美食の報酬 ウィリアム・リンク/リチャード・レビンソン

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「おススメの美味しい本」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらからできます。

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/07/8-3_honsuki-club_20190720.mp3


ラジオネーム 京都のよっしー

① この本のオススメどころ
往年の海外ミステリードラマ「刑事コロンボ」の一エピソードのノベライズ版です。
自らのレストランを持つ著名なイタリア人シェフのビットリオが、同様に著名な料理・レストラン評論家ポールによって毒殺された事件の謎をコロンボが解くのですが、まあ全編の半分以上は、誰かが何かを食べてるシーンのオンパレードで、いつ読んでもうまそうです。

物語の冒頭から犯人と被害者が会食していますし、事件直後に臨場したコロンボは、さっそく店のシェフに作ってもらったスープを口にする始末。
物語のクライマックスは、コロンボと犯人が事件現場である被害者のレストランで料理対決をするという徹底ぶりです。

被害者の友人である様々なレストランのシェフたちを、コロンボが訪ねて事情聴取する際も、いく先々のシェフたちが応援の意味を込めていろんな料理をコロンボにご馳走するのです。
このエピソード、幸か不幸かドラマ版は未見なのですが、見れば間違いなく未曾有の「飯テロ」になること間違いなしです。

もちろん料理だけでなく、コロンボの名推理によって犯人が追い詰められ観念する様は、痛快ですしね。

いま、どれだけの方が刑事コロンボをご存知かはわかりませんが、コロンボといえば「倒叙(とうじょ)もの(物語の冒頭もしくは早い段階で、犯人が事件を起こす様が明かされ、探偵役がいかにして犯人を追い詰めるかを楽しむミステリーの一形式、すみません、ホンスキーには釈迦に説法でしたね!)」の名作で、三谷幸喜さんの「古畑任三郎」や大倉崇裕さんの「福家警部補」シリーズは間違いなくコロンボへのオマージュです。

そんなわけですから、先ほど僕があっさりと犯人を言っちゃったのも、ネタバレにはならないというわけです。
ドラマでコロンボを演じたピーター・フォーク、吹き替えの声をアテられていた小池朝雄さんともに故人となり、新作を見ることはかなわなくなりましたが、既存のエピソードでも見ていないものの方が多いので、いつかゆっくり全話を見てみたいです。

② この本との出会い
小学校卒業直後の春休み、信州に春スキーに連れて行ってもらったんですが、スキー中に転倒して右足を複雑骨折してしまい、1ヶ月ほどの入院生活を送りました。
その入院中に親戚の叔父さんが、お見舞いとして持ってきてくれたのがこの本でした。
「歌声の消えた海」と2話がセットになったノヴェルズだったかと思います。

それまでは、ドラマを数話見たことがあるだけでしたが、ノベライズもドラマに劣らず面白く、入院で時間が有り余っていたこともあって、一気に読んでしまったことを覚えています。
このノベライズ版は二見書房から出ていたのですが、同じシリーズの本を続けて何冊か買ってもらって読みましたね。

③ 食べ物に関する思い出
子供のころ、母がよくおにぎりを作ってくれました。
小さな俵形で、具は何も入っていない塩だけのおにぎりに、味付け海苔(関西では味付け海苔が普通ですよね!?)を巻いたものが、時々は朝食に出ましたし、そして遠足や運動会のお弁当には必ず入ってました。

また、家は田舎の農家だったので、稲の刈り入れ時には家族全員で一日中、田んぼに出るのですが、そのお昼ご飯もおにぎりでした。
そんな時はたくあんか梅干し付き!
冷めて、海苔がぴったりご飯に張り付いていても美味しかったし、むしろおにぎりは冷めている方が好きかも。

あっ、でもコンビニのおにぎりを食べた時はパリパリの「焼き海苔」だったのでビックリしたことも覚えてます。
最近は、おにぎりと言えばそのコンビニおにぎりばかりですが、今のマイブームは塩鯖のおにぎりです。外せない定番はやはり梅干しかな。


注文をまちがえる料理店 小国士朗

「認知症である前に、人なんだよな」

「注文をまちがえる料理店」は期間限定のお店です。
ここで注文を取り料理を運ぶのは、認知症がある方達です。
なので、注文を間違えたり忘れたり、お水を2つ持ってきたりします。
でもお客さんは誰一人怒りません。
それどころか、間違えずに持ってくると残念がったりするのです。
そんなお店ができるまで、そしてそこであった一人ひとりのものがたりが語られている1冊です。

