人生は並盛で 小野寺史宜

「とりあえず牛丼でも食うか」by 竹志

たまに行く田村書店には古書コーナーがあります。
行くと必ず立ち寄り心惹かれる本は無いかと探すのです。
この本は題名の「人生は並盛で」と帯に書いてあった
「幸せのどんぶり一丁」に惹かれて購入しました。

太った女子大生日和VS若作りで男好きの恵

恵は4歳になる息子を姑に預けて牛丼屋でパートをしている。
仕事は基本手抜き。
面倒な仕事は理系の女子大学生で太っちょの日和に押し付け
店長が居る時や気に入った若い男性とペアだと、嫌なトイレ掃除も進んでやっちゃう。

恵はバイトの数馬と不倫をしている。
数馬がバイトを辞めることを聞いて、次は周吾かなと次のターゲットを決める恵。

ミスが多い準一が、テキパキと仕事をこなす日和に告白するが断られる。
そのことが面白くない恵は日和に準一から言い寄られるている様なことを話す。
もちろん嘘。
日和も嘘だとわかっているが、自分勝手で仕事も手抜きな恵が許せず
ある計画を実行する。

5年後の約束

竹志はレストランで突然、恋人のすみれに別れ話を切り出す。
突然の別れ話に怒ったすみれは竹志にカクテルをかけて店から出る。

竹志には5年前に別れた「夏」が居た。
お互いに忙しくて、段々会えなくなり別れた。
その時に5年後の23時55分に駅前で会おうと約束して…。
すみれに別れ話を切り出したのはちょうど5年目の約束の日だったのだ。

同じレストランのボーイ京平はワインをお客さんの服にこぼし
皿をよく割る。
そのうえワインをこぼした年上の女性と不倫中。
勤務態度を店長に注意され「皿は割れるものだ」と反論する京平。
態度をあらためない京平に店長はクビを言い渡す。
捨て台詞を吐いて店を出た京平は「モデルガンで店長をいつか撃ってやる」
と心に決める。

竹志が約束の場所に行くが、そこに夏が現れることはなかった。

ひき逃げ事件

夏は誘われて周吾と観覧車に乗っていた。
周吾にしつこく誘われるが夏は断った。
この日、夏は仕事を休んでバイクを走らせ考え事をしていた。
周吾と別れた後、バイクにまたがりまた走り出す。
5年前の約束を思い出しながら…。

同じ日、役所に勤める美哉は大学時代の友人
山野井と須賀と三人でバーで飲んでいた。
当時、美哉は山野井と須賀とも時期は違うがつき合っていた。
今は違う男性と結婚し、こうしてたまに三人で会って飲んでいる。

帰り道、須賀は山野井の車に乗り込み一緒に帰る。
須賀は山野井に200万円の借金を申し込むが断られる。
山野井はアクセルを踏み込みスピードを上げ
あやうく自転車を引きそうになる。
間一髪で自転車が止まったが、次の角でバイクをひいてしまう。
ブレーキをかけなかったのでそのまま逃げる山野井。
須賀は山野井から200万円を借りることができた。

牛丼屋に強盗現る

5年前の約束から1年、竹志はまた約束の時間に駅前にやってきた。
もちろん夏は現れない。
終電を乗り過ごし、行きつけの牛丼屋に入る。
日和と準一がシフトに入っていた。
竹志は日和の働きぶりに好感を持っていた。
節度のある接客と綺麗な盛り方。
そんなことを思っていると、ふらりと入ってきた男がレジカウンターに向かう。

男はナイフを取り出し日和に向かってボソボソと何か言っている。
「あの、これでどうにか…」
「いや何ていうかほら。そのほんとに悪いんだけど」
従業員のバックスペースに通じるドアから京平が銃を手にして出てきた。

