いとしの印刷ボーイズ 奈良裕己

「印刷会社の営業は3年続けば、どこへ行っても通用する」

主人公の刷元正は、ナビ印刷の営業マン。
後輩の沖田と日々の印刷トラブルに対応する。

赤字で修正の指示が無いのに画像が変わっている。
パンフレットの誤植
紙の指定の間違い

トラブルが発生するたびに時には印刷している工場へ
時にはデザインを頼んだ制作会社へ
またある時にはクライアントの元へと奔走し解決していく。
そんな印刷会社の営業マンの実態がコミック化した1冊。

著者が元印刷会社の営業マンという事で内容はとてもリアル。
訂正の裏ワザや用語解説も細かく網羅されていて
この1冊で印刷業界のことが手に取る様にわかります。

主人公の刷元さんは熱血のあまり家族と過ごしているときも
印刷物が気になりつい仕事モードになって奥さんに怒らる場面もあります。

印刷業界の営業マンがこの本の通りなら、納期に間に合わせるために奔走している様子もリアルで大変な職業だと思いました。
友人で印刷会社に就職したいと知ったら止めてしまうかも…(笑)
印刷物への愛も感じられるので、家にあるチラシ1枚もそんな中で作られたのだと思うと粗末にできないな…。

 

 

 

 

 

 

 

学研プラス
164ページ

著者 奈良裕己

東京都出身
マンガ家・イラストレーター
印刷会社、広告制作会社の営業マンを経て
2012年4月に独立
2016年9月から「GetNavi web」にて
本書の元である漫画
「今日も下版はできません !」を連載

 

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#印刷ボーイズ
#NetGalleyJP

教場 長岡弘樹

「人を傷つけた経験のある者ほど、よく人を守れる。そういうものだよ」

教場…ここは単なる教室ではない。
警察官を目指す者たちが篩(ふるい)にかけられる場である。

宮坂は大学生の時にスキーからの帰り道に吹雪にあい
ハンドルを切り損ねて崖から落ちた。
雪の重みでドアは開かない。
携帯電話は圏外。
いつしか意識が遠のいていった。

吹雪の時こそ受け持ちを丹念に回る警察官に
命を助けられた。
宮坂は教員生活を2年経験したのち警察官を目指す。


 

 

 

 

偶然にもそこには命の恩人の息子が平田が同期で居た。
平田と宮坂はクラスでも落ちこぼれでよくつるんでいた。
一期上の学生からはどちらが先に辞めるか賭けの対象にまでなっていた。

宮下はある日担当教官の風間に
「なぜ、わざと下手なふりをした」と聞かれる。
職務質問の授業の事だ。
気づかれている…宮下はそう思った。

事件は唐突にやってきた。
平田から手錠のかけ方を練習したいと言われ応じた宮下は
平田の部屋のベッドに繋がれてしまった。

平田は気づいていた。
宮坂がわざとできが悪いふりをしているのを。
平田は硫黄入りの入浴剤と酸性のトイレの洗剤を混ぜて
有毒ガスを発生させて無理心中を図ろうとしているのだ。
平田が洗剤のキャップを外しにかかったその時…。


警察学校を舞台にした小説です。
宮下をはじめ6名の生徒の教場での生活が
書かれています。

警察学校ってこんなにドロドロしてるのか???
キツイ訓練と規則。
閉鎖的な空間に閉じ込められると
人はこんなにも残酷になれるのか…。
疑心暗鬼になりながら読み進めていくと
冒頭の言葉があり、そのためにドロドロを描いたのか…
と納得しました。

高校3年生の時、一人の同級生の男子が
卒業後の進路を警察学校に行き警官になるって
言ってたなぁ。
彼は希望通りに警官になったんだろうか…。
本を読んだ後、ふと、そんなことを思い出しました。

 

 

 

 

 

 

 

【目次】

第一話 職質
第二話 牢問
第三話 蟻穴
第四話 調達
第五話 異物
第六話 背水
エピローグ

小学館 294頁

著者 長岡弘樹
1969年山形県生まれ
筑波大学卒業
団体職員を経て、2003年「真夏の車輪」で
第25回小説推理新人賞を受賞

著書
「傍聞き」
「白衣の嘘」
「教場2」他多数

男役 中山可穂

「それとひきかえにファントムさんは、その子の一番大事なものを奪っていくそうよ」

宝塚歌劇には50年前にトップになって二日目に
舞台事故で亡くなった扇乙矢という伝説の男役スターがいた。
男役として舞台の上で殉職した先輩への畏敬の念から
愛情をこめてファントムさんと呼ばれている。
ファントムさんに見込まれると必ずトップになるという逸話まであった。


 

 

 

 

月組の新人公演で主役の座を射止めたナッツこと永遠ひかるは
月組のパッパことトップスターの如月すみれにあいさつに行く。
新人公演は本公演と同じ内容を新人が演じる公演で
ナッツは本公演と新人公演の二つの役のセリフや
動きを覚えなければならない。
ましてや上級生3人をごぼう抜きにして
主役となったので緊張も半端なく地獄の始まりの様だった。

今回の舞台で退団するパッパはファントムさんが見える
唯一の人物。
トップとしての悩みをファントムさんに相談をし
ファントムさんもパッパをフォローする。
主役が決まったナッツもファントムさんの気配を
感じる様になった。
新人公演にむけて稽古が進んでいく。


「娘役」からの「男役」と逆の順序で読んでしまいました。
「娘役」がフランス映画なら
「男役」がアメリカ映画です。
ファントムさんの登場がもはやファンタジーです。
主役はファントムさんであり、パッパでありナッツでもある。
そんな感じがしました。

