新・魔法のコンパス 西野亮廣

「挑戦してください」

この本は書店でもよく見かけていました。
「あぁ、西野さんまた新刊だしたんだなぁ」と気にはなっていました。
Facebookの「本が好き!倶楽部」の管理人、久木田裕常氏が主催でZOOMで6月に読んだおススメの本を紹介するイベントがあり参加しました。
そこで、久木田氏がフリーランスになりたての人におススメしていたのがこの本でした。

◆お金は「他者に提供した価値の対価」
・お金は他者に提供した「労働」の対価ではなく「価値」の対価
 山の上の缶ジュースが高いのは何故?
 ✖ 山頂へ運ぶコスト
  〇 地上にいる時よりも汗を流して山を登った後のほうがジュースを欲しているから
  → 山の上の缶ジュースは高くしても売れるから高い
◆収入を増やすには、自分自身の希少価値を上げる
・一つの分野に1万時間費やすと「100人に一人の人材になれる」
・「100万人に一人の人材になる」ためには?
→ 職業を掛け合わせる
→「100人に一人の人材の分野 A」✖「100人に一人の人材の分野B」
→ AとBは離れたものにする
  例 西野亮廣氏 A=お笑い B=絵本 ★漫才ができる絵本作家

◆人は相談「する」よりも「される」ほうが気持ち良い
・広告の方法で困ったら相談する。
→ 自分が必要とされて、嬉しくない人間はいない
→ アドバイスを貰うと、相手はお客さん第一号になる
◆集客したければ「お客さんの一日」をコーディネートする
・一つのコンテンツではなく、複数のコンテンツが堪能できる「一日」をコーディネートする
→ A:ライブのチケット
  B:ライブのチケット+終演後の交流会の参加チケット
  BのチケットがAより高いにもかかわらず、よく売れた。

◆自分をブランド化して「ファン」を作る
・「機能検索」の時代が終わり「人検索」の時代が始まった
・機能や品質、値段で他との差別化が図れなくなっている
・同じ味、同じ値段、同じ内装の店が並んでいるときに店を選ぶ理由
→「誰が働いているか?」
◆ファンは「理念」を支持してくれる人
・姿勢や理念に共感し、変化していくことも支持してくれる人
・ファンの線引きはハッキリしておく
・「にわかファン」を否定する「コアファン」がコミュニティーを破壊する

まとめ

1.お金は提供した価値の対価
2.複数のコンテンツが堪能できる一日をコーディネイトする
3.「人検索」の時代、自分をブランド化してファンを作る

【感想】
話し言葉で書いてあり、ページに余白もあるのでとても読みやすい本です。
「働く=労働」の概念が変わります。
本の中盤には近畿大学平成30年度卒業式スピーチが「特別付録」として掲載されています。
スピーチの中で一番印象に残った言葉が冒頭の「挑戦してください」でした。
人は何歳になっても「挑戦」することが大切なんだと身に染みました。

私は若い頃に勇気が無かった為に諦めてきた事が山の様にあります。
50代半ばを迎え、今からでも「やってみたい事」に諦めず挑戦しようと思います。
その一つが富士登山であり、コミュニティー作りです。
自分一人では無理なことも、周りの人を巻き込むことで実現します。

自分には無理かも…
前に挑戦してダメだった…
諦めかけていたことをやってみようと思う気持ちを後押ししてくれる本です。

【目次】
はじめに
第1章 お金
第2章 広告
特別付録 この世界に失敗など存在しない
第3章 ファン
『夢を追いかけているキミへ』

角川文庫
285ページ
2019年5月25日第1刷発行
電子書籍あり

著者 西野亮廣
1980年生まれ。
芸人、絵本作家etc
1999年に梶原雄太と「キングコング」を結成。
人気絶頂の2005年、「世界一面白い芸人になる」夢を叶えるため、テレビから軸足を抜いた結果「炎上芸人」などとパッシングを受けるが、絵本やビジネス書執筆など結果を出し続け、熱狂的支持を得る。
オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」は国内最大で2019年4月現在、会員数2万3000人超。

著書
「新世界」
「魔法のコンパス」
「革命のファンファーレ」など

西野亮廣 ブログ

西野亮廣エンタメ研究所

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サリエルの命題 楡周平

「いま、我々が直面しているのは、近代医療がはじめて直面する最大の危機といっても過言ではありません」by 木下

サリエルとは
「神の命令」という名の大天使(アークエンジェル)であり、死を司る。
医療に通じ、癒す者とされる一方で、一瞥で相手を死に至らしめる強大な魔力、「邪視」の力を持つ堕天使。
この名前がついた新型インフルエンザウイルス。
そのウイルスがもたらす命題(判断)とは…

