幸せになる百通りの方法 荻原浩

「私も寂しかったのだ。やはり」by 松本

【あらすじ】
松本は会社の転籍を断った結果、解雇となった。
家族に言い出せずに、会社に行くふりをして家を出る。
書店や公園で時間を潰す毎日。
お昼はパン。

妻に真実を言おうとするがタイミングがつかめない。
仕事を辞めて3日目。
元の会社が使うガソリンスタンドが無い、公園を見つけた。
雨をしのげるベンチもあり、おあつらえ向きの隠れ家の様だった。

ある日、コップ酒を飲みながら公園で過ごしていたら雨が降ってきた。
「雨宿り、ご一緒させてもらえませんか」
松本より一回りほど年上で、長めの銀髪を後ろに撫でつけた小柄な男だった。
男は「もしや、会社をリストラされたんじゃないですか」
男もそうだったと打ち明けた。
妻に3年間言えず、その妻も癌で亡くなったと男は告げた。

それから、男とはベンチに手紙を置いてのやりとりが始まった。
『本日は昔の会社の同期会に出席しますので、夜もぞんぶんにお使いください ベンチマン』
松本はベンチマンに必ず返事を書いた。

ベンチマンとのやり取りが続く毎日。
11月に入り風が冷たく感じるようになった。
ロータリーのバス待合用のベンチに座っていると、近くの喫煙所に息子の姿を見かけた。
松本の姿を見つけ近づいてくる息子。
息子とはもう長い間、会話をしていなかった…。
(ベンチマン)

【感想】
短編集です。
あらすじに書いた、リストラされたけど家族にそのことが言えず、毎日会社に行くふりをする松本。
役者を目指していたが劇団がつぶれ、オレオレ詐欺をしている慎之介。
戦国ゲームにハマり、その時々の主人公にハマっていく彼女を持つ敦志。

どの話も自分の周りには居ないけど、どこかには居そうな人たち。
「人って温かいな」と読んだ後に思います。

おススメ度
★★★

【目次】
原発がともす灯の下で
俺だよ、俺。
強もみんなつながっている。
出逢いのジャングル
ベンチマン
歴史がいっぱい
幸せになる百通りの方法

文春文庫
306ページ
2014年8月10日第1刷発行
本体価格 550円
電子書籍あり

著者 荻原浩
1956(昭和31)年、埼玉県生れ。
成城大学経済学部卒。
広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。
1997(平成9)年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞を、2014年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞受賞を、2016年『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞。

著作
『ハードボイルド・エッグ』
『神様からひと言』
『僕たちの戦争』
『さよならバースディ』
『愛しの座敷わらし』
『ちょいな人々』など多数。

古都鎌倉、あやかし喫茶で会いましょう 忍丸

「『心』は味を決める、決定的なスパイスだ」by 詩織

【あらすじ】
舞台は神奈川県三浦半島の付け根にある、古都鎌倉。
「おひとりさま」の詩織は脇道に入り、地元民が通う穴場の店を探していた。
古民家カフェの「青藍」には入口に「あやかしも人間もどうぞ」と書かれている。

詩織が旅に出たのには理由があった。
同棲していた彼が部屋に別の女性を連れ込んだのだ。
詩織は部屋を追い出され、社内恋愛だったので仕事も辞めた。
気分転換のために鎌倉にやって来たのだった。

店でワインを飲みながら鎌倉野菜を食べているうちにお酒が進み酔っぱらった詩織は、これまでのことをイケメン店員で実は鬼の朔之介に吐き出していた。
するとイケメン店員では無い声が聞こえる。
巨大な黒猫に骸骨、落ち武者…。
誰もいない店内と思っていたら、あやかし達で満席だったのだ。

帰ろうとする詩織に黒猫は
「よそ者であやかしが見えるのは『祓い屋』ぐらい、外の奴らが放ってはおかない」
と、物騒なことを言い出した。
かくして詩織は身の安全を守るためにカフェで働くことになった。

常連は骸骨の田中さん、落ち武者の与一さん、化け狸の源五郎さん。
みんな温かく詩織のことを見守ってくれている。
ある日カフェに大首がやってくる。
「私が食べたことのないパンケーキ」を注文する。
いろいろ作るがどれも大首は満足しなかった。
満足するまで帰らないという大首。
なんとかしたい詩織は朔之介を誘ってパンケーキ巡りをする。
二人は大首が納得するパンケーキを作ることができるのだろうか…。

