お絵描き禁止の国 長谷川まりる

「言葉があると思うだけで、なんていうか…認められている気がする」by ハル

第59回講談社児童文学新人賞佳作を受賞した長谷川まりる氏のデビュー作です。

【あらすじ】
ハルは中学三年生。
父・母・二つ下の弟との4人家族。
ハルはクラスの人気者アキラからキスをされて有頂天。

ハルは同じ美術部に所属するりょーちゃんとしおりんが友達。
写実的に絵を描くよりマンガを描くのが得意。
クラスの中ではどちらかと言えば目立たないグループ。
アキラはクラスの中心のグループ。
アキラは学校で一番やんちゃで面白くて、最高に可愛い女の子。

二学期になって席替えをし、ハルの前がアキラになった。
アキラは目ざとくハルのノートのいたずら書きを見つけた。
アキラはハルの絵をほめてくれた。
そこから二人で帰り道にアキラがストーリーを考えてハルがマンガにする様になった。

ハルはどんどんアキラが好きになっていく自分自身を見つめる。
なんで自分は男の子に興味が無いんだろう…。
そんなある日、ハルとアキラがキスしている写メがクラスのグループラインにアップされた。
弟からサッカー部のグループラインでアップされたと知るハル。
ハルはまず両親に自分が同性愛者だという事を打ち明ける。
両親の反応は…。

【感想】
最近はLGBTを主題にした作品をよく見かけるようになりました。
この小説もそのひとつです。
出てくる人の中にはハルを受け入れられない人も描かれています。
全てがハッピーエンドではないのでその分リアルだと感じました。

ハルは強い。
自分のアイデンティティーを守るには家族や友人など周りの協力が必要であることが書かれています。
アキラとの写真が出回った後、そこから不登校になってもおかしくない状況だけど、ハルはそうしないところに強さを感じます。
私自身が自分のアイデンティティーを揺るがされるような事が起きた場合、ハルの様に一歩前に踏み出せるだろうか…。
そんなことも考えた作品でした。
児童書ではありますが大人にも読んで欲しい1冊です。

講談社
194ページ
2019年6月10日第1刷発行
本体価格 1400円
電子書籍あり

著者 長谷川まりる
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晴れの日に、傘を売る。 WATERFRONT支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営    林秀信



今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「雨」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時半
「ホンスキー倶楽部」

試聴はこちらから
https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/05/6-2_honsuki-club_20190520.mp3



かおる文庫のおすすめブックコーナー

偶数週にお送りするこのコーナー。
北海道在住、ブックコーディネーターのかーるさんが選んだ本を紹介します。

「晴れの日に、傘を売る。WATERFRONT支持率ナンバーワンの傘を生んだ「良品薄利」の経営」
林秀信

【内容】

企業努力で価格を下げ、お客様の支持率を獲得せよ!

500円という低価格での革命を起こした「ウォーターフロント」は社員30名ほどの小さな会社だった。

「晴れの日でも売れる傘」について語る傘大好きな社長のビジネス書。

【感想】

個人的にウォーターフロントのカラフルな傘が好きなので、たまたま手に取りました。
著者はもともと、治療院や飲食店を経営して繁盛していたのにも関わらず、傘が好きだという理由で傘屋を目指します。

お客様が感動する傘という目標のために掲げていることは、
良いものを安く!
選ぶ楽しさを大切に!
市場よりもお客様の支持が大切!

そこにあるのは傘への愛、関わってくれる全ての人に対する愛です。
安くて長持ちする傘を売れば利益がでないはずですが、そこを様々なアイディアと企業努力で乗り切ります。
500円の低価格でも品質にこだわり、デザインや柄を数多く用意します。

面白い販売戦略として、アソート方式というやりかたを取り入れています。
カラーバリエーションのある傘をセットで納品することで、カラフルな傘売り場となり、お客様を惹き付け、選ぶ楽しさを提供できるのです。

お客様が満足するものを提供すれば売れると信じて、飛び込み営業から始めていくやり方には驚きを感じます。
正しいことをすると人が集まるという著者の言葉と、その情熱に心動かされます。

東京のお店にもぜひ足を運んでみたいです♪
1階から4回まですべて傘という素敵な空間はアートのようです。
ビジネス書というよりも、忘れがちになる
もの作りの素晴らしさと情熱が伝わる本です。