トップスターの退団と言うと
柚希礼音さんが浮かびます。
1度しかステージは見ていませんが
引き込まれました。

作中のパッパさんは「退団後女優は無理、男役しかできない」
と嘆いていましたが、ファンもそうです。
柚木さんが退団した後のミュージカルを
YouTubeでみましたが、スカートを履いて
男性と踊る姿に違和感があったのを覚えています。

中山可穂さんの宝塚シリーズは
第三作目「銀橋」へと続きます。
早く図書館に「銀橋」が入らないかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

角川書店
201頁

著者 中山可穂
1960年生まれ
早稲田大学教育学部英語英文科卒
1993年「猫背の王子」でデビュー
1995年「天使の骨」で朝日新人文学賞、
2001年「白い薔薇の淵まで」で山本周五郎賞を受賞

著書

「マラケシュ心中」
「男役」
「ケッヘル」など多数

娘役 中山可穂

「おまえは何のために俺のところにやってきたんだい?」

一亀会の片桐は大鰐組の組長ムッシュこと大鰐健太郎の命を狙い
三か月間尾行を続けていた。
片桐にチャンスが巡り、きらびやかな建物に入っていく
ムッシュの後に続くとそこは宝塚大劇場だった。
なんとかムッシュの真後ろの席を手に入れて
その細い首に手をかけようとしたときに
舞台からラインダンスの靴が片桐を目掛けて飛んできた。
ここから片桐の人生が変わっていく。


 

 

 

 

これだけだと単なる極道の話ですよね。
物語はやくざの片桐のパートと雪組娘役のび太こと
野火ほたるのパートで構成されています。
片桐はほたるの靴が縁でほたるを陰ながら応援することにします。
極道もんなので表には迷惑をかけない
ある縁で一瞬、ほたると片桐が言葉を交わす
場面があるのですが、それがまた片桐に負い目となる
出来事も起こり
最後は昔のフランス映画を思い出すような演出でした。
若かりし頃のアランドロンが私の脳内で再生され
本を閉じた時には「FIN」と浮かびました。

私が小学生の頃はちょうど「ベルサイユのばら」が全盛期でした。
安奈淳さんや麻実れいさんの頃です。
祖母に「見たい」とせがんだのですが、チケットは取れませんでしたが
宝塚大劇場までは連れていってもらえました。

それから40年も経ち、とあるご縁で娘と宝塚大劇場に
足を運びました。
初めて生で見る舞台に感動し圧倒され何度か観劇し
宝塚そのものに興味を持ちこの本にたどり着きました。
また、舞台に足を運びたいなぁ。

 

 

 

 

KADOKAWA
211頁

著者 中山可穂
1960年生まれ
早稲田大学教育学部英語英文科卒
1993年「猫背の王子」でデビュー
1995年「天使の骨」で朝日新人文学賞、
2001年「白い薔薇の淵まで」で山本周五郎賞を受賞
著書
「マラケシュ心中」
「男役」
「ケッヘル」など多数

ひやかし 中島 要

「ここの女は我が身を売って、家のため男のために金を作った者ばかり」

吉原に身を売られたおなつ
おなつは元々侍であった。
皆川藩米倉家に仕えていた武士、大下彦十郎の娘。
婚礼を控えた十八の春。
父、彦十郎が花見の最中に考えが全く違う
田坂孫右衛門と口論になり
彦十郎が孫右衛門を切り捨てそのまま逃げてしまった。

おなつの婚礼は消え、大下家は取り潰し。
母は病に倒れ兄は盛り場で借金を作り
おなつを吉原に売ってしまう。

おなつは白妙と名を変え客を引くが、なかなか客がつかない。
ある時から着の身着のままの浪人が
おなつの居る巴屋の前に立ち続ける。
店に入るでもなく女たちに声をかけるでもなく
ただ、おなつの方をじっとみる浪人。
おなつも気になりはじめ、思いを寄せるようになり
それと共におなつ(白妙)が売れっ子になっていく。

ところがある日からばったり浪人を見かけることが無くなった。
気になるおなつ。そこへ浪人の素性を知る三益屋治平と名乗る男がおなつに会いに来る。

表題の「素見(ひやかし)」をはじめ
吉原の女性を書いた短編集

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えんとつ町のプペル にしのあきひろ

「信じぬくんだ。たとえひとりになっても」

「高くて買えない」と言った小学生のために
web無料公開に踏み切り、賛否両論になった一冊です。

【あらすじ】

えんとつ町に住むルビッチはお母さんと二人暮らし。
お父さんは海に出てそのまま亡くなってしまい、
家計を助けるためにルビッチは煙突そうじをしています。

ハロウィンの日、ルビッチはゴミで出来たゴミ人間に出会います。
周りはゴミ人間の事を疎んじていますが、ルビッチはゴミ人間を毎日洗って友達になり
「ハロウィン・プペル」と言う名前をつけます。

ある日のこと、プペルを虐めるアントニオ達に囲まれたルビッチ。
アントニオに詰め寄られルビッチはやプペルに告げました。

「もうキミとは会えないよ。もうキミとはあそばない」
会わなくなって暫くたったあるしずかな夜、ルビッチの窓が鳴ります。
外には体がドスぐろく、片方の腕も無くなり、
変わり果てた姿になったプペルが居ました。

プペルに連れられてやってきた砂浜には風船がついた一隻の船が。
船に乗ったルビッチが知った真実とは…。


無料公開されているwebでこの物語を読みました。
「キングコング西野オフィシャルダイアリー」にアクセスし、
読み終えたときには話に感動して泣いていました。

(なぜ感動したのか・・・ネタバレになってしまうので、気になる方は読んでみてくださいね)

 

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