おススメ度
★★★★★
ノンフィクションやドキュメンタリーが好きな人
モノづくりに興味がある人
高齢者の介護に興味がある人
特におススメです。

認知症になっても最期まで自分らしく生きていく姿を支える

著者の小国氏はテレビ局のディレクターです。
2012年ある認知症のグループホームを取材していました。
ここに入居している認知症の方々は、買い物から料理・掃除・洗濯も自分でできることはできる範囲でやっています。

ある日の午後、お昼ご飯の献立はハンバーグ。
でも食卓に並んでいるのはなんと餃子。
小国氏は「あれ?今日はハンバーグでしたよね?」という言葉を飲み込みました。
食べた餃子は美味しかった。
そのときに「注文をまちがえる料理店」というワードが浮かんだのです。

仲間になってもらいたい人の「三つの条件」

「注文をまちがえる料理店」のプロジェクトを進めるにあたって小国氏は仲間を集めます。
認知症の方が働くレストラン。
ともすれば、認知症の人を見世物にする…そんな意見だってでてきます。

今回、小国氏は仕事ではなくてプライベートのプロジェクトとして進めていくことにしました。
仲間を集めるにあたっては三つの条件をまとめました。
① 100%おもしろがってくれる人
  「不謹慎だけど面白そう」と「ニヤリ」と笑ってくれる人
② 僕にできないことができる人
  ミッションを一人で背負わない
  自分が不得意なことを書き出していく
③ 自分の利益を捨てられる人
  「最後は目的のためにその利益を捨てられるよ、こんちきしょう」という粋な人

大事にしようと決めた「二つのルール」

メンバーが集まり、実行委員会形式で中身を具体的に考えていくことになり、ルールを決めました。
◆料理店としてクオリティにこだわる(オシャレであること、料理がおいしいこと)
 ・どうやったらみんなが「行ってみたい」と思うお店になるのか
 ・どうやったらお客様が心からワクワクできる空間を作れるのか
 ・料理の料金は均一にする
 ・お客様の期待を超える料理を提供する

◆間違えることが目的ではない。だからわざと間違えるような仕掛けはやらない
 ・お客様の中には間違えることを期待する人もいる
 ・エンターテイメントとしての料理店
 ・喧々諤々の議論をかわし「やっばり認知症の方が間違えるような設計をするのは本町転倒」と意見が一致
 ・認知症の家族の方に意見を聞く
  「間違えちゃうかもしれないけど、許してねっていうコンセプトはとてもいいと思う。でも妻にとって、間違えるということは、とてもつらいことなんですよね」
 ➡ 間違えないように最善の対応を取りながらそれでも間違えちゃったら許してね(てへぺろ)という設計にしようとメンバーで一致

間違えることを受け入れて、間違えることを一緒に楽しむ

実際に「注文をまちがえる料理店」で働いた認知症の当事者の様子から
◆元美容師のヨシ子さん
 ・接客業の経験があるので言葉遣いも丁寧でとても慣れた様子。
 ・料理を持って行くテーブルを間違えることもありました。
 ・ヨシ子さんにとって重要なのは「仕事ができる」という事実
 ・後日、ヨシ子さんはいつもは行かない近所のコンビニに行き、働いた謝礼金の封筒からお金を出してお買い物。
 → 自分で稼いだお金で、なんでも好きに買える。それができることがヨシ子さんにとって大事なことだったのではないでしょうか。
◆飲食店で働いていたテツさん
 ・オーダーを間違えないか心配している仲間に「これを渡してお客様に書いてもらおう」と素晴らしい解決策を出しました
 ・飲み物を出すタイミングをお客様の食事の様子を見ながらはかっているテツさん
 ・初日の帰りに「私一人だったら何も役に立てなかったね。仲間がいっぱいいてくれたからできたのよ」
 ・「みんながいたからがんばれた」「仲間ってほんとに大切よね」と繰り返してスタッフに話すテツさん
 → いつも明るくて、冗談もよくいうテツさんですが、深い話を聞かせてくれたてのも、教え諭すように話す様子を見たのもはじめてでした。