晴れの日にも買いたくなる傘は、使い捨てではなく本当に欲しい傘なのです。

ホームページ
https://www.water-front.co.jp/flagshipshop/

【目次】
はじめに――自由が丘・街物語
晴れの日でも売れる傘
 「シェア17%」の秘密 
「いい傘を500円で」
 小売店とともに 
 晴れの日に傘を売る 
傘の黒澤プロダクション
 工場あってのメーカー 
 プロ集団としての会社 
「良品薄利」の経営 
唯一の才能、それが「傘づくり」
 終わらない改良 
 究極の傘をめざして 
 もっと新しい驚きを 
傘のことだけ考えて生きる
 仕事に浪漫を! 
 生涯、一所懸命 
おわりに――自由が丘を「傘の街」に!

著者 林 秀信(はやし・ひでのぶ)
株式会社シューズセレクション代表取締役社長。
1946年、長崎県生まれ。
上京後、飲食店経営などを経て、洋傘の研究開発に着手。
86年、生産から加工、販売までの一貫した流通の確立を目指して同社を設立。
有名ブランドのOEM受注生産で得た技術的基盤を背景に、2000年、「SUPER VLE(スーパーバリュー)500」シリーズを発表。
超薄型の折り畳み傘「ポケフラット」は月間売上30万本という大ヒット商品となり、「2004年 日経優秀製品・サービス賞」を受賞。
高機能・高品質でありながら、500円・1000円という超低価格の傘で注目を集め、販売数を伸ばし続けている。
独自商品の開発に力を入れ、国内外で取得した特許等の産業財産権は161件。
従業員35人という少数精鋭の経営で、年間販売数1870万本(2013年)、全国シェア17%を誇る。


「僕の野望は人類を傘から解放すること。要するに、毎朝、天気を気にしながら傘を持っていくかどうか決めるなんて、面倒なことをせずにいつもポケットやバッグに入れていても気にならないサイズの傘があればいいんです」(プレジデントオンラインより引用)

著者兼社長の林氏のインタビューがプレジデントオンラインに掲載されています。
   ↓  ↓   ↓  ↓
https://president.jp/articles/-/18518

でーれーガールズ 原田マハ

「痛くて、苦くて、しみるほど甘い。それが、ひとを好きになるってこと、なのかな」by 鮎子

【あらすじ】
佐々岡鮎子は東京在住の人気漫画家。
そんな鮎子に送られてきた一通の手紙からこの物語は始まる。

その手紙は鮎子の母校、岡山白鷺女子高校が創立百二十周年の記念講演の依頼だった。
鮎子の同期の同窓会も開催し退職した恩師も出席すると記されていた。
その後、同窓会の案内が届き、最後の一行に「武美も来る」と書いてあった。

鮎子は東京生まれ。
高校に入るタイミングで父親が転勤となり岡山に引っ越してきた。
当時は「オールナイトニッポン」を聴いて寝不足になる。
ラジカセが一番の宝物。
学校では「ザ・ベストテン」の話題で持ちきり。
鮎子はなかなかクラスに溶け込めずにいた。
そんな鮎子に声をかけてくるのはクラスでも美人の武美。

鮎子には秘密があった。
絵を描くのが好きな鮎子はノートに「ヒデホとあゆの物語」と自分で作ったマンガを描いていた。
ヒデホは鮎子の理想の彼氏。
大学生でロックバンドのボーカルとギターを担当。
ノートは10冊目になっていた。

そのノートの中を武美に知られてしまう。
鞄の中を広げたときには武美の机の下に落としてしまったのだ。
ノートにはご丁寧にも「この物語は実話である」と書いてある。
武美はノートを読んで「面白かった」と言い
「ほんまにおるん? ヒデホ君って」と聞かれて鮎子はうなずく。
武美にその後ヒデホとどうなったか話す鮎子。
武美もヒデホの事が好きになっていった。

クリスマスが近い冬の日。
鮎子はふとしたきっかけで知り合った淳の事が好きになりつき合うようになる。
淳のために手袋を編む鮎子。
武美にはヒデホのためにと偽って…。
クリスマスイブの日、淳に手袋を渡すところを武美に見られてしまう。
そのまま鮎子と武美は仲直りすることなく、武美は春休みに転校してしまった。

