この世の春 宮部みゆき

今回の本は、4月21日放送のラジオ「ホンスキー倶楽部」で紹介しました。
リスナーさんがテーマ「春」から連想するおススメ本です。

兵庫県 ラジオネーム ゆみこ 
(宮部みゆき)「この世の春」 新潮社

① この本のおすすめどころ
理由あって婚家から戻り、兄に家督を譲った父と静かに暮らしている武家の娘の多紀。
しかし父が病で亡くなり、親しい従兄弟にどうしてもと請われて、藩主の別邸である五香苑に住み込みで勤めることになる。
五香苑は山中の小さな美しい湖のほとりに立つ館だが、そこには重臣たちによって『病、重篤につき』と藩主の座を追われて蟄居させられた若き元藩主・北見重興が、堅牢に築かれた座敷牢の中でひっそりと暮らしていた。

初めて重興に目通りした多紀が目にしたのは、外見は重興だがしぐさもしゃべり方も幼いひとりの少年だった。
聡明な若様であった重興に何が起こったのか?
重興は錯乱しているのか?
何かに取憑かれているのか?
そしてなぜ多紀がここに呼ばれたのか?
懸命に重興を救おうとする人々の手で、北見藩の過去の忌まわしいできごとが少しずつ明らかになっていく…

良かった~!上下合わせて800ページ、途中でダレることなく寸暇を惜しんで読みました。
辛い過去を持つ芯が強い美しい女性、実直な老家臣、わんぱく坊主がそのまま大人になったような若武者、怜悧(れいり)な医師、気の良い女中。
宮部さんの時代小説にはよく登場するお馴染みの人々で既視感は否めませんが、マンネリにならずに夢中で読めるのは、登場人物とストーリーに魅力があるからなんでしょうね。
やっぱり宮部さんは凄い。
辛い場面もあるけれど、人が人して、自分として生きていく尊さに胸を打たれました。
ネタバレになるので多くは語れませんが、ドキドキ、ハラハラ、ほっこり、じ~ん、大大大満足です。

② この本との出会い
宮部さんの小説は新刊が出たら必ず読むので、出会うべくして出会ったという感じですね。


③ 春の想いで
春といえば桜。
桜といえば思い浮かぶのは、今はもうない宝塚ファミリーランドの満開の桜です。
娘たちが小さかった頃は、桜の季節に毎年家族で遊びに行っていました。
動物を見て乗り物に乗って、はしゃいで走りまわる娘たちを追いかけた思い出の場所です。

新潮社
397ページ(上)
399ページ(下)
2017年8月31日第1刷発行
本体価格 1600円(上下巻とも)

著者 宮部みゆき
1960(昭和35)年、東京生れ。
1987年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。
1989(平成元)年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。
1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。
1993年『火車』で山本周五郎賞を受賞。
1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。
1999年には『理由』で直木賞を受賞。
2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、2002年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。
2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞した。

著書
『ソロモンの偽証』
『英雄の書』
『悲嘆の門』
『小暮写眞館』
『荒神』
『希望荘』など多数。

バカとも付き合って 西田二郎・マキタスポーツ

「おじさんたちのブルース」by マキタスポーツ

この本は、堀江貴文・西野亮廣両名の著書「バカとつき合うな」に便乗したものです。
もちろん両名の同意の元です。
西田二郎氏は読売テレビの社員、マキタスポーツ氏は芸人。
サラリーマンとフリーランスの二人がどんなことを語っているのか。
表紙までパクッてしまったこの本に興味を持って読みました。

“バカとも付き合って 西田二郎・マキタスポーツ” の続きを読む

春や春 森谷明子

今回紹介するのは、4月14日放送のラジオで紹介した本です。
テーマは「春」

大阪府 ラジオネーム 四十路の働き蜂
森谷明子 「春や春」 光文社文庫

① おすすめどころ

なんといっても 高校生の俳句への情熱と、俳句甲子園の白熱した戦いだと思います。
この物語は、女子高生が俳句同好会を立ち上げ、俳句甲子園で全国大会出場に至るまでの約3ヶ月を描いています。
主な登場人物 は、句作をする俳句初心者の5人のメンバー、作るのは苦手だから…と大会出場の準備や対戦相手の分析をするマネージャー兼策士的存在の女子高生、そして顧問や国語教師などの3人の先生方が出てきます。