少子化は正しい、問題は長寿だ

【あらすじ】
東京オリンピックを目前にした日本。
研究者の笠井は東アジアウイルス研究センターからアメリカアトランタにあるCDC(疾病管理予防センター)に派遣され日々インフルエンザウイルスを研究している。

突然、日本に呼び戻された笠井は上司から、インフルエンザウイルスの研究が生物兵器としてみなされると、研究の中止=クビを通告される。
名誉理事長の八重樫の命令だった。
八重樫はこの先、学士院院長や文化勲章を狙っており、生物兵器=テロに繋がるような研究を認めなかったのだ。

同じ頃、秋田県の山間部の寒村に住む野村は今年70歳を迎える。
野村も八重樫によって人生を閉ざされた一人であった。
新聞に八重樫の生い立ちがエッセイ風に連載されている記事を見て当時の事を思い出したのだ。
30歳で当時助手だった野村には互いに思いを通わせている女性が居た。
両家の子女であり東大に転じてきた貴美子である。
野村が幼なじみの記者に頼まれグラビア写真が多く載っている週刊誌に記事を掲載したのだった。
それが教授八重樫の耳に入り、地方の大学の助手として飛ばされたのだった。
暫くは貴美子と手紙のやり取りをしていたが、途絶えるようになり最後の手紙には学生運動に参加し逮捕された男性と交際していることを親にとがめられ、八重樫と結婚することが綴られていた。
その後野村は助手のままで助教授にもなれず、研究論文を送っても不採用になるばかりだった。
これも八重樫が手を回していたのだった。

そんな野村は世界中のウイルス研究者が情報交換を行うサイトで「教授」と呼ばれ、若者に適切なアドバイスをしていた。
ある日、サイトをにアクセスすると未読のファイルがあった。
タイトルは「SARIEL」(サリエル)
極めて感染性が高く毒性の強い新型インフルエンザについての研究報告書だった。
野原はプリントアウトをしてサイトで「もう一人の教授」と呼ばれているレイノルズに見解を聞きたくて送ったのだった。

暫くしてレイノルズから連絡がありニューヨークに会いに行く野原。
そこで見たものは、レイノルズが人工的に作った「サリエル」だった。
レイノルズは前立腺がんに罹っていて余命がわずか。
この「サリエル」に人々が次々に感染し、亡くなっていくと
人々はどんな行動をとるのか。
為政者はどんなアクションを起こすのか。
人間の本性が全てあらわになるその時をこの目でみたいと野原に告白する。
野原はある決意をする。
あの男に…サリエルを…。

八重樫は毎年勤労感謝の日を挟んで一週間、両親の墓参りのため生家のある黒川島に帰る。
黒川島は過疎高齢化が進んでいる。
八重樫は島で唯一の雑貨店からアメリカから自分に宛に来た封書を開封した。
その夕方から大型低気圧で3日間島には定期便が来ず、孤立していた。
3日後、島民全員が新型インフルエンザでの死亡が確認された。

レイノルズから野原に電話がかかる。
離島で隔離されていたためにパンデミック(広範囲に及ぶ流行病)にならなかった。
もう一度、サリエルを使いたい。
野原にアメリカに来てサリエルを持ってきて欲しいと懇願する。
承諾をした野原だが、アメリカには行かなかった。
そして彼もまた肺がんに罹っていて余命はわずかだった。

黒川島の新型インフルエンザから2か月半。
宮城県の山間部鈴森町で第二のサリエルが発症する。
それも黒川島のウイルスが進化したものだった。
病院に運ばれてまもなく脳症の症状がでた。
事は政府官邸にも知らされた。

日本にはインフルエンザの特効薬「トレドール」が150万人分備蓄されている。
副作用の危険を伴うので製造・販売には至っていない。
鈴森町の病院で院内感染者が出た。
即座にトレドールが配布され服薬した。
そして近隣の市内でサリエルが発症する。

トレドールが150万人分しかないことで首相官邸では大激論になった。
限られたトレドールを配布する基準はどうするのか?
実は厚生労働省は「パンデミックワクチンの接種順位の考え方」について見解を出している。
「まず新型インフルエンザ患者の診療に直接従事 する医療従事者から順に接種を行うこととする」
一般人においてはどうするのか?
人命の重さを国が決めるのか?
次世代を担う者からという意見に対して「高齢者を見殺しにするのか」
「有権者から見放されて票が取れない」など罵声が響く。
今の医療制度では国の赤字が増え続けるばかり…。
トレドールの配布を皮切りに日本の医療制度や社会保障制度そのもののあり方を議論にも発展する。

政府の記者会見ではパンデミックワクチンについての質問が相次いだ。
このまま新型インフルエンザ「サリエル」は都市部にまで拡がっていくのか?
政府はパンデミックワクチンについてどう対応していくのか?

