ひみつのしつもん 岸本佐知子

「いったいどこから。自分か」

抱腹絶倒のエッセイです。
絶対、電車など人前で読んではいけません。
笑いをこらえきれません。

私は不覚にも電車で読んでいて、
プフフッとこらえきれずに吹き出してしまいました(笑)

そのエッセイは「ネジ」

自分の部屋でネジを踏んづける。
そのネジはサビが浮いていて年季が入っている。
部屋の中を見回して、ネジが使われているものを見ても
どれもネジがゆるんでいない。

色や素材もマッチしない。
著者意外にこの部屋は誰も入らない。
消去法で考えた結果…
冒頭の言葉。

自分からネジが落ちるというこの発想。
で、ネジを見ているうちに自分の一部の様に感じる著者。
「肘とか膝とかが妙にキコキコいう」のはネジが取れたからか?
いろいろな体の不調が「機械の経年劣化」で説明がつくのでは?
あれやこれや妄想が広がる。
ふと我に返り、ネジを引き出しにしまう。

ここで話は終わらない。
数週間後、また同じようなネジを部屋の中で踏んづけるのだ。

【感想】
このエッセイは妄想力が爆裂しています。
著者はどんな人なんだろうかと気になりネットで調べると…。
写真ではシュッとした美人。
えっ?
この人が?
妄想癖があるのか…。

ギャップがありすぎてこれまたフフっと笑ってしまいました。
私もいろいろ妄想しますが、とても文章に残そうとは思いませんでした。
岸本さんのこのエッセイを読んで、ふと自分も妄想を文章にしてみようか…
という気になりました。

家族の理不尽な言動も文章にすると客観視できて笑えるなぁ。
「父 セリフ三選」で感じたことです。
これまでいろいろな人のエッセイを読みましたが
妄想力はさくらももこさんを超えています。
あぁ、面白かった。

気分転換におススメです。

おススメ度
★★★★

筑摩書房
224ページ
2019年10月9日第1刷発行
本体価格 1600円

著者 岸本佐知子
1960年神奈川県生まれ。
翻訳家。
訳書にスティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、リディア・デイヴィス『ほとんど記憶のない女』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』など多数。
編訳書に『変愛小説集』、
2007年、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞。著書
『なんらかの事情』など。

余命10年 小坂流加

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「私の号泣本」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから


https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/08/9-4_honsuki-club_20190817.mp3

かおる文庫のおすすめブックコーナー

北海道在住、ブックコーディネーターのかーるさんがおススメする本を紹介するコーナーです。

オススメの号泣本

余命10年
小坂流加
文芸社文庫

◎あらすじ
20歳の茉莉は、治療法のない不治の病にかかり、余命10年を宣告される。
周りと違う自分を受け入れながら生きる茉莉と彼女を囲む人々の長くて短い10年の物語。

◎みどころ
決められた期限の中で何を選び、何を捨てるのか。
友人たちとの違いに歯噛みし、大事なものを持たないように淡々と生きる茉莉。

あるきっかけから没頭できる趣味の楽しみを知り、自分らしく友人と繋がっていきます。
そんな彼女が図らずも恋に落ちたとき、選んだ道は相手への思いやりに満ちていました。

死へ向かう息苦しさを正面から見つめる主人公の葛藤と真っ直ぐさに涙が止まらなくなります。
生きることの愛しさ、そして愛しい人のために何ができるのか自分に問いたくなるラブストーリー。

著者は本作の編集が終わったあと、病気が悪化して刊行を待たず2017年に逝去しています。まさに魂が込められた一冊です。
第6回静岡書店大賞 映像化したい文庫部門 大賞受賞!