メンバー探しの苦労や淡い恋といった、青春モノにありがちなエピソードはありますが、それを超えてしまうくらいの俳句への情熱に溢れているのです。
言葉の響き、リズム感
漢字と仮名のバランス…
17音の日本語に真剣に向き合って作品を作り出す。

俳句甲子園では句作だけでなく
お互いの作品に対してディベート(討論)も
繰り広げなければならない。

高校生が、ですよ。
戦いはチーム戦で、作品自体の点数とディベートでの加点。
芸術(文芸)に点数をつけることに違和感を持つ人もいるかもしれないけどフィギュアスケートと同じで、もはや立派な競技、知的バトルでした。

俳句ってこんなにも面白い!ということをこの小説で知り、去年秋から俳句教室に通っています。

② この本と出会ったきっかけ

昨年、ちょうど100回目の夏の甲子園が開かれているさなか、松山へ一人旅に出ました。
折しも愛媛代表の済美高校(せいびこうこう)が準々決勝で勝ち、ベスト4入りを決めた日。松山はさぞ沸いているだろうと思い、空港に降り立つと、目の前には『歓迎!第21回 俳句甲子園』の大きな文字が!

どうやら 俳句甲子園開催の直前だったようで、街の中は俳句で盛り上がり、至る所で俳句を見かけました。
『さすが正岡子規や高浜虚子のいた、俳句の街だなぁ』と思い帰阪。
その数日後に訪れた大阪の某書店で「甲子園は野球だけじゃない!」と、野球以外の夏の全国大会をテーマにした小説を集めて特設コーナーが作られてあり、そこに平積みされていたのが『春や春』でした。

③ 春の思い出

思い出…というほどではないかもしれませんが、自宅近くに関西では有名な桜の名所があります。
仕事帰りにコンビニでスイーツと缶コーヒーを買って、桜の下で一人プチ花見をするのが至福のとき。
毎年の楽しみです。

光文社文庫
431ページ
2017年5月11日第1刷発行
本体価格 740円
電子書籍あり

著者 森谷明子
1961年神奈川県生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業
2003年、紫式部を探偵役にした王朝ミステリ『千年の黙(しじま) 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。
卓越した人物描写とストーリーテリングで高い評価を受ける。

著書
『白の祝宴』
『望月のあと』
『れんげ野原のまんなかで』
『花野に眠る』

ゆめのたね放送局関西チャンネル「ホンスキー倶楽部」

インターネットラジオゆめのたね放送局関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時半
毎月テーマを決めて、リスナーからの本の紹介する「ホンスキーズBOOK」
私のおススメ本を紹介する「ぐーりんずBOOK」
第2週・4週は元書店員ブックコーディネーター、かーるさんがおススメする
「かおる文庫のおすすめブックコーナー」
ひたすら本を紹介する番組です。

♬ 聞き方
①下の「ゆめのたね放送局」のサイトに入ります。
②関西チャンネルの ➧ ボタンをクリックすると音声が流れだします。

インターネットラジオゆめのたね放送局

ホンスキー倶楽部 視聴

http://yumepod3.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/01/2-3_honsuki-ku

rabu_20190111.mp3

万能鑑定士QⅠ 松岡圭祐

「教科書を読みながら感動…ですか?」by 莉子

【あらすじ】
東京の街の至る所にとあるシールが貼ってある。
浮世絵の様な純和風では白いシールに、墨一色で相撲の力士の様な顔が描かれている。
ガードレールや電柱、公衆電話に覆いつくすほどの量のシールが貼られるのである。