【感想】

3つの短編小説です。
全く別の次元で起こっている事が、全てどこかで繋がっている構成に驚きました。

最初の恵の話は年のサバは読むし、若い男に媚びを売るし
仕事はしないのに人の悪口だけは散々言うキャラです。
そのうえ子どもへの愛情は感じられず
「私の人生、こんなんじゃなかった」感満載です。
この小説のどこが幸せのどんぶり一丁なんだろう???
と、途中で読むのを止めようかなと思ったほどです。

2つめの話は、ちょっとした所でこの人とこの人とが繋がってる !?
とそのまま最後まで一気読み。

記憶力がいまひとつの人は登場人物をメモるか、もしくはフセンを貼るのをおススメします。
各小説を飛び越えて人間関係が繋がりますよ。
ひょっとしてこの人は…あの時に出ていたあの人???

日和が恵に対してとった行動は?
ひき逃げ事件や強盗の結末は?
きになった方はぜひ読んでみてください。
最後はちょっとホッコリしました。

【目次】

肉蠅え
そんな一つの環
弱盗


327ページ
実業之日本社文庫
2019年2月15日第1刷発行
本体価格 667円
電子書籍あり


著者 小野寺史宜
1968(昭和43)年、千葉県生れ。
2006 (平成18)年「裏へ走り蹴り込め」でオール讀物新人賞を受賞。
2008年、『ROCKER』でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。

著書
『みつばの郵便屋さん』シリーズ、
『片見里、二代目坊主と草食男子の不器用リベンジ』
『ホケツ!』
『その愛の程度』
『本日も教官なり』
『ひと』などがある。

楽隊のうさぎ 中沢けい

「既に身体は音楽の中に吸い取られていた。大きなものに包まれる感覚だった」

【あらすじ】

主人公の奥田克久は小学生の時に同級生の相田守からいじめられていた。
克久は心を閉じ学校に居る時間をできるだけ短くして自己防衛していた。

晴れて中学生になった克久は吹奏楽部に入る。
花の木中学の吹奏楽部は全国大会まで出るほどの実力がある。
朝練は当たり前、夕方も毎日遅くまで練習。
学校に居る時間をできるだけ短くする予定だったのに…。

パーカッション担当になった克久は毎日メトロノームに合わせてスティックで机を叩く毎日。
同じ1年生の祥子と並んで。
リズムを刻むのは克久の性に合った。
先輩や友人に囲まれ克久の1日は吹奏楽一色になる。
吹奏楽部は県大会を勝ち進み関東大会は銀賞だった。
3年生が引退し次に向かう吹奏楽部。

克久は顧問のベンちゃんに呼び出される。
「ティンパニーをやらないか?」
祥子がティンパニーをやりだかっていたのを知っている克久は悩む。
返事を伸ばしているとチューバ担当の町屋に呼び止められ
「ここはひとつ、きっぱり、決めなはれ」と言われた。

ある日、克久は下足室で靴を履き替えようとしている時にふいに相田から「調子乗んなよ」と言われる。
たったそれだけのことなのに、克久のダメージは大きかった。
また、心を灰色に塗る左官屋がでてきそうになる。

克久はまた心を閉ざしてしまうのか?

【感想】
とても丁寧に一人ひとりの描写がされています。
あらすじでは割愛しましたが、途中で吹奏楽部を辞めてしまう田中。
親に辞めるように言われますが本当は続けたい…でもまだ中学生。
自分の我を通し切れないもどかしさが伝わりました。

克久をいたぶる相田を通して、なぜ人はいじめる標的を探してしまうのか。
その状態がさりげなく書かれています。

中学生って子どもだけど大人への入口にたたずみ、自分でもどうしていいかわからない時期。
一人だと自分の心を閉ざしてしまいがちだけど、部活の人間関係を通して得られるものも多いんですよね。
クラスと家とは違う異年齢が集まる部活動。
思春期の子ども達にとってのサードプレイスの場ではないでしょうか。

時間を忘れて一つの事に集中できる楽しさ。
一人で積み重ねて来たものを合わせ、音を作っていく過程が克久を通して描かれています。
コンクールで演奏する曲があり、YouTubeで検索して聞きながら読むのもいいですよ。

