玲美は、
真実を知るべく養父母に秘密で村尾と知り合った。

村尾の封筒には2人の人物――会社員の阿久津清春と刑事の則本敦子――
の経歴が入っていた。
経歴を頭に入れた玲美は2人に近づく。
2人は殺人を犯しているが捕まっていない。
村尾は2人の殺人の証拠も掴んでいた。

清春と敦子に自分の姉を捜査をするよう命令する玲美。
従わなければ2人がやったことをすべて公にすると脅す。
仕方なく清春と敦子は捜査を開始する。
調べていくうちに一つの団体が浮かび上がり
それと共に清春と敦子の周りに不審な動きが…。

 

 

 

 

 

【感想】
人物設定に無理があるのでは?
と思われるものの話の展開は面白く、
引き込まれるように読みました。
玲美、清春、敦子。
幼い頃のトラウマを抱え、

孤独と執念が入り混じった3人の過去。
からみあいの中で3人が少しずつ変化していくところも
この小説の魅力です。

一つの事を信じ切る怖さ。
自分が良いと思ったもの以外は受け入れず否定し、
他人を巻き込む力の恐ろしさが玲美の姉を通して描かれています。

題名の「マーダーズ」って何だろう?
と、ずっと気になっていました。
「マーダー・インク」から来ていると思いました。


マーダー・インク Wikipedia

 

 

 

 

 

 

 

講談社
400ページ
1800円(税抜き価格)

著者 長浦京
1967年埼玉県生まれ
法政大学経営学部卒業
2011年『赤刃』で、講談社が主催する第6回小説現代長編新人賞を受賞
2016年『リボルバー・リリー』が第19回大藪春彦賞
著書
「赤刃(せきじん)」
「リボルバー・リリー」

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