岡山につき同窓会が開催されるレストランについた鮎子。
武美と本当に会えるのだろうか…。

【感想】
現在の話と高校生の時との話が交互に混ざります。
40代の女性も高校生も等身大に描かれています。
マハさんと同年代なので、教室で盛り上がる話や鮎子の思いに出てくる人物も「そうそう」とうなずけました。

当時のスマホもSNSも無い時代の女子高生の淡い初恋…。
クリスマスのくだりでは恋をとるのか親友をとるのか選択を迫られる鮎子。
本気で自分が作りだした「ヒデホ」に恋をしていたので、生身の彼氏より親友を取る鮎子がいじらしく思えます。
断る理由が「ヒデホ」なところが鮎子の純情さを物語っています。

「ケータイもMP3プレイヤーもない時代。ウォークマンだって持っている子なんかいない。ラジカセがいちばん大事な宝物だった時代。
それでも私たちは、じゅうぶん豊かだった」
この一文にシビレました。

最後のくだりは予想がつきますが、それでもこの物語は女性の友情を描いた秀作です。

【目次】
#1 鮎子の恋人
#2 欄干ノート
#3 時間を止まれ
#4 ジョージのブローチ
#5 聖夜
#6 リボンの白
最終話 友だちの名前

祥伝社文庫
245ページ
2014年10月20日第1刷発行
本体価格 580円
電子書籍あり

著者 原田マハ
1962(昭和37)年、東京都小平市生まれ。
関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。
その後2005(平成17)年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞しデビュー。
2012年に発表したアートミステリ『楽園のカンヴァス』は山本周五郎賞、R-40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードなどを受賞、ベストセラーに。
2016年『暗幕のゲルニカ』がR-40本屋さん大賞、2017年『リーチ先生』が新田次郎文学賞を受賞。

著書
『本日は、お日柄もよく』
『ジヴェルニーの食卓』
『デトロイト美術館の奇跡』
『太陽の棘』など多数

原田マハ 公式ウエブサイト

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なずな 堀江敏幸

今回は5月12日放送のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。

兵庫県 ラジオネーム かのんパパ
堀江敏幸「なずな」集英社

① この本のオススメどころこの育児小説は、四十代独身の新聞記者である男性が、生後二ヶ月の赤ん坊の世話をすることになった体験を綴っています。

ミルクを作り、飲ませ、げっぷを出させ、一瞬いっしゅんの成長に感動し、小さな変化に戸惑う。
赤ちゃんに対するすべての描写が味わい深く愛しかったです。

「小さな子どもがひとり身近にやってきただけで、ものごとを見る心の寸法は変わってしまうのだ」とは、その通りだと思いました。

これから子育てをする人も、かつて子育てに奮闘した人にもオススメです。

② この本との出会い
今は閉店してしまった、Futaba+神戸マルイ店の店主さんが、閉店翌日ささやかな打ち上げと称して冷麺屋に来て下さった際、今から3年半前、一週間後に出産を控えたわが娘の誕生を祝ってプレゼントしてくれました。
ちなみに、その店主さんは、今は京都・一乗寺の恵文社さんで、後継ぎをされています。

③ 子どもの頃の思い出
自分の幼少期の記憶があまりないので、娘のカノンの、生まれる前の記憶についてお話します。半年前、娘が3歳になった時に聞いてみました。

「カノンちゃんは、こうやって飛行機みたいに飛んでたんだよ」
「真っ暗な階段に並んでて、ちょっと怖かったの」
「ママのお腹のなかは、お風呂みたいに温かくて何か赤と黒と黄色だった」

3歳の証言。リアルでも創作でも、ビックリですよね。

【あらすじ】
新聞記者の私はやむない事情から弟夫婦の子、なずなを預かることになった。
四十代半ば独身の私にとっては、生後二ヶ月の赤ん坊を相手にミルクをあげるのもおむつを替えるのも未知の体験。
何気ない仕草や発声に様々な発見をしながら、ジンゴロ先生や友栄さんら周囲の温かい人々に見守られて、私はなずなとの暮らしを始める。
生命の瑞々しさに溢れた育児小説。
第23回伊藤整文学賞受賞作。