【感想】
あらすじがものすごく長くなってしまったのですが、サリエルが発症する過程は丁寧に説明したいと思ったのです。
いやいや、もう一気に読みました。
与党の若手議員と熟年議員とは意見が対立します。
「薬が限られていて孫か自分かどちらかにしか渡らないとすれば孫を優先する」
と、理屈では分かっていても「有権者」と考えると高齢者を切り捨てることは自分の政治生命が終わってしまう…と大反対。
そして事は日本の医療制度の矛盾と社会保障制度が破綻してしまう前に見直しが必要なのではないか…という今、日本が直面していて見ないふりをしている案件が取り上げられています。
いつでも起こりうる問題提起がされていると感じました。
論議の中で「たった2週間のオリンピックに予算以上に膨れ上がった経費をかける必要があるのか? そのお金でトレドールを作った方が良いのではないか?」
という箱もの行政に対する疑問もあぶりだしています。
とても骨太な小説でした。
ただ一点、サリエルが鈴森町で発症したのは何故なのか?
単純に野鳥が感染源なのか?
それとも実は野原が…。
そこが曖昧だったのが気になりました。

実際にパンデミックワクチンに関する厚生労働省の見解が出されているので興味のある方は下のリンクから見てください。

厚生労働省 パンデミックワクチンの接種順位 の考え方等について

講談社
426ページ
2019年6月18日第1刷発行
本体価格 1850円
電子書籍あり

著者 楡 周平(にれ しゅうへい)
1957(昭和32)年岩手県生れ。
慶應義塾大学大学院修了。
1996(平成8)年、米国企業在職中に執筆した『Cの福音』が、いきなりベストセラーとなり、衝撃のデビューを飾る。
翌年より執筆に専念し、時代を先取りしたテーマと幅広い作風で、つねに話題作を発表し続けている。

著書『Cの福音』を始めとする朝倉恭介シリーズ(全6冊)
『マリア・プロジェクト』
『フェイク』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』
『プラチナタウン』など多数

孤島の冒険 ニコライ・ヴヌーコフ

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「子ども」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時半
「ホンスキー倶楽部」


試聴はこちらから

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/05/5-4_honsuki-kurabu_20190513.mp3

ラジオネーム まだまだ花粉症のささやん

ニコライ・ヴヌーコフ 「孤島の冒険」 フォア文庫

① この本のオススメどころ
「孤島の冒険」はタイトルの通り、一人の少年が無人島で約一月半、過ごす物語です。
14歳の主人公(サーシャ)は海難事故で、ある島に泳ぎ着くのですが、その島が無人島だったのです。
サーシャが素晴らしいのは、島での暮らしが幾日も続くうちに、自身もまた自然の中で生かされていることに気づく謙虚さです。
そして、生きることを辞めない心。
この二つがサーシャを語る上で欠かせないと思います。

② この本との出会い
地元の図書館です。

③ 子どもの頃の思い出
夜寝る前に繰り返し読んだ、大好きな一冊です。
夏休みの読書感想文もこの本を選んだような気がします。

【あらすじ】
実話をもとにくり広げられる冒険物語。
遭難モノによくある仲間はなく一人。
孤島の冒険の所以である。
最初の二、三日、サーシャは冒険に憧れた軽い気持ちでいた。
しかし発見されないまま日がたち雨や飢えと闘ううちに、真剣に生きるということを考える。

お父さんや死んだお母さん、友達のことを思い出し、ひとりぼっちの寂しさに苦しんでは大きな声で自分に話しかける。
だが、サーシャは決して勇気を失わない。
サーシャは思う、「無人島こそ、自分をためすことのできる場所なのだ…人間はたたかって勝つために、生命をあたえられているのだ…島はぼくに、ほんものの生活をおしえてくれた。これからも、いろいろおしえてくれるだろう。ひょっとしたら、ぼくを殺すかもしれない。でも、それは島がわるいんじゃない。わるいのはぼくなんだ。」

著者 ニコライ. ヴヌーコフ
特に情報はありませんでした。

あなたは無人島に本を1冊もっていくことができるとしたらどんな本を持っていきますか?