自分の中学時代の部活を思い出しました。
ソフトボールをやってたんです。
大人になってからも縁があってソフトボールチームに加入し
つい4年ほど前まで続けることができたのも部活でやっていたからこそ。
スポーツをするのも観戦するのも好きなのは、自分がソフトをしていたからです。

中学や高校での部活って大人になってもなにがしか影響しますよね。
そんな懐かしいあの頃を思い出させてくれた小説でした。

おススメ度
★★★★
映画化にもなっています。
克久の心の中に居る「うさぎ」が上手く表現されています。


映画 楽隊のうさぎ 予告編

【目次】

第一章 草の中の瞳
第二章 ベンちゃん登場
第三章 ミネルヴァのリズム
第四章 ブラス! ブラス!! ブラス!!!
第五章 丸い大きな月
第六章 マレットはうたう
第七章 うさぎの裃
第八章 シバの女王

新潮文庫
332ページ
2003年1月1日第1刷発行
本体価格 600円
電子書籍あり

著者 中沢けい
1959(昭和34)年生れ。
千葉県館山市に育ち、18歳の高校在学中に書いた「海を感じる時」で群像新人文学賞を受賞、単行本がベストセラーになる。
1985年、『水平線上にて』で野間文芸新人賞を受賞。

著書
『野ぶどうを摘む』
『女ともだち』
『豆畑の昼』
『さくらささくれ』
『うさぎとトランペット』など。 

コールセンターガール 増田一志

「矢吹はもはや一種の兵器です。人間関係破壊兵器」by 黒木

【あらすじ】

横浜アイウェアお客様ご相談窓口の坂本春代は毎朝9時7分過ぎにかかる電話に出る。
相手は矢吹徹。
カルティエ(矢吹はカルチエと言う)の眼鏡を店員が素手で触ったとのクレームなのだ。

矢吹は「春代ちゃん」と呼び自分のことを「徹さん」と呼ばせる。
そしていつも言うのだ。
「で、それでどういう誠意をお前さんたちは見せてくれるんだ」
具体的には言わない。
金品を要求すると暴対法の対象として処理できる。
矢吹も心得ているので、決して具体的には自分から言わない。
春代も決して具体的に誠意の内容を言わない。
矢吹は毎朝、電話してくるのだ。
一定のやり取りが済むと矢吹は昼前まで世間話を始める。

その日もいつもの様に矢吹から電話がかかってきた。
矢吹は春代の卒業した大学名や子どもが居ること、シングルであることを話し出す。
春代は「誰が自分の情報を漏らしたのか…」
そのことが気になり矢吹との会話に集中できなくなる。

春代は高校生の同級生の真藤が社長になったのを新聞で知る。
久しぶりに真藤と食事をすることになった春代は飲みすぎてホテルで介抱されている時に暴漢が入ってきて真藤は殴られる。
真藤の会社の弁護士が春代のところへやってきた。
先日のホテルでの一件が写真に撮られていたのだ。
弁護士は春代と暴漢がぐるだと疑ってかかった物言いだった。

矢吹からの電話でつい真藤とのこと、弁護士が来たことを話してしまう。
暴漢は矢吹がらみではなかったが、話の中で春代はつい「ちょっと迫られもしました」と言ったのを録音していた。
これをネタにゆすることができる。
春代は矢吹に止める様に懇願する。
すると矢吹は「俺のいう事をなんでも聞くか?」と交換条件を出してきた。
「出来るだけ努力する」と答える春代。
一体春代は矢吹からどんな難問を突きつけられるのか…。

【感想】
この小説は1話、2話、3話と続きます。
1話での春代のコールセンターガールとしての受け答えが完璧で引き込まれました。
やくざだと思っていた矢吹の正体が1話で明かされます。
思わず「おぉ~っ」と唸ってしまいました。
ここで終われば短編ですが、秀逸な小説でした。