あずみ1204さんによる写真ACからの写真 

【感想】
あぁ、鎌倉に行ってみたい。
読み終わった直後の感想です。

普通のOLだった詩織が鬼の朔之介に恋をします。
少しずつ二人の仲が近くなっていく様子が読み取れ
いつの間にか詩織を応援していました。

パンケーキにけんちん汁と物語には鍵となる食べ物が出てきます。
その食べ物には背景があります。
人と人であったり、あやかし同士であったり…。

作者の忍丸さんはきっと食べることも作ることも、そして人もあやかしも好きなんだろうなぁ。
常連客の骸骨の田中さんや落ち武者の与一さん達のスピンオフも面白そう…。

おススメ度
★★★★

ラノベ好きな人におススメです。

【目次】
プロローグ
一章 初めてのおつかいと、春色ランチ
二章 我儘なお客と、特別なパンケーキ
三章 変わらないもの、変われないもの
四章 心に沁みる珈琲
エピローグ

一二三書房
302ページ
2019年10月5日第1刷発行
本体価格 700円
電子書籍あり

著者 忍丸
青森県生まれ、神奈川県在住
シナリオライターの仕事の傍ら、WEB小説を執筆
「異世界おもてなしご飯」で書籍化デビュー
人情味あふれる人間関係や「食」について書くのを得意とする。

著書
「わが家は幽世の貸本屋さん」など

ナマケモノでいいんだよ ルーシー・クック

「ナマケモノはいわば、穏やかな天然の禅僧です」

動物学者にしてナマケモノ愛好協会代表のルーシー・クック氏がナマケモノの生態を紹介し、写真と共に著名人の一言を紹介している本です。

ナマケモノってどんな動物?

・アリクイ目ナマケモノ科の哺乳類
・エネルギーを節約し天敵から身を守るためにじっとしている
・好物はハイビスカスの華
・野生のナマケモノは中南米のジャングルのみ生息
・ひとりが大好き
・常に笑顔

イソップからイチローまでの名言集

この本はナマケモノの生態が紹介された後は
テーマにわかれて
左ページにナマケモノの写真
右ページに偉人の名言集が載っています。

「ゆっくりでも着実な者が勝利を収める」by イソップ
「いそぐことはないよ。いつかは、つくさ」by A.A.ミルン
「僕は遠回りすることが一番近道だと信じてやってます」by イチロー

「君の機嫌が悪ければ悪いほど、バカなやつに会う」by バンクシー
「笑いと上機嫌の感染力にかなうものはない」by チャールズ・ディケンズ

「どうしてもそれをしなければならないの?」by オードリー・ヘプバーン
「生ぜしもひとりなり、死するも独りなり」by 一遍

「ふだんは退屈していたちっぽけな物事に今すぐ熱狂せよ」by アンディ・ウォーホル
「愚か者であれ」by スティーブ・ジョブズ

【感想】
癒されます。
もうこの一言につきます。

作者のナマケモノへの愛が写真から伝わります。
ナマケモノってこんなに可愛かったんだ!!
この本を読んでナマケモノの虜になりました。

いろいろなモノが「高速化」されていく現代だからこそ
この本のもつ意味が伝わってきます。

そう急がなくてゆっくりでいいんだよ。
あなたはあなたのままでいいんだよ。
そう言われているような気がしました。

カレンダーにしてくれたら絶対買うのになぁ。

疲れている人におススメです。

おススメ度
★★★★★

【目次】
はじめに
ナマケモノってどんな生き物?
1 千里の道も一歩から
2 笑う門には福来る
3 孤独のチカラ
4 いつも好奇心を胸に
5 見方一つで世界は変わる

光文社
160ページ
2019年10月24日第1刷発行
本体価格 1200円

著者 ルーシー・クック
数々の受賞歴のあるブロードキャスター、映画監督。オックスフォード大学で動物学の修士号取得

著書
「子どもには聞かせられない動物のひみつ」

たぶんそいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。 Jam



今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから



https://docs.google.com/document/d/16tYQEzsX76riqN-3FWtc437c5Fegun2IZCzN3u_m1MY/edit#heading=h.n8izfi7mfmtk