フォア文庫
331ページ
1998年6月第1刷発行

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きみはいい子  中脇初枝

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「雨」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時半
「ホンスキー倶楽部」


試聴はこちらから

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/05/5-4_honsuki-kurabu_20190513.mp3

中脇初枝「きみはいい子」

ポプラ社

◎内容
心に傷をもった人たちが暮らす同じ町、同じ雨の日の出来事を綴った5編の連作短編集。
学級崩壊を通じて子どもと向かい合う教師、
子どもの虐待が止められない母親とママ友、
認知症の母を施設に送り出すまでの娘の葛藤など。
傷を抱えながらも何かに気づき、歩んでいく物語。

◎感想
全編を通して、どこかに傷を負った子どもと大人がでてきます。
過去に起こったこと、感じたことは、全てその人を作る土台となっています。
その素晴らしさと恐ろしさ、そして希望を感じる一冊。
タイトルがすべてを包み込む鍵になり、
全編を通して作者の温かい眼差しを感じて涙がでます。
いくつになっても、誰の中にも、
無条件に認めてほしい子どもがいるのです。
きみはいい子。
愛をもってこの言葉を伝えられたらいいですね。
かつて子どもだった人に読んでほしい本です。

第28回坪田譲治文学賞
第1回静岡書店大賞第1位
2013年本屋大賞第4位

2015年映画化

ポプラ文庫
329ページ
2014年4月4日第1刷発行
本体価格 660円
電子書籍あり

著者 中脇初枝
1974(昭和49)年、徳島県生れ、高知県育ち。
筑波大学卒。
高校在学中の1991(平成3)年に『魚のように』で坊っちゃん文学賞を受賞し、17歳でデビュー。
2013年『きみはいい子』で坪田譲治文学賞を受賞。
同作は本屋大賞2013の第4位となり、映画化もされた。

著書
『こりゃまてまて』
『あかいくま』
『女の子の昔話』
『わたしをみつけて』
『みなそこ』
『世界の果てのこどもたち』など。

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「平成プロ野球死亡遊戯」中溝康孝

「御堂筋線の車内でおばちゃん2人組がマイク・ブロワーズの打撃フォームについて語っていた風景は今でも鮮明に覚えている」

実際に球場に足を運んでコラムを書いているライター中溝康孝氏の「プロ野球死亡遊戯」の最新刊。

選手の事だけでなく、当時は何が流行していたのか背景も書いている。
例えば、秋山・清原・デストラーデの西武黄金時代はとんねるずやドラゴンボールを見ていた時代でもある。
当時の西武の記録だけでなくその後2018年に西武球場で行われた歴代レジェンドOBたちをホームゲームに招くイベントでデストラーデが帰還し、秋山が25年振りにライオンズのユニフォームに袖を通した話で括られている。

著者の中溝氏は埼玉生まれの巨人ファン。
大阪の大学へ入学し大阪で生活することになり、阪神人気の凄まじさに驚く著者。
その具体的な例が冒頭の太文字の電車の中の風景。
このまま阪神の選手の話になるのかとおもいきや、実はこの文章はイチローがメイン。
主にオリックス時代でメジャーに行く直前のことまでが綴られている。
イチローがオリックスで最後の試合の日。
チームは4位に終わるがスタンドからは罵声ではなく「イチローコール」が鳴り響いた。

【感想】
デストラーデのガッツポーズを真似していた人も多かったのではないでしょうか?
私もその一人です。

このコラム集はプロ野球選手一人ひとりにスポットが当たり、エピソードが満載です。
選手の人となりがわかるようにもなっていて、読んでいて万感の想いが込みあがりました。
時代背景と選手の人間模様、当時のチームの様子など詳細に書いてあります。

いくつかのコラムで感じたのは選手と監督との関係です。
監督との相性が合う合わないで、選手の力が発揮できるかできないかまで関わってくるのだと感じました。
このことは新庄剛志氏の「わいたこら」にも同じことが書いてありました。
(中村監督とは合わなかった)
目がでなかった選手がトレードで他球団に行き大活躍していたのは、この様な背景があったんですね。
超個人的な感想ですが、表紙の絵が水島新司さんならなお良かったなぁ…。

プロ野球ファンは必見の1冊です。

【目次】
1.平成大スター遊戯
2.平成バイプレーヤー遊戯
3.平成プロ野球事件遊戯【20世紀編】
4.平成名選手遊戯【投手編】
5.平成助っ人遊戯
6.平成名選手遊戯【野手編】
7.平成プロ野球事件遊戯【21世紀編】
8.平成名監督遊戯
9.平成プロ野球グローバル遊戯
あとがき遊戯
平成球界年表遊戯