♥ 開店の前の朝、みんなで確認しあったこと
「働く人も、お客様も、僕たち裏方も、『やってよかったね』と笑って帰れるようなレストランにしよう」

注文をまちがえる料理店 公式ホームページ

【感想】
読んでいて「こんなレストランいいな」から「こんな地域がいいな」「こんな日本がいいな」と思いました。
「間違えること」が✖(ペケ)の風潮が強い日本。
レストランで注文と違うものが出てきたらクレームものですよね。
でもここは違う。
「間違っても大丈夫な空気がありました」…当日のアンケートの言葉です。
誰だって間違えたくて間違う訳じゃない。
心のゆとりが必要です。

これまで「認知症」というと「ご飯を食べたことを忘れる」など大変だなぁというイメージでした。
この本を読んで周りの支えがあれば認知症でも普通の暮らしができる。
そして「人の役に立っている(=仕事がある)」ことが生きていく上でどれだけ重要なことなのかを、あらためて感じました。
それは認知症の方だけでなく、全ての人にとってです。

【目次】
Prologue 「注文をまちがえる料理店」ができるまで
第Ⅰ部  「注文をまちがえる料理店」で本当にあったものがたり
第Ⅱ部  「注文をまちがえる料理店」のつくりかた
Epilogue 「注文をまちがえる料理店」のこれから

あさ出版
239ページ
2017年11月9日第1刷発行
本体価格 1400円
電子書籍あり著者 小国士朗
2003年テレビ局入局。
情報系のドキュメンタリー番組を中心に制作。2013年に9か月間、社外研修制度を利用し大手広告代理店で勤務。
その後、番組のプロモーションやブランディング、デジタル施策を企画立案する部署で、ディレクターなのに番組を作らない“一人広告代理店”的な働き方を始める。
スマホアプリやSNS向けのサービスの企画開発の他、個人的プロジェクトとして、認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」などをてがける。

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

見た目が10歳若くなる本 小川徹

「皮膚は人の内面を映す鏡」

副題
「肌+髪+腸」で外見力は劇的に変わる
ハーバード現役研究員の皮膚科医が書いた

日ごろからスキンケアをしている人には物足りなさを感じるかもしれません。
全くスキンケアをしていない人には超おススメです。
「見た目を若返りさせたい」
「張りのある肌にしたい方」は必見

おススメ度
★★★

ポジティブ皮膚科学

人々の心を明るく、気持ちを前向きにできるように、皮膚科学を基軸に他の領域との結びつきにより皮膚科学を応用する積極的なコンセプト

◆外見に自信がもてれば、人は驚くほどに前向きになり、人生が開けていく
◆外見を扱う皮膚科学には人の心を温かく、前向きにする潜在能力がある

老け見えポイント

・目の外側のシワ
・目の下のたるみ
・くま
・肌のくすみ
・髪の毛の量
◆肌の手入れは洗顔と保湿と紫外線対策
・洗顔
 弱酸性の洗顔料を使う
 泡立てる
 タオルでゴシゴシと拭かない
・保湿
 乾燥は肌の大敵
 ローション、クリーム、軟膏など自分の使い心地の良いものを選ぶ
 入浴後5分以内
 朝は洗顔後すぐ
・紫外線対策
 1.メガネやサングラスで「目からの日焼け」を防ぐ
 2.「紫外線の強い時間帯」の外出を避ける
 3.「曇りの日」も油断しない
 4.「冬」も油断は禁物
 5.「日焼け止め」を正しく使う
  → 紫外線に当たる15分前には塗り終えておく
    しっかりと厚めに塗ってこそ効果が発揮
    日光に当たった後は、すみやかに落とす

腸内環境を整えるのは食事

◆ミネラルウォーター・ローテーション
 いろいろな種類のミネラルウォーターを飲み分ける
 入っているミネラルが違うので、種類を多く飲んでバランスを整える
 常温でこまめに飲む
◆ヨーグルト・ローテーション
 ヨーグルトは腸内で善玉菌を増やし、カルシウム、タンパク質などの栄養も豊富
 ヨーグルトもいろいろな種類を食べる
 整腸作用を考えると朝に食べるのがおススメ
◆食物繊維を意識して摂取する
 食物繊維は善玉菌の発酵を促し、腸管を強化する
 善玉菌が増えることで免疫力がアップする
 ご飯、おから、そば、海藻類、イモ類、キノコ類、バナナ、りんご、ごぼうなど