【補足】
「死ぬ準備はできた。だからあとは精一杯、生きてみるよ」
20歳の茉莉(まつり)は、数万人に一人という不治の病にかかり、“余命10年”であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、生きることへ執着しないよう決して恋はしないと心に決める茉莉だったが……。

発売元である文芸社の秋山浩慈さん
『余命10年』はフィクションではありますが、その心情描写は決して想像だけのものではありません。
小坂さんが主人公の茉莉にどれだけご自身を投影されたのか、今となっては知るすべはありませんが、物語の中の一つひとつの言葉から、著者の想いがストレートに伝わってきます。

虎を追う 櫛木理宇

「この国ではつねにマジョリティがおとなしく、マイノリティの一部だけがノイジーで人目を惹きがちだ」

北蓑辺郡連続養女殺人事件の犯人、亀井戸死刑囚が獄中で病死する。
この事件は今からおよそ30年前の1987年から88年にかけて起きた事件。
小学生の幼女が誘拐され性的暴行を受けたうえに殺された。
犯人は亀井戸健と伊与淳一の二人。
伊与死刑囚は再審を要求している。

亀井戸死刑囚が亡くなった事と当時の事件の様子を伝える新聞を見ていた元刑事星野誠司は当時を思い出す。
亀井戸と伊与は当時、空巣をしていた。
亀井戸は近所でも評判が悪く、自白をしたので逮捕となった。
当時、星野は「亀井戸が計画的に幼女を誘拐し、残虐な行為をしたとは思えない。
ましてや二人一組の性的連続殺人犯も聞いたためしがない」と上司に話をするが取り合ってもらえなかった。

星野は昔馴染みの記者、小野寺と居酒屋で会いなんとかして世論を動かして伊与の再捜査になるように動くつもりであることを告げる。
小野寺は世論を動かす見込みがあるなら記事にすると星野に伝えた。

星野は自分の孫で大学生の旭に冤罪で再審要求の文章をネットで公開したいと相談する。
旭は文章より動画を勧め、幼なじみの哲に相談する。
哲は動画作成と公開にあたって、被害者遺族全員の許可を取る事を条件にした。

一方星野は伊与の弁護士、片桐と会い自分が当時の捜査員だったことや冤罪の可能性があることを伝える。
片桐はこれまでの資料を星野に快く貸し出した。

星野、旭、片桐弁護士の3人は被害者の遺族、柳瀬久美子と木野下一己と会い自分達がやろうとしている活動を説明すると、条件つきで承諾を得ることができた。
小野寺は独自ルートで栃木総合テレビの報道番組プロデューサーの福永を巻き込む。
星野、旭、哲、小野寺、福永…星野組が結成された。

ツイッターや動画は思った以上に反響があり、哲が作った動画はそのままドキュメンタリーとして地方局ではあるがテレビ放映となった。
テレビ放映後、大手新聞社に真犯人を名乗る男から小包が送られてきたことが三面の記事に掲載された。
小包には女児用のスカート、古い爪、歯のかけらが入っていた。
文書には殺された幼女がよく歌っていた歌詞が書かれていた。
スカートは木野下氏が自分が娘に買ったスカートだと証言をする。

やはり冤罪だったのか!?
真犯人が名乗り出た理由は!?

そうして、新たな女児誘拐事件が起こる…。

【感想】
元刑事星野が主人公ですが、真の主人公は旭と哲です。
大学に入学したものの、燃え尽き症候群の様になってなんとなく毎日を過ごしている旭。
人との関係が上手く築けず引きこもっている哲。
特に哲が事件を表面化させる活動の中で無気力だった日々から自分の進路を見出し、やりたいことも口にするようになる変化は、この小説の第二の物語です。

小さい頃の生い立ちがその後の人生を決めてしまう可能性が高い。
親や周りの大人達の責任は重大です。
そのことをこの小説から読み取りました。

残念なのは、誘拐した幼女と犯人との描写です。
それが一度ではなく何回もあり、子を持つ親としては嫌悪を感じました。
リアルな描写は必要ないと思います。
そしてエピローグも必要だったのでしょうか?
幼女への性的暴行や誘拐、殺害は一つの事件が解決しても終わることが無い。
あえてこのエピローグで終わることにも後味の悪さが残りました。
これがイヤミスで著者が意図してのことなら、してやられました。