筑摩書房
352ページ
2019年5月20日第1刷発行
本体価格 1500円

著者 中溝康孝
1979年埼玉県生まれ。
大阪芸術大学映像学科卒。
東京ドームを中心に年間約40試合球場観戦をするライター兼デザイナー。
2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。
『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。著書
「ボス、俺を使ってくれないか?」
「隣のアイツは年俸1億 巨人2軍のリアル」
「プロ野球死亡遊戯 さらば昭和のプロ野球」など

目撃 西村健

「いったいマル対は、何を見てしまったんだろう、犯人からつけ狙われるような、何を」by 足立

【あらすじ】
戸田奈津美は電気の検針員。
娘の満里奈を幼稚園に預け、夫とは別居して離婚調停中である。
検針員の仕事は割り当てられた地区を毎日歩く。
各家に月に一度ほぼ同じ時間にメーターを見て数字を入力した検針票をポストに入れる。

奈津美の担当する地区で強盗殺人事件が起こった。
「ヒルズ」と呼ばれる豪邸が続く一角の笠木夫人が被害者となった。
その前には近くで立てこもり事件もあり、幼稚園のママ友の間でもこの話は持ち切りで、奈津美に「犯人は現場に戻るっていうから気をつけてね」と言うママ友まで居た。
それ以降、奈津美は後ろから見られている気配を感じるようになった。
警察に相談に行き、対応した穂積刑事は奈津美の担当地区や自宅周辺をパトロールすると告げる。

雑誌記者の諏訪部は大きな事件があると周辺を聞きこんで記事を書いている。
実は諏訪部には他人が留守の時に入り、本人が気づかないものを盗む空き巣の習癖があった。
記者という職業を活かし、マークした家を徹底的に調べ上げる。
そのために大きな事件が発生した周辺で住民から聞き込みをして空き巣を繰り返していた。
笠木邸は絶好の家だった。
入って物色していると思いもかけずに夫人が帰ってきた。
諏訪部は用意していた特殊警棒とサバイバルナイフを取り出した。

穂積刑事は今回の事件で容疑者が何も痕跡を残していないことに疑問を抱いていた。
警察署の中では「見立て屋」と呼ばれ、ファイリングから事件を見立てる一匹狼である。
ナイフで突き刺しているので返り血を浴びているはずの犯人が日中にも関わらず、目撃情報一つ無いのである。
犯人はかなり用意周到な人間で笠木邸に入るときから衛生服を着ていたのではないか?
と、見立てていた。

奈津美は相変わらず後ろから視線を感じていた。
ある日、自宅のポストに脅迫状が入っていた。
警察が調べたところ指紋は発見されなかった。
奈津美は何を見たのか何度も思い返すが、思い当たることは何もなかった。
その後、奈津美への脅迫状は仕事で使う自転車に貼られ、ついには自宅にも忍び込まれた。
夫との離婚調停も全く進まず、精神的に追い込まれていく奈津美。

穂積は衛生服から諏訪部にまでたどり着くのか。
奈津美は諏訪部の餌食となるのか。
事件は意外な展開を見せる。

【感想】
この小説では早い段階で犯人が明らかになっています。
刑事の穂積も早い段階で犯人を見立てています。
見立てを確信に変えるために様々な仕掛けをしていることが伏線となっています。
章によって奈津美が主役であったり、諏訪部であったり、穂積になったりと視点が変わるので、早く続きを読みたい気持ちから次々とページをめくっていきました。
同じ場面で奈津美側からの書き方と穂積刑事側からの書き方があり、これも「どうなっていくの?」と思わせます。

事件が真相に近づくにつれ、どうなっていくのか…とワクワクしましたが最後の展開に今一つ納得できませんでした。
あれほど慎重で用意周到な諏訪部が第三者に犯行をいとも簡単に知られるのだろうか?
読み返してみても、何故犯人だと知ったのかというくだりがありませんでした。
伏線の張り方や奈津美の追いつめられ方が丁寧だったので残念でなりません。
ミステリーが大好きなので次の作品を期待しています。

講談社
416ページ
2019年5月21日第1刷発行
本体価格 1800円
電子書籍あり

著者 西村健
1965年、福岡県生まれ。
東京大学工学部卒。
労働省(現厚生労働省)勤務後、フリーライターに転身。
1996年、『ビンゴ』で小説家デビュー。
2005年に『劫火』、2010年に『残火』、2011年に『地の底のヤマ』で3度日本冒険小説協会大賞を受賞。
また『地の底のヤマ』は翌年吉川英治文学新人賞を受賞した。
2014年『ヤマの疾風』で大藪春彦賞を受賞。

著書
「脱出」
「突破」
「バスを待つ男」など多数

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