髪の毛の量や色、ヘアスタイルは「見た目の若さ」において、かなり大きな部分を占める

◆洗い方
 髪の毛よりも地肌を十分に洗う
 洗髪時に頭皮マッサージを行う
 シャンプーのあとはリンスやコンディショナーを使う
◆乾かし方
 タオルで素早く乾かす
 ドライヤーやヘアアイロンは髪を傷める原因となるのであまり長時間は使わない
◆ブラッシング
 毛の流れに沿ってやさしく行う
◆栄養
 タンパク質とビタミンAの摂取が大切
 ビタミンAが不足すると、毛がもろくなる

【感想】
書いてある内容はスキンケアに普段から気をつけている人には物足りなさがあると思います。
なので普段肌の手入れをしない男性には超おススメの本となります。

肌のスキンケアだけではなく、入浴の方法、食生活についても書いています。
食生活に関しては「10種類のスーパーフード」も紹介されていますが、バランスの良い食生活をすることが大切です。
そのうえでスーパーフードを摂ることをおススメします。

水・食事・睡眠・運動…いろいろなビジネス書で書いてある、外見力をアップさせるために必要な事柄を「見た目」「皮膚科学」からの視点で書いてある本です。

【目次】
第1章 男性も女性も、第一印象を決めるのはやっぱり「肌」!
     たった7つのメソッドで、「見た目」は劇的に若返る
     ー外見力がみるみるアップする! 最先端の「肌ケア」7大メソッド
第2章 見た目年齢は「腸年齢」で決まる!
     ースーパーフードで10歳若返る欧米流「最高の食事術」
第3章 毎日の習慣で「外見力」を磨く!
     ー西洋文化と東洋文化の融合「ライフスタイル術」
第4章 「髪」が変わるだけで、驚くほど若返る
     ー「髪のケア」世界の最新情報
第5章 最低限「これ」刺繡をするだけでも見た目がまったく変わる!
     ー世界基準の常識、その他のケア
特別付録1 男性に朗報! 「やっぱりケアは面倒くさい…」という人へ
            ーたったこれだけ!〈男性向け〉超シンプル・メソッド
特別付録2 女性に朗報! イギリス発「5:2スキンダイエット」のすすめ
       ーたったこれだけ!〈女性向け〉超シンプル・メソッド
特別付録3 ドクター小川の「見た目が10歳若くなる」30のポイントを一挙公開

東洋経済新報社
2019年3月14日第1刷発行
本体価格 1400円
電子書籍あり

著者 小川徹
皮膚科専門医、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院客員研究員医学博士。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、ロンドン大学セントトーマス病院など、アメリカ東海岸、同西海岸、イギリスで、これまで豊富な国際経験をもつ。
ハーバード大学マサチューセッツ総合病院では、アメリカ専門医学書の分担執筆をしながら、「皮膚とAI」に関するマサチューセッツ工科大学(MIT)との共同研究などに取り組んでいる。
アメリカ皮膚科学会(AAD)など、多数の国際学会に所属。
欧米をはじめ、アジア、南米、アフリカなどに、グローバルなネットワークをもち、全米最大の日系情報誌「U.S.FrontLine」をはじめとする国内外のメディアでも活躍中。
東日本大震災を契機に、「ポジティブ皮膚科学」という概念を提唱している。
「ポジティブ皮膚科学」とは人々の心を明るく、気持ちを前向きにできるように、皮膚科学を基軸に心理学や芸術など、ほかの学問領域との結びつきにより、皮膚科学を応用した学術的なコンセプトである。
あこがれはマザー・テレサ。

事故調 伊兼源太郎

「問題は、向かい会わねばならない事柄から逃げるかどうかだ」by 阿南

事故調…事故調査にあたる組織の略称。事故調査委員会としての組織形態をとることがある。(ウィキペディアより引用)
おススメ度
★★★★
著者が元新聞記者なので話の展開がリアルです。
警察小説やミステリーが好きな方にはおススメです。

【あらすじ】
志村市の人工海岸で陥没事故が起き9歳の少年が意識不明の重体となる。
志村市の広報課に再就職した元刑事の黒木は被害者の長田家を訪問するが水をかけられる。
なぜ、市長がこないのか?
なぜ、すぐにすぐに来ないのか?
なぜ、謝罪はないのか?

