「家庭教師は知っている」 青柳碧人

「子どもが守られるのは、運によってではいけない」by 原田

休みの日に「面白い本があるかなぁ」と思って
入った書店で出会った本です。
著者の青柳碧人さんは「むかしむかしあるところに死体がありました」
を読んで、発想が面白いと思ったので購入しました。
大好きなミステリー小説だったこともあります。

主な登場人物

原田保典…(株)SCIデュケーション 家庭教師派遣会社主任
沼尻室長…原田の上司
清遠初美…原田の後輩、新人職員
リサ…女子高生、原田の部屋に入り浸っている

気になる家庭を訪れる原田

原田は家庭教師派遣会社の主任。
家庭教師の大学生の面談を行い、気になる家庭を訪問。
虐待の可能性がないか調査する。

以前に虐待の現場を発見し通報した社員の働きをきっかけに
児童相談所から協力を要請される。
会社の上層部は会社のイメージアップもあり
協力を惜しまず、各教室に「訪問担当」を設置する。
原田もその一人。

現場の多くの職員は、この決定に否定的。
原田の上司、沼尻もその一人。
「子どもの勉強以外のプライベートに立ち入られて
嬉しい保護者なんていない。顧客を失う」が自論。

高校生リサの存在

原田の家に入り浸っているリサ。
リサが酔っ払いに絡まれている所を原田に助けられる。
それ以来、原田の家に入り食事を作っている。
原田は家庭訪問先の話をなんとなくリサにし、
リサの何気ない一言でその家の闇に気付くのだった。

原田のトラウマ

大学4回生で卒論を自宅で書いていた時の事。
マンションの2階に原田の部屋から、向かいの家が見える。
昼の3時頃になると男性の怒号が聞こえてくるのだ。

ある日いつもより大きな声が向かいの家から聞こえてくるので
窓を開けると、向かいの家も窓が開いていた。
あざだらけの女の子と目が合う原田。
女の子は父親に引きずられて見えなくなってしまった。
その家には手作り雪だるまの人形があった。
紺色のシルクハットに黄色いマフラー
尖りすぎたニンジンの鼻に赤い二つの目。

原田は次の日から卒論を大学で書くようになった。
少女を助けられなかった負い目が
原田の心を縛り付けていた。

新人職員 清遠初美

以前原田が虐待されている子どもを保護した記事を読み
原田に憧れてSCIデュケーションに就職した初美。
原田に家庭訪問の同行を願いで、食事にも誘う。
単なる憧れだけではなく、原田に好意がある素振りを見せる。

あのぬいぐるみが…

大学生、日比野照之が原田に面談を申し込んできた。
小学年生の博を担当している。
日比野が博の家を訪ねると、女装した博が居た。
自分がトランスジェンダーであることをカミングアウトする。

勉強を見ている時に博の足首に輪をはめた様に赤くなり
所々、かさぶたになっているのに気付く。
傷の事を聞くと博は「いい子じゃなかったから…」
日比野は博が父親から虐待されているのではないかと疑い
原田に打ち明けたのだった。

原田が博の家を訪問すると父親の丈一郎が迎えた。
博の両親は離婚しており、父親との二人暮らし。
丈一郎は博の部屋に案内し、寝相が悪くてベッドから落ちるのを
防ぐために足に手錠をしていると説明される。
その後、丈一郎はスクールカウンセラーで息子の話より
自分の仕事の話を延々と続ける。

原田がふと部屋の飾り暖炉に目を向けると
そこには、あの忌まわしい雪だるまの人形があった。
何故、この家にあの人形が…。
原田の頭は混乱する。

【感想】

本のカバーに大まかなあらすじが載っています。
最後に「驚愕のラストが待ち受ける」の一文があり
どこが驚愕のラストなのか…と予想しながら読みました。

女子高生リサは予想通りでしたが、ラストは本当に
「そこか!? マジか~~~~っ」
青柳さんにやられました。
さすが早稲田大学クイズ研究会OB !!