おススメ度
★★★★
リアルな暴行シーン(それも幼女に)やイヤミスが苦手な方にはおススメできません。

光文社
432ページ
2019年9月17日第1刷発行
本体価格 1700円

著者 櫛木理宇
1972(昭和47)年、新潟県生れ。
2012(平成24)年『ホーンテッド・キャンパス』で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞し、デビュー。
同年、『赤と白』で小説すばる新人賞を受賞。著書
『ドリームダスト・モンスターズ』シリーズ
『死刑にいたる病』
『209号室には知らない子供がいる』
『鵜頭川村事件』など著書多数。

ジャンヌ 河合莞爾

「『私とは何者なのか?』『私は何のために存在するのか?』ということを考え始めたのです」by ジャンヌ

「自律行動ロボット三原則」
第一原則 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
     または、危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。
第二原則 ロボットは所在する国の法令、及びその国が批准する国際法と条約を遵守しなければならない。
     ただし、法令の遵守が第一原則に反する場合は、この限りではない。
第三法則 ロボットは人間から与えられた命令に服従しなければならない。
     ただし、命令が第一または第二原則に反する場合は、この限りではない。

【あらすじ】
時は2060年代、人口は5000万人まで減少していた。
ケン・タカシロの家でジャンヌは家事ロボットとして迎えられた。
大手投資銀行のプロップ・トレーダーであるケン・タカシロは妻のエマ、娘のシェリーの3人暮らし。

警視庁の刑事、相崎按人がタカシロ家に着いた時には、ケン・タカシロは死体となっていた。
殺したのは家事ロボットのジャンヌ。
ロボットには三原則があり、人に危害を加えるはずはない。
なのに何故、ジャンヌはケン・タカシロを殺害したのか?

科学捜査研究所でジャンヌを調べると異常なしだった。
原因がわからないためにジャンヌを製造したJE本社がある仙台まで輸送が決定する。
相崎も唯一ジャンヌと言葉をかわした刑事として輸送の担当を命じられる。
その輸送の途中に相崎とJEの担当者、ジャンヌが乗った車が何者かに襲われる。
ジャンヌを起動させ、なんとかその場を凌ぐことができ、近くの森に身をひそめる相崎とジャンヌ。

誰がジャンヌ達を襲ったのか?
何故、ジャンヌはケン・タカシロを殺したのか?
相崎とジャンヌは無事に森から脱出できるのか?
全てが解決した先に待っているのは…。

acworksさんによる写真ACからの写真 

【感想】
読み進んでいくと、何故ジャンヌがケンを殺したのかは予想できます。
やっぱりそうなのか。
最後のエピローグで思わず顔がほころびました。
ジャンヌは優しく気高く切れ者のAIです。

設定が2060年代なので、様々な表現も振り切ってしまえばよいのに…。
と感じるのが何点かありました。
・「取り調べにはカツ丼」のフレーズ。
 今でも、それはないやろと思うのに2060年代までこんなフレーズいるのかな?
・wi-fiがまだ必要
・厚生労働省や自衛隊がそのままの名称で存在している
無理に2060年代に設定しなくても、もっと近未来設定でもこの話は成り立つのではないか??
試験的に人型家事ロボットがセレブの家には配置されている…という設定でも十分の様な気がしました。

相崎の古いモノを大切にし、こだわりはあるけどそれ以外は無頓着なキャラクターには好感が持てました。
勿論、AIのジャンヌにも。
出てくる人物は一癖も二癖もあるので、設定に「ムム…??」と思いながらも、読み切ることができました。

おススメ度
★★★

【目次】
プロローグ 涙
01 殺人者
02 三原則
03 尋問
04 襲撃
05 危機
06 脱出
07 野営
08 二日目
09 牧場
10 ジェームズ
11 傍観者
12 覗き屋
13 狩り
14 秘密
15 攻撃
16 神の論理
17 女神降臨
18 計画
19 招集
20 聖女
エピローグ 帰宅