2話、3話と進むにつれて、矢吹が暴走します。
風呂敷を広げ過ぎたのではないか??
と思う展開になりました。

とはいえ、矢吹の存在は実際にあるだろうし、
ひょっとするとどこかで現実に起こっているかも知れない。
と思わせる(1話に限りですが)話でした。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、
気になる方はぜひ読んでみてください。

おススメ度
★★★
(1話だけなら★★★★)

スタイルノート
416ページ
2019年8月30日第1刷発行
本体価格 1800円

著者 増田一志
1959年生。
1983年東京大学文学部イタリア文学科卒。
2014年小学館「ゴルゴ13脚本大賞」佳作受賞

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

色彩 阿佐元明

「仕事が片付いたら、俺の家へ夕飯を食べに来ないか」by 千秋

第35回太宰治賞 受賞作の小説です。

「太宰治賞」
三鷹市と筑摩書房が共同で主催する公募新人文学賞である。
第1回から第14回までは筑摩書房のみで行っていたが業績悪化に伴い休止、太宰治没50年の1999年より現在の形となり、年1回発表されている。
受賞は選考委員の合議によって決定され、受賞者には正賞として記念品、副賞として100万円(2008年実績)が授与される。
選考委員は加藤典洋・荒川洋治・奥泉光・中島京子の4名。
締め切りは12月10日。

Wikipediaより引用

【あらすじ】
千秋は元ボクサー。
目を悪くしてボクシングは辞めて幼なじみの高俊に誘われ、塗装業の親方の元、三人で現場を回っていた。

隣町にあった同業者が廃業し、仕事が忙しくなったためもう一人雇うことになった。
求人を出してしばらくして、細くて頭の形になでつけた短髪の豆電球の様な青年。
名は加賀。
加賀は芸術の専門学校で油絵を専攻していたが、就職はしていなかった。

長く三人だったので、新しく加賀が入るために車を掃除し机を配置して迎えた。
加賀は塗装のスジがよく、塗りむらがない。
丁寧な仕事ぶりに三人とも加賀の動きに見入っていた。
歓迎会をすると、加賀はジョッキに入った酒を飲んではトイレで吐くのを繰り返した。

千秋は結婚していてもうすぐ父親になる。
千秋の妻、亜佐美は千秋が話す加賀の様子に興味を持ったようだ。
「家に呼んで夕飯をご馳走しよう」という亜佐美に千秋はすんなり同意しなかった。
親方や高俊も加賀には好意的だ。
なんとなく千秋は面白くなかった。
つい、加賀に強くあたってしまう千秋。

千秋、高俊、加賀の三人で、注文を受けた仕事を丁寧に仕上げていく。
ある会社の社長から「倉庫の壁に空の絵を描いてくれ」という仕事が入った。
加賀は壁を眺めて微動だにしない。
この仕事は加賀が中心に始まった…。

【感想】
静かな作品です。
加賀が仕事を通じて成長していく姿が淡々と描かれています。
そんな加賀を見ながら、焦りを感じる千秋。
千秋の心の葛藤も丁寧に描かれています。

半径4kmほどの中で起こる、親子の関係や夫婦の関係、同僚の関係。
焦り、戸惑い、同情など人が生きていると感じる負の感情を
「ああ、そういう気持ちわかる」と読んでいて感じました。

おススメ度
★★★★

筑摩書房
221ページ
2019年9月18日第1刷発行
本体価格 1500円

著者 阿佐元明
東京都出身、在住。
1974年生まれ、44歳、男性。

虎を追う 櫛木理宇

「この国ではつねにマジョリティがおとなしく、マイノリティの一部だけがノイジーで人目を惹きがちだ」

北蓑辺郡連続養女殺人事件の犯人、亀井戸死刑囚が獄中で病死する。
この事件は今からおよそ30年前の1987年から88年にかけて起きた事件。
小学生の幼女が誘拐され性的暴行を受けたうえに殺された。
犯人は亀井戸健と伊与淳一の二人。
伊与死刑囚は再審を要求している。