「週刊角川」の小笠原は力士シールを取材するために、シールで埋め尽くされて取り換えるガードレールを借りることに成功。
すぐに鑑定してもらえるところを探すと会社のすぐ近くに「万能鑑定士Q」を発見し、ガードレールを持ち込む。
そこには一人の若い女性…凛田莉子が居た。
先客が持ち込んだ絵画を真贋を高度なロジカルシンキングで判断する。
小笠原は莉子に憧れながら力士シールの鑑定を頼む。
シールは莉子の知人である氷室に科学鑑定を依頼することになった。


凜田莉子は波照間島出身。
性格は良く美貌の持ち主だが高校時代は成績がオール1。
卒業後は東京に上京して就職先を探す予定。
東京に出てきたものの、就職活動は全滅。
家賃を払うためにトランクに使わないものをつめて、リサイクルショップを訪れた。
リサイクルショップの店長、瀬戸内は莉子が持ってきたものを5万円で買い取りそのうえ、高校生向けの参考書や問題集を渡して莉子に勉強の仕方を教える。

ことあるごとにリサイクルショップに行く中で、店員として働くことになる莉子。
スポンジの様に知識を吸収し、カリスマ店員となる。
店長の瀬戸内は莉子に鑑定家として独立を勧める。
屋号は「万能鑑定士Q(クイーン)」クイーンが気恥ずかしい莉子は瀬戸内の娘、楓の助言も受け「万能鑑定士Q(キュー)」として独立する。
莉子20歳。

力士シールの判定依頼が来たのは開業して3年後の事であった。
鑑定は二人が同時期に描いていることが判明。
小笠原が記事にする前に他紙に同じ内容ですっぱ抜かれる。

不動産屋が莉子に激安物件を持ってきた。
ちょうど店を広くしたいと思っていたので説明会に出かける。
多くの人々が訪れていて物件は抽選となる。
その抽選は実は出来レースだった。
莉子は物件を手にした会社を怪しみ調べ始める。

【感想】
まずは莉子の自己紹介本といったところかもしれません。
力士シールについても誰が何の目的で書いたのか不明です。
ストーリーの中に「未来」が出てきます。
その未来は日本がハイパーインフレになっていて、あちこちで暴動も起きています。
現代のストーリーからどうやってこの未来にたどり着くのか…。
この本だけでは全く未来への道筋が見えません。
続きを読まなければならないようです。
現在と過去を行き来するこの小説は引き込まれました。

角川文庫
267ページ
2010年4月25日第1刷発行
本体価格 514円
電子書籍あり

著者 松岡圭祐
1968年愛知県生れ。
1997(平成9)年『催眠』で小説家としてデビュー。
映像化もされ、ベストセラーとなる。
以後、『催眠』『千里眼』『マジシャン』の三大シリーズをコンスタントに発表し続け、いずれも大ヒットを記録。

著書
「シャーロック・ホームズ対伊藤博文」
「ヒトラーの試写室」
「蒼い瞳とニュアージュ」他多数

松岡圭祐公式サイト

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

熱帯 森見登美彦

愛知県 ラジオネーム たけちゃん

森見登美彦 熱帯  (文藝春秋)

「汝にかかわりなきことを語るなかれしからずんば汝は好まざることを聞くならん」
この一文で始まる物語。
書くことに悩む奈良の小説家 森見登美彦は、学生時代に京都の古書店で見つけた謎の本のことを思い出す。
それは佐山尚一という人物が書いた小説『熱帯』。
半分ぐらいまで読んだ記憶はあるものの、ある朝、目が覚めると枕元から消えていた。
そして、二度と手に入らなかった。
どうやら他にも読んだことのある人はいるらしいが、誰も結末までは読めていない。
「沈黙読書会」で出会った『熱帯』を抱えた女性 白石さんによって語られ始まる物語、ここに『熱帯』の門は開く…。
『熱帯』の秘密を解き明かそうとする「学団」。
神出鬼没の古本屋台「暴夜(アラビヤ)書房」。
鍵を握る飴色のカードボックス。
部屋の中の部屋。
『熱帯』を支配する魔王。
満月の魔女。
東京、京都、はたまた満州を駆け抜け、数多の語り手の魂を受け継いで、いざ謎の源流へ…。