祥伝社
314ページ
2019年2月20日第1刷発行
本体価格 1700円
電子書籍あり

著者 河合莞爾
熊本県生まれ。
早稲田大学法学部卒。
出版社勤務。
2012年に第32回横溝正史ミステリ大賞を「デッドマン」で受賞しデビュー。
その圧倒的なリーダビリティとキャラクター性でファンを増やしている。

著書
「デビル・イン・ヘブン」
「スノウ・エンジェル」
「ドラゴンフライ」
「ダンデライオン」
「燃える水」など

宇宙兄弟 小山宙哉

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「私の号泣本」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/08/9-3_honsuki-club_20190817.mp3


ラジオネーム 大乃国のぶお

小山宙哉 宇宙兄弟 講談社コミック

まずは号泣について。
昔から大声をあげて泣くことを指しますが、近年、声を押し殺して涙がこらえ切れずに泣くことも号泣のイメージとなってます。

①この本のおススメどころ
主人公難波ムッタ。
自分も認める超ネガティブ男。
そして弟ヒビト。
兄が羨む超ポジティブ男。
そんな二人を軸に物語は進む。兄弟の幼き頃からの夢に向かって。

夢に向かう話は楽しい。
ただこの作品の良さはそこにだけあるのではない。
言葉にあります。
名言という言葉は使いたくないけど、たくさんあります。
言葉だけ聞いてもわからない、その前の行動とセットで初めてなことも。
だからこそか、その行動に揺さぶられ、次の言葉でごっそり感情を崩されてしまうのです。電車で読んでるのに、周りを憚らず、ドドーっと涙が流れ落ちる、そんな危険な作品です。

ネタバレを一つ。
ある女性が病で体の自由を奪われていく。
できたことができなくなる。
好きだったことも諦めねば。
そんなとき、なんば兄弟はその諦めに寄り添うのではなく、あるプレゼントをする。
そばにいる女性が漏らす。
「この兄弟はすごい。」
宇宙兄弟は私にとって大事な作品です。

②この本との出会い
初読みの漫画家、たまたま書店で見かけて、犬のイラストが可愛かった。
それくらいです。
前評判は聞いてませんでしたね。

③ 直近の号泣したできごと
号泣ではないけど。
会社でご近所さんとの懇親会である焼肉大会。
顔見知りではない方の隣に行ったとき、椅子に杖をかけられているのを見かけました。
持ち手の部分がきれいな模様で、そこにフックがついてるのですが、フックの柄がうさぎのイラストでした。
とっても可愛らしいけど。
見ず知らずの関係、ましてや男な私。
杖を話題にするのもいかがなものか?と思い、そのままにしてたんですけど、終わりかけの頃につい声掛けしてしまいました。
「可愛いがらの杖やね。」と。
するとその方はにっこり笑って、この人のプレゼントなの、と隣の方を示しながら教えてくださる。
プレゼントをされたご婦人は照れくさそうになんだかんだと教えてくださいました。
数年前の小さな好意。
それをベストのタイミングで触れることができたかなぁ、自己満足するのでした。

実は、杖を褒めるエピソードは宇宙兄弟から。
背中を押してくれたのです。

【あらすじ】
兄は、優秀だが自分の能力を信じられず、ネガティブ思考に陥りがちな青年・ムッタ。
ムッタは失業という挫折のさなか、幼い頃に弟と誓い合った夢を取り戻し、「宇宙飛行士になる」という夢をすでに叶えていた弟・ヒビトの後を追い始める。
弟の背を追う形で、数々の困難を乗り越えて、宇宙飛行士になったムッタ。