亀井戸死刑囚が亡くなった事と当時の事件の様子を伝える新聞を見ていた元刑事星野誠司は当時を思い出す。
亀井戸と伊与は当時、空巣をしていた。
亀井戸は近所でも評判が悪く、自白をしたので逮捕となった。
当時、星野は「亀井戸が計画的に幼女を誘拐し、残虐な行為をしたとは思えない。
ましてや二人一組の性的連続殺人犯も聞いたためしがない」と上司に話をするが取り合ってもらえなかった。

星野は昔馴染みの記者、小野寺と居酒屋で会いなんとかして世論を動かして伊与の再捜査になるように動くつもりであることを告げる。
小野寺は世論を動かす見込みがあるなら記事にすると星野に伝えた。

星野は自分の孫で大学生の旭に冤罪で再審要求の文章をネットで公開したいと相談する。
旭は文章より動画を勧め、幼なじみの哲に相談する。
哲は動画作成と公開にあたって、被害者遺族全員の許可を取る事を条件にした。

一方星野は伊与の弁護士、片桐と会い自分が当時の捜査員だったことや冤罪の可能性があることを伝える。
片桐はこれまでの資料を星野に快く貸し出した。

星野、旭、片桐弁護士の3人は被害者の遺族、柳瀬久美子と木野下一己と会い自分達がやろうとしている活動を説明すると、条件つきで承諾を得ることができた。
小野寺は独自ルートで栃木総合テレビの報道番組プロデューサーの福永を巻き込む。
星野、旭、哲、小野寺、福永…星野組が結成された。

ツイッターや動画は思った以上に反響があり、哲が作った動画はそのままドキュメンタリーとして地方局ではあるがテレビ放映となった。
テレビ放映後、大手新聞社に真犯人を名乗る男から小包が送られてきたことが三面の記事に掲載された。
小包には女児用のスカート、古い爪、歯のかけらが入っていた。
文書には殺された幼女がよく歌っていた歌詞が書かれていた。
スカートは木野下氏が自分が娘に買ったスカートだと証言をする。

やはり冤罪だったのか!?
真犯人が名乗り出た理由は!?

そうして、新たな女児誘拐事件が起こる…。

【感想】
元刑事星野が主人公ですが、真の主人公は旭と哲です。
大学に入学したものの、燃え尽き症候群の様になってなんとなく毎日を過ごしている旭。
人との関係が上手く築けず引きこもっている哲。
特に哲が事件を表面化させる活動の中で無気力だった日々から自分の進路を見出し、やりたいことも口にするようになる変化は、この小説の第二の物語です。

小さい頃の生い立ちがその後の人生を決めてしまう可能性が高い。
親や周りの大人達の責任は重大です。
そのことをこの小説から読み取りました。

残念なのは、誘拐した幼女と犯人との描写です。
それが一度ではなく何回もあり、子を持つ親としては嫌悪を感じました。
リアルな描写は必要ないと思います。
そしてエピローグも必要だったのでしょうか?
幼女への性的暴行や誘拐、殺害は一つの事件が解決しても終わることが無い。
あえてこのエピローグで終わることにも後味の悪さが残りました。
これがイヤミスで著者が意図してのことなら、してやられました。

おススメ度
★★★★
リアルな暴行シーン(それも幼女に)やイヤミスが苦手な方にはおススメできません。

光文社
432ページ
2019年9月17日第1刷発行
本体価格 1700円

著者 櫛木理宇
1972(昭和47)年、新潟県生れ。
2012(平成24)年『ホーンテッド・キャンパス』で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞し、デビュー。
同年、『赤と白』で小説すばる新人賞を受賞。著書
『ドリームダスト・モンスターズ』シリーズ
『死刑にいたる病』
『209号室には知らない子供がいる』
『鵜頭川村事件』など著書多数。