本書は連作短編集となっています。
4つの家を訪問していくなかで
原田の抱えるトラウマ
女子高生リサとの出会い
新人職員、清遠初美との距離感
などが書かれていて長編としても楽しめます。

この本を書くにあたって、どのような取材をしたのかはわかりませんが
大人のフラストレーションのはけ口が我が子に向かう。
人に知られてはならないこと…悪い事と自覚しているので隠す。
子どもは親を庇う。

ふと思ったのですが、虐待をしている親は他人が家に入られることを
拒むのではないだろうか??
家庭教師を頼むのだろうか??
そんな素朴な疑問が湧きました。

【目次】
鳥籠のある家
逆さ面の家
祖母の多い家
蠅の飛ぶ家
雪だるまのあった家
エピローグ

284ページ
2019年3月25日第1刷発行
集英社文庫
本体価格 620円

著者 青柳碧人
1980(昭和55)年、千葉県生れ。
早稲田大学教育学部卒業。
早稲田大学クイズ研究会OB。
2009(平成21)年、「浜村渚の計算ノート」で「講談社 Birth」小説部門を受賞し、デビュー。
小説執筆だけでなく漫画原作も手がけている。

著書
「浜村渚の計算ノート」シリーズ
「ヘンたて」シリーズ
「朧月市役所妖怪課」シリーズ
「西川麻子は地理が好き。」シリーズ
「ブタカン!」シリーズ
「彩菊あやかし算法帖」シリーズ
「猫河原家の人びと」シリーズ
『むかしむかしあるところに、死体がありました。』など

でーれーガールズ 原田マハ

「痛くて、苦くて、しみるほど甘い。それが、ひとを好きになるってこと、なのかな」by 鮎子

【あらすじ】
佐々岡鮎子は東京在住の人気漫画家。
そんな鮎子に送られてきた一通の手紙からこの物語は始まる。

その手紙は鮎子の母校、岡山白鷺女子高校が創立百二十周年の記念講演の依頼だった。
鮎子の同期の同窓会も開催し退職した恩師も出席すると記されていた。
その後、同窓会の案内が届き、最後の一行に「武美も来る」と書いてあった。

鮎子は東京生まれ。
高校に入るタイミングで父親が転勤となり岡山に引っ越してきた。
当時は「オールナイトニッポン」を聴いて寝不足になる。
ラジカセが一番の宝物。
学校では「ザ・ベストテン」の話題で持ちきり。
鮎子はなかなかクラスに溶け込めずにいた。
そんな鮎子に声をかけてくるのはクラスでも美人の武美。

鮎子には秘密があった。
絵を描くのが好きな鮎子はノートに「ヒデホとあゆの物語」と自分で作ったマンガを描いていた。
ヒデホは鮎子の理想の彼氏。
大学生でロックバンドのボーカルとギターを担当。
ノートは10冊目になっていた。

そのノートの中を武美に知られてしまう。
鞄の中を広げたときには武美の机の下に落としてしまったのだ。
ノートにはご丁寧にも「この物語は実話である」と書いてある。
武美はノートを読んで「面白かった」と言い
「ほんまにおるん? ヒデホ君って」と聞かれて鮎子はうなずく。
武美にその後ヒデホとどうなったか話す鮎子。
武美もヒデホの事が好きになっていった。

クリスマスが近い冬の日。
鮎子はふとしたきっかけで知り合った淳の事が好きになりつき合うようになる。
淳のために手袋を編む鮎子。
武美にはヒデホのためにと偽って…。
クリスマスイブの日、淳に手袋を渡すところを武美に見られてしまう。
そのまま鮎子と武美は仲直りすることなく、武美は春休みに転校してしまった。

岡山につき同窓会が開催されるレストランについた鮎子。
武美と本当に会えるのだろうか…。

【感想】
現在の話と高校生の時との話が交互に混ざります。
40代の女性も高校生も等身大に描かれています。
マハさんと同年代なので、教室で盛り上がる話や鮎子の思いに出てくる人物も「そうそう」とうなずけました。

当時のスマホもSNSも無い時代の女子高生の淡い初恋…。
クリスマスのくだりでは恋をとるのか親友をとるのか選択を迫られる鮎子。
本気で自分が作りだした「ヒデホ」に恋をしていたので、生身の彼氏より親友を取る鮎子がいじらしく思えます。
断る理由が「ヒデホ」なところが鮎子の純情さを物語っています。

「ケータイもMP3プレイヤーもない時代。ウォークマンだって持っている子なんかいない。ラジカセがいちばん大事な宝物だった時代。
それでも私たちは、じゅうぶん豊かだった」
この一文にシビレました。