ヒビトは日本人初のムーンウォーカーになるも、宇宙飛行士になってからはじめての大きな挫折を経験し兄をはじめとする周囲の人に支えられて、必死に乗り越える。

「俺らは生きて、二人で月面に立とうぜ」
兄は先に行く弟に導かれ、弟が立ち止まった時には兄が優しく背中を押し、二人は「夢の続き」に向かって走り続ける。

著者 小山宙哉
1978年京都府生まれ大阪市立デザイン教育研究所卒。
デザイン会社のサラリーマンを経て、『モーニング』に持ち込みをした『ジジジイ』で第14回MANGA OPEN審査委員賞(わたせせいぞう賞)受賞。
『劇団JET’S』で第15回MANGA OPEN大賞受賞。
2007年12月からモーニングで連載している『宇宙兄弟』は初の週刊連載作品。
この作品で2010年(平成22年)の第56回小学館漫画賞一般向け部門、2011年(平成23年)の第35回講談社漫画賞一般部門、2014年(平成26年)の手塚治虫文化賞読者賞を受賞している。

さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ 香納諒一

「おまえさんにゃ、この世界は向かないよ。足を洗ってよかったのさ」by 高峰

キャンパーとは、英語でキャンピングカーの事。
主人公の辰巳の愛車はフォルクスワーゲンバス。

おススメ度
★★★
主人公の辰巳が関わる3つの事件が掲載されています。
サラッと読めてしまいます。
ミステリー好きな人におすすめ。

【あらすじ】
主人公の辰巳はカメラマン&探偵稼業の二足の草鞋。
愛車のフォルクスワーゲンバスをキャンパーと呼び、家には殆ど帰らずキャンパーで様々な地を巡り写真を撮っている。

仕事で富士山を撮ろうと粘っていると、地元で富士山の写真を撮っている白井が声をかけてきた。
白井はプロのカメラマンに会ったことが嬉しくて辰巳にフルネームを尋ねる。
辰巳は白井と別れ川口湖畔にある道の駅で駐車場の端っこのなじみの店舗に顔を出した。
店が閉まった後も、店の店主である矢崎夫婦や辰巳と同じ車中泊の人たちとで宴会が始まった。
白井もひょっこり現れ一緒に時間を過ごすことになる。

宴会の最中に駐車場の先から怒鳴り声が起きた。
車上荒らしだ。
犯人は捕まらず取られたのは白井のカメラだった。

思った様な富士山の写真が撮れず締め切りが迫った辰巳は白井の写真を代わりに使うことを考える。
矢崎に白井の連絡先を聞き訪ねて行くと白井はアパートの部屋で死んでいた。
アパートで白井の息子と娘に偶然出くわす。
辰巳は名乗り白井の写真を使わせて欲しいことを二人に告げる。

その夜、娘の寿子から辰巳に連絡が入った。
探偵の辰巳に、弟が警察に逮捕されそうなので助けて欲しいという依頼だった。
あらためて白井の部屋に入りパソコンを操作するとこの半年間のデータが消去されていた。
仏壇の写真を尋ねると寿子は「母ではない」という。
白井は家族を捨てて寿子の元へ行ったのだった。

白井を襲ったのは一体誰なのか?
そして動機は?

【感想】
短編が3作品なので長編のミステリー小説と比べると事件や人間関係が綿密には書かれていません。
主人公の辰巳は探偵ですが、探偵で生業を立てているのではなく、カメラマンとしての側面が強く描かれています。
それだけにミステリーが苦手な人も、読みやすい小説となっています。

私は個人的に辰巳の生活スタイルに憧れました。
元々、私もフォルクスワーゲンバスが欲しいと思っていて、その車で写真を撮りながら時間やお金に縛られることがない辰巳がとてもとても羨ましいのです。

私も辰巳のような生活を送る!!
そんなことを決意した一冊でした。

双葉社
280ページ
2019年8月9日第1刷発行
620円

著者 香納諒一
1963年横浜市生まれ。
早稲田大卒。
出版社勤務の傍ら小説を執筆し、1990年に『影の彼方』で第7回織田作之助賞佳作入選。
1991年「ハミングで二番まで」で第13回小説推理新人賞を受賞し小説家としてデビュー。1999年「幻の女」で第52回日本推理作家協会賞を受賞。

著書
「噛む犬 K・S・P」
「虚国」
「熱愛」
「心に雹の降りしきる」など。