ジャンヌ 河合莞爾

「『私とは何者なのか?』『私は何のために存在するのか?』ということを考え始めたのです」by ジャンヌ

「自律行動ロボット三原則」
第一原則 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
     または、危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。
第二原則 ロボットは所在する国の法令、及びその国が批准する国際法と条約を遵守しなければならない。
     ただし、法令の遵守が第一原則に反する場合は、この限りではない。
第三法則 ロボットは人間から与えられた命令に服従しなければならない。
     ただし、命令が第一または第二原則に反する場合は、この限りではない。

【あらすじ】
時は2060年代、人口は5000万人まで減少していた。
ケン・タカシロの家でジャンヌは家事ロボットとして迎えられた。
大手投資銀行のプロップ・トレーダーであるケン・タカシロは妻のエマ、娘のシェリーの3人暮らし。

警視庁の刑事、相崎按人がタカシロ家に着いた時には、ケン・タカシロは死体となっていた。
殺したのは家事ロボットのジャンヌ。
ロボットには三原則があり、人に危害を加えるはずはない。
なのに何故、ジャンヌはケン・タカシロを殺害したのか?

科学捜査研究所でジャンヌを調べると異常なしだった。
原因がわからないためにジャンヌを製造したJE本社がある仙台まで輸送が決定する。
相崎も唯一ジャンヌと言葉をかわした刑事として輸送の担当を命じられる。
その輸送の途中に相崎とJEの担当者、ジャンヌが乗った車が何者かに襲われる。
ジャンヌを起動させ、なんとかその場を凌ぐことができ、近くの森に身をひそめる相崎とジャンヌ。

誰がジャンヌ達を襲ったのか?
何故、ジャンヌはケン・タカシロを殺したのか?
相崎とジャンヌは無事に森から脱出できるのか?
全てが解決した先に待っているのは…。

acworksさんによる写真ACからの写真 

【感想】
読み進んでいくと、何故ジャンヌがケンを殺したのかは予想できます。
やっぱりそうなのか。
最後のエピローグで思わず顔がほころびました。
ジャンヌは優しく気高く切れ者のAIです。

設定が2060年代なので、様々な表現も振り切ってしまえばよいのに…。
と感じるのが何点かありました。
・「取り調べにはカツ丼」のフレーズ。
 今でも、それはないやろと思うのに2060年代までこんなフレーズいるのかな?
・wi-fiがまだ必要
・厚生労働省や自衛隊がそのままの名称で存在している
無理に2060年代に設定しなくても、もっと近未来設定でもこの話は成り立つのではないか??
試験的に人型家事ロボットがセレブの家には配置されている…という設定でも十分の様な気がしました。

相崎の古いモノを大切にし、こだわりはあるけどそれ以外は無頓着なキャラクターには好感が持てました。
勿論、AIのジャンヌにも。
出てくる人物は一癖も二癖もあるので、設定に「ムム…??」と思いながらも、読み切ることができました。

おススメ度
★★★

【目次】
プロローグ 涙
01 殺人者
02 三原則
03 尋問
04 襲撃
05 危機
06 脱出
07 野営
08 二日目
09 牧場
10 ジェームズ
11 傍観者
12 覗き屋
13 狩り
14 秘密
15 攻撃
16 神の論理
17 女神降臨
18 計画
19 招集
20 聖女
エピローグ 帰宅

祥伝社
314ページ
2019年2月20日第1刷発行
本体価格 1700円
電子書籍あり

著者 河合莞爾
熊本県生まれ。
早稲田大学法学部卒。
出版社勤務。
2012年に第32回横溝正史ミステリ大賞を「デッドマン」で受賞しデビュー。
その圧倒的なリーダビリティとキャラクター性でファンを増やしている。

著書
「デビル・イン・ヘブン」
「スノウ・エンジェル」
「ドラゴンフライ」
「ダンデライオン」
「燃える水」など