かおる文庫のおすすめブックコーナー

第2週、第4週と北海道在住、
ブックコーディネーターのかーるさんが
おススメする本を紹介するコーナーです。

テーマは「新刊が出たら思わず買ってしまう作家」

①Jam

ゲームグラフィックデザイナー、イラストレーター、漫画家。
人間関係のモヤモヤをかいたマンガ「パフェねこシリーズ」はTwitterで大ヒット。

著書:「たぶんそいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。」サンクチュアリ出版社

◎魅力
それあるある、と言いたくなるような身近なテーマと表情豊かなネコに親近感を覚えます。主観と客観がバランスよくて、ツッコミがいい味をだしています。

Soofleで連載中の「まねきねこのうた」も面白いです。
ご主人と人語で話したいばかりにネコマタになったネコの話。

Jam プロフィール
1972年生まれ。
ゲームグラフィックデザイナー。イラストレーター。漫画家。
日常で起こる人間関係の悩みを描いたマンガ「パフェ猫シリーズ」がTwitterで累計50万部以上リツイートされるほど話題になる。Blog:「Jamさんちのマンガいろいろ」

パフェねこ誕生 (サンクチュアリ出版 ウエブマガジンより引用)

フリーになって数年が経った頃、ある自然災害が日本を襲った。
2016年4月に発生した熊本地震である。実はこれが『パフェねこ』シリーズ誕生のきっかけとなった。

「東日本大震災のときは、自分にできることをしたいと思いながらも、なにか発信して叩かれるのが怖くてできなかった。だから今回は勇気を出して発信しようと思ったんです。私のTwitterやWebサイトを楽しみにしてくれている方も熊本にいらっしゃったので、どうにかして元気づけたいと」

そうしてTwitterにアップしたのが、『パフェねこ』のねこが主役の4コママンガだった。
東日本大震災の際、知人のイベント会社がイベントを自粛した末に倒産してしまった出来事を受けて、「日本を元気にするためにも自粛はやめよう」というJamさんなりの思いを綴ったマンガである。反響は想像以上に大きいものだった。

https://mobile.twitter.com/i/moments/824774341409726464

Jamさんが描く猫のイラストは癒されます。
上のリンクから見ることができますよ。

谷中の街の洋食屋 紅らんたん 濱野京子

「富美さん、夢を失ったかもしれないでしょう」by 千佳

【あらすじ】
奈留美…紅らんたんでアルバイトをしながら就職先を探している。
千佳…紅らんたんのオーナー、コーヒー担当、74歳
真崎…紅らんたんのマスター、コーヒー以外のメニューを作る。千佳とは昔からの知り合い

ふとしたきっかけで「紅らんたん」で働くことになった奈留美。
「紅らんたん」のお客様はご近所の高齢の方がほとんど。
常連客の一人、富美さんの家に千佳と奈留美は訪問する。

富美さんはご主人に先立たれて独り暮らし。
その富美さんに再婚を考える人が現れた。
相手は観葉植物を販売する会社の社長。
亡くなったご主人は生前に「俺か死んだら再婚してもいいんだよ」
と言っていたにも関わらず、富美さんの夢枕に立つのだ。
何度も。
奈留美は寝室へ案内されると気配を感じた。

数日後、富美は相手を連れて「紅らんたん」にやってきた。
食事を終えたころ、店に富美の息子からの電話があった。
富美が先に家に戻ってしばらくしてから再度、電話がかかる。
富美の息子が話をしたいと言っているのだ。
男は二人分の食事代を払って、そのまま行方をくらました。
(三 夢枕にたつ人)

【感想】
連作短編集です。
「紅らんたん」に集まる常連客の人々が皆、個性的です。
話が進むにつれて、千佳と娘の話になります。

いくつになっても恋がしたい。
女学生の様な仲の良い二人の老女。

イケメンで周りの女性にモテモテの征一。
征一の友人でぽっこりお腹の和夫。

人が60年以上生きていると様々な事があり、
今を形成しています。
いつまでも〇〇な自分でありたい…。
そんな人たちの息遣いが聞こえてくる小説です。

自分に正直に生きること。
年齢を重ねた今だから、周りに知人がいることの大切さ。
今は地域の人たちが集う、純喫茶が少なくなっています。
「紅らんたん」の様な喫茶店がこれからは求められるのではないでしょうか。

【目次】
プロローグ
一 古い手紙
二 恋模様
三 夢枕に立つ人
四 母と娘
五 千佳さんの休日
六 怪我の功名
七 汚部屋の住人
八 ワトソンがんばる
エピローグ