集英社文庫
464ページ
2014年11月20日第1刷発行
本体価格 740円


著者 堀江敏幸
1964(昭和39)年、岐阜県生れ。
1999(平成11)年『おぱらばん』で三島由紀夫賞、
2001年「熊の敷石」で芥川賞、
2003年「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、
2012年『なずな』で伊藤整文学賞、ほか受賞多数。

著書
『郊外へ』
『いつか王子駅で』
『めぐらし屋』
『バン・マリーへの手紙』など多数

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世界を、こんなふうに見てごらん 日高敏隆

今回は、ラジオ「ホンスキー倶楽部」で4月28日の放送で紹介した本です。
テーマは「春」

◎あらすじ
動物行動学者の著者が語る、いきものから学んできたこと。
虫や動物とおしゃべりするように観察を続けて、見えてきたことをやさしい言葉ながら鋭く綴るエッセイ。

◎みどころ
子どもは観察することで学ぶ時間を持つけれど、そこにあるのは「なぜ?」かと疑問に思う心。
動物学では、動物が今の形になった原因を追及し、その中で体の仕組みと苦労を知っていきます。
それぞれの動物は自分の体の作りに合わせた環境と世界で生きています。
そして人間は動物とは別の環境で生きています。

人間は死を予想して、政治体制まで作る生き物。
けれど人間以外の動物は死がわからないようです。
人間は今目の前にないものをイメージできます。
つまり幻も幻でないと思い込んで世界を作ることができるのです。

著者はこれをイリュージョンと言っています。
それは理屈だったり、時代の流れによって変わる思想だったりします。
こうあるべきだという前提があり、そこから始めたときに見逃すものがあるかもしれません。
ただ目の前にあることが知りたくて突き詰めていったら分かることもあります。そんな時、常識がひっくり返るような発見があるのでしょうか。

そんな風に世界を見てみる、というタイトルはとても奥深い言葉です。
動物の具体的な事例をあげながら人生哲学までに及ぶ、知的な本です。
新しいことを始める春だからこそ、頭を柔らかくするために読んでほしい一冊。

集英社
208ページ
2013年1月18日第1刷発行
本体価格 440円
電子書籍あり

著者:日高敏隆
(1930-2009)東京生れ。
東京大学理学部動物学科卒業。
東京農工大学教授、京都大学教授、滋賀県立大学学長、総合地球環境学研究所所長などを歴任。京都大学名誉教授。
動物行動学をいち早く日本に紹介し、日本動物行動学会を設立、初代会長。
2001(平成13)年『春の数えかた』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。

著書
『チョウはなぜ飛ぶか』
『人間は遺伝か環境か?』
『ネコはどうしてわがままか』
『生きものの流儀』など。
訳書に『利己的な遺伝子』『ソロモンの指環』『ファーブル植物記』などがある。

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ゆめつげ 畑中恵

【あらすじ】
江戸は上野の小さな神社で神官を務める、のんびり屋の兄、弓月としっかり者の弟、信行。
夢に入って過去や未来を見る「夢告」が得意な弓月だが、迷い猫を探せば、とっくに死んで骨を見つけるという具合で、全く役に立たないしろもの。
が、何を見こまれたか、大店の一人息子の行方を見てほしいという依頼が…。
礼金に目が眩み弟をお供に出掛けたものの、事態は思わぬ方向に転がって行く。
果たして、大店の一人息子は見つかるのか?

【感想】
しゃばけシリーズの畠中さんの作品です。
この物語には妖かしは出てきませんが、夢で占うことができる弓月が、なんとなくしゃばけの若旦那を彷彿とさせます。
設定が幕末なので、その時代ならではの展開もあり、中盤から引き込まれるように読み切りました。

角川文庫
317ページ
2008年4月25日第1刷発行
本体価格 560円

著者 畑中恵
1959(昭和34)年、高知県生れ、名古屋育ち。
名古屋造形芸術短期大学卒。
漫画家アシスタント、書店員を経て漫画家デビュー。
その後、都筑道夫の小説講座に通って作家を目指し、『しゃばけ』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。

著書
「しゃばけ」シリーズの他、
『まんまこと』
『つくもがみ貸します』
『こころげそう』など多数