物語内物語内物語内物語…。

物語の入れ子構造。
物語のマトリョーシカ。
『千一夜物語』。
マジックリアリズム。
心の内へ内へと入り込みながら外へと飛び出す。
不思議さ。しかも遠く遠く。

まどろっこしいレビューで申し訳なく思う。
しかし、これはそういう物語なのだと言い訳したい。
頭で理解するのではなく、ズブズブと物語に浸っていく。物語の世界に入っていく。
そんな作品です。
そしてそんな作品が僕は好きだったりします。
モリミー最長の520ページの大作。
読みきって、ちょっと呆れる怪作です。(笑)

2019.3.24.放送
「ホンスキー倶楽部」より
リスナーさんのレビューを紹介です。
不思議な森見登美彦ワールド全開です。

#熱帯 
#森見登美彦

著者 森見登美彦
1979年、奈良県生まれ。
京都大学農学部大学院修士課程修了。
2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、小説家デビュー。
2007年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を、
2010年『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞する。

著書
『四畳半神話大系』
『有頂天家族』
『有頂天家族 二代目の帰朝』
『四畳半王国見聞録』
『聖なる怠け者の冒険』
『夜行』等がある。

文藝春秋
523ページ
2018年11月16日第1刷発行
本体価格 1700円
電子書籍あり


最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

愛なき世界 三浦しをん

今回はラジオ番組「ホンスキー倶楽部」3月17日分放送で紹介した1冊です。

兵庫県 ラジオネーム ゆみこさん

「愛なき世界」(三浦しをん) 中央公論新社

小さな洋食屋の料理人見習い・藤丸が恋をしたのは大学院で植物学を研究する本村。
しかし、シロイヌナズナの研究に人生のすべてを注いでいる本村は恋愛にはまったく興味がない。
出前を運んだのをきっかけに研究室に出入するようになった藤丸と、『知りたい』に突き動かさる研究室の個性豊かな変人たちの濃くて温かい日々を描いた物語です。

しをんさんお得意のディープなお仕事系小説。
全体としては面白かったけど、如何せん本村が挑戦している『実験』がまったく理解できず、かなりのページが割かれた『実験』の描写に手こずりました。(先日のクリエイターズネストでしをんさんご自身も「リアリティーを出すために詳細に書きましたが、読み飛ばしてもらっていいですよ」とおっしゃっていましたが)。
よって、実験の結果に近づいていくクライマックスにいまいち気持ちが入り込めず、私の中では「舟を編む」超えとはなりませんでした。

でも、これまでまったく知らなかった植物の生態世界を垣間見れて、数々のエピソードはとても興味深いものでした。
中盤の教授の思い出話にはボロボロ涙がこぼれ、朝の通勤電車の中でハンカチでひたすら涙をぬぐうことに。(ハンカチ持ってて良かった~!朝の持ち物チェックは大事ですね)

植物も動物も人間も生きてるこの世界に自分も存在できている嬉しさを噛み締めながら読み終わりました(’-’*)

紹介文の中で出てくるクリエイターズネストとは
文学BAR リズールで開催されるイベントです。
芥川賞作家 玄月さんプロデュースの店で
壁一面に紙の本がぎっしりと詰まった地下1階のリズールは、まるで文学好きの巣穴のよう。

その穴に作り手を引っ張り込み、作家のなまの声、なまの生態に迫ってみたら面白いのではないかと、そんなことから生まれた試みです。
さまざまな小説家のゲストが登場します。
これまでの出演者は小川洋子さん、穂村弘さん、北村薫さんなど多数

文学バー リズール http://www7b.biglobe.ne.jp/~liseur/

三浦しをん
1976(昭和51)年、東京生れ。
早稲田大学第一文学部卒業。
2000(平成12)年、書下ろし長篇小説『格闘する者に○(まる)』でデビュー。2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞、2015年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。

著書
『むかしのはなし』
『風が強く吹いている』
『きみはポラリス』
『仏果を得ず』など多数

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。