ポプラ社
245ページ
2019年10月4日第1刷発行
本体価格 660円

著者 濱野京子
熊本県に生まれ、東京で育つ。
児童文学作家
『フュージョン』で第2回JBBY賞、
『トーキョー・クロスロード』で第25回坪田譲治文学賞を受賞。

著書
『その角を曲がれば』
『レッドシャイン』
『碧空の果てに』
『甘党仙人』
「レガッタ!」シリーズなどがある。

濱野京子 ツイッター

すみれ屋敷の罪人 降田天



今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/09/10-2_honskeyclub_20190918.mp3

テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

ラジオネーム ぶるぼん

新刊が出るとつい買ってしまう作家…降田天(ふるたてん)
① 降田天のオススメどころ
必ず騙されるところです。
そしてその騙され方が「やられたー!」とか「そうきたかー!」と思っちゃうんですよね~。

降田天さんを最初に読んだのは2作目の「匿名交叉」(文庫では「彼女はもどらない」に改題)。
この物語はイヤミスなのですが、してやられた感が半端なかったのです。
展開もうまく、文章も引き込まれていき一気読み。

最新作の「偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理」では、帯に「あなたは5回必ず騙される」と書いてあったので、「騙されないぞ」と気合を入れて読んだのにきっちり5回騙されてしまいました。
なんといえばいいのかしら・・・。
騙されてるのに気持ちいいというか。

普段ミステリーをさほど読まない私ですが、降田さんの作品はしっかり買い続けて読んでます。

② イチ押しの作品
3作目の「すみれ屋敷の罪人」です。
1,2作目はイヤミスだったのですが、3作目は美しくも悲しい物語。それまでの降田天さんのイメージが覆りました。表紙の絵がとても美しい点もオススメです。

③ 今、気になっている作家さんが居れば教えてください。
小林由香さんです。
デビュー作の「ジャッジメント」が衝撃的でした。
小林さんの本はとても重いテーマですが、心に突き刺さります。

降田天 プロフィール
降田 天(ふるた てん)は、日本の小説家・推理作家。
萩野 瑛(はぎの えい)と鮎川 颯(あゆかわ そう)が小説を書くために用いている筆名の1つ。
他に鮎川 はぎの(あゆかわ はぎの)、高瀬 ゆのか(たかせ ゆのか)の名義がある。
「女王はかえらない」で第13回このミステリーがすごい! 大賞を受賞

萩野 瑛
1981年9月生まれ。茨城県常陸大宮市出身。女性。
早稲田大学第一文学部総合人文学科卒業。
辞書の編集プロダクション勤務を経て、小説家に転身。
プロット(ストーリーの要約)を担当している

鮎川 颯
1982年3月生まれ。
香川県三豊市三野町出身。女性。
早稲田大学第一文学部総合人文学科卒業。
法律事務所勤務を経て、小説家に転身。
執筆を担当している。
子どもの頃から本を読んだり文章を書いたりするのが好きだった。
大学時代に自分1人で小説を書いていて、小説の執筆の他にやりたいことはない、と思う一方で、自分で書いた作品が面白いとは感じなかった。
そんな中で、書いた小説を萩野に読んでもらうと、彼女から的確なアドバイスを受け、このことが、一緒に活動しようと思うきっかけとなった

「すみれ屋敷の罪人」

戦前の名家・旧紫峰邸の敷地内から発見された白骨死体。
かつての女中や使用人たちが語る、屋敷の主人と三姉妹たちの華やかな生活と、忍び寄る軍靴の響き、突然起きた不穏な事件。
二転三転する証言と嘘、やがて戦時下に埋もれた真実が明らかになっていく。


小林由香
長野県生まれ。
2006年、「全速力おやじ」で第6回伊参(いさま)スタジオ映画祭シナリオ大賞の審査員奨励賞、スタッフ賞を受賞する。
2008年、第1回富士山・河口湖映画祭シナリオコンクールで審査委員長賞を受賞する。
2011年、「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞する。
2016年、「サイレン」が第69回日本推理作家協会賞の短編部門の候補作に選ばれる。

デビュー作 「ジャッジメント」
大切な人を殺された者は言う。
「犯罪者に復讐してやりたい」と。
凶悪な事件が起きると人々は言う。
「被害者と同じ目に遭わせてやりたい」と。
20××年、凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。それが「復讐法」だ。
目には目を歯には歯を。この法律は果たして被害者たちを救えるのだろうか?