最後のくだりは予想がつきますが、それでもこの物語は女性の友情を描いた秀作です。

【目次】
#1 鮎子の恋人
#2 欄干ノート
#3 時間を止まれ
#4 ジョージのブローチ
#5 聖夜
#6 リボンの白
最終話 友だちの名前

祥伝社文庫
245ページ
2014年10月20日第1刷発行
本体価格 580円
電子書籍あり

著者 原田マハ
1962(昭和37)年、東京都小平市生まれ。
関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。
その後2005(平成17)年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞しデビュー。
2012年に発表したアートミステリ『楽園のカンヴァス』は山本周五郎賞、R-40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードなどを受賞、ベストセラーに。
2016年『暗幕のゲルニカ』がR-40本屋さん大賞、2017年『リーチ先生』が新田次郎文学賞を受賞。

著書
『本日は、お日柄もよく』
『ジヴェルニーの食卓』
『デトロイト美術館の奇跡』
『太陽の棘』など多数

原田マハ 公式ウエブサイト

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。


終点のあの子 柚木麻子

「空気を読め。皆に合わせろ。私たちの気持ちを逆撫でするな」

 この本との出会いは「一箱古本市」です。
出店しているブースをまわり、店主さんと話をして本を選んでいました。
この本の著者、柚木麻子さんの「ランチのアッコちゃん」シリーズが好きなので、購入しました。

【あらすじ】
 舞台はプロテスタント系のお嬢様学校。
中学からエスカレーター式に高校に進学した希代子は、高校から入学してきた朱里と友達になる。
有名なカメラマンの娘である朱里はどのグループにも所属せず、お昼ご飯は屋上で一人。
学校に来ず江の島で過ごす日もある自由人。
希代子はそんな朱里に憧れる。
ある日、通学の電車の中で朱里に学校をさぼって江の島に行こうと誘われる希代子。
江の島行きの急行に乗ったものの、学校をさぼることで所属しているグループからどう思われるか、母からなんて言われるか…。
迷った挙句、希代子は次の駅で降りて学校へ行くことを選ぶ。
そんな希代子に朱里は「意気地なし」と罵る。

自由な朱里に憧れはするけれど、平穏な今を壊したくない。
夏休みに入り朱里から家に遊びに来ないかと電話があった。
朱里の部屋に行くと、以前朱里が小説を書いていたノートがあった。
続きが読みたくてノートを手に取った希代子は途中から日記になっていることに気づく。
読み進めていくと自分を含めてクラスメートの悪口が書いてあった。
希代子は、そのノートを持ち帰り朱里を懲らしめたいという思いにかられた。
二学期になり文化祭が済んだ後、希代子は実行に移した…。

【感想】
 女子はどのグループに属するかが大事。
グループ以外の子と仲良くなるのは学校以外、そしてそれはグループの子に知られたくはない。
あらすじに書いたのは、4つあるうちの一番最初にある話。
連作短編集で、希代子の話。
希代子の親友だった森ちゃんが夏休みに内緒でアルバイトをする話。
3つめは華やかなグループの恭子がクラスで一番地味なグループの早智子と図書館で仲良くなる。
最後は大学4回生になった朱里の話。

大人になりたい、自由になりたい、背伸びをしてみたい、一人になりたくない。
そんな女の子の気持ちが伝わってきます。
やりたい事や憧れる事、素直な自分…でも基準になるには教室の中での自分。
その立ち位置は変えたくない。

なんだかモヤモヤしながら読み終えました。
「女子って面倒くさいな」

我が身を振り返ると中学、高校とグループの中で所属した記憶が薄いのです。
社会人になってからは特に…。
昔も今も、女の友達は少なく女性同士でつるんでどこかに行くことはほぼありません。
グループのメンバーに気を使っていろいろ思い悩むよりは一人で居ることの方が私にとっては楽。
考えれば常に自分にとって楽な方向にばかり進んでいたかもしれません。

なので読み終えた感想は「女子って面倒くさい」
でも話に出てくる女の子たちには心の中で「頑張れ」とエールを送っていました。
それは小説の中の女子高生に自分の子を重ねているのかもしれません。
女子の思考を知る1冊となりました。

【目次】
フォーゲットミー、ノットブルー
甘夏
ふたりでいるのに無言で読書
オイスターベイビー

文春文庫
247ページ
2012年4月10日第1刷発行
本体価格 533円
電子書籍あり

著者 柚木麻子
1981年東京都生まれ
立教大学文学部卒業
2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」で
第88回オール読物新人賞を受賞。
受賞作を含む連作短編集「終点のあの子」でデビュー


著書
「あまからカルテット」
「嘆きの美女」
「その手をにぎりたい」
「ランチのアッコちゃん」など多数

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