黒木は上司から「謝罪はするな」と言われていた。
市長じきじきから黒木は事故原因と県警の動きを探るように命じられる。
それは事故の責任が市にならない様にと含められていた。

当時の資料を見直していると、1冊ファイルが見当たらない。
と、同時に黒木の家のポストに内部告発の様な内容の封書が入る。
当時工事に携わった関係者に会い話を聞いていくと、市の責任を感じる黒木。

正式の事故調が立ち上がることになった。
委員長は志村大学工学部の佐藤教授。
佐藤教授の一言で決まると言っても過言ではない。
黒木は刑事時代の情報屋、椎名の店を訪れる。
佐藤教授の弱みを握れば、こちらの思い通りになることを想定しての動きだった。

市が行う記者会見の前に黒木が事故現場に行くと、県警の同僚阿南と後輩の山際が声をかけてきた。
今の段階ではまだ県警は動かない。
下見だと言う阿南の言葉を額面通りには受け取らなかった。

紛失したファイルを工事をしたゼネコン会社に取りに行き、更に市に提出義務のないファイルも手にした黒木は、ある内容にひっかかった。
「特殊布袋を購入」調べれば調べるほど、陥没事故は予想できていたと確信する黒木。
市の責任を覆い隠すことが本当に市を守ることになるのか?
市の職員として市を守る仕事をするのか?
真実を明らかにすることが本当の市を守ることではないのか?
椎名と調べるうちに陥没事故とはまた別の市の闇の部分が明らかになる。
揺れる黒木…。

己の判断に確信が持てない理由の一つには刑事を辞めるきっかけとなった事件があった。

【感想】
この小説は実際に2001年に起きた明石の海岸の陥没事故やそれに関する報道に着想を得て執筆されたそうです。
当時、著者は神戸で新聞記者だったので事故が起きた原因であると思われる事柄にもリアリティがあります。

少しずつ市の暗部に迫っていき黒木は自分の判断に迷い、過去の自分を引きずったまま市の歯車のなろうとします。
そこで登場するのが、元の同僚であり、事故の被害者の父親であり、名も知らぬ毎日電話をかけてくるおじいさん。
「人の再生は人の支えがあってこそできるのだ」とかんじました。

そもそも、元敏腕刑事が市の職員という設定が面白い!!
読みながら、黒木さん県警に復帰しないのかなぁ、なんて思ってしまいました。

KADOKAWA
372ページ
2014年5月30日第1刷発行
本体価格 1600円
電子書籍あり

著者 伊兼源太郎
著者 伊兼源太郎
1978年東京都生まれ。
上智大学法学部卒業。
新聞社勤務を経て、2013年に『見えざる網』で第33回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー著書
「金庫番の娘」
「外道たちの餞別」
「密告はうたう」など

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

お江戸けもの医 毛玉堂 泉ゆたか

「今、同じ時を生きている縁を、精一杯大事に生きていくさ」

心を通わせるには、寄り添うことをあきらめちゃいけない。
犬医者を題材に思いやる人の温もりを描いた、江戸版“ドリトル先生”物語!

おススメ度
★★★
連作短編集
すきま時間に読むことができます。
ちょっとした息抜きに読むのに適した本です。

【あらすじ】
吉田凌雲は妻の美津、犬の白太郎、茶太郎、黒太郎、猫のマネキとで暮らしている。
凌雲は元は小石川養生所で名医と知られていたが、今は養生所を辞めて毛玉堂という動物を診察している。

凌雲と美津は幼い頃に親同士が結婚を決めた間柄だった。
凌雲が小石川養生所を辞めて戻ってきたときは、小さな家にこもって腑抜けた状態だった。
そこに美津が押しかけて凌雲の世話をし、ようやく二人は夫婦になったのだった。

ある日、美津の幼なじみで水茶屋の娘、お仙が一人の男の子を連れて毛玉堂にやってきた。
男の子の名は善次。
お仙の恋人、政之助から頼まれて善次を預かることになり、凌雲と美津の所に頼みにきたのだった。
善次が犬や猫が好きとわかり、毛玉堂の見習いにする凌雲。

そんな毛玉堂に飼い犬のコタロウが何も食べないと一人の女がやってきた。
コタロウは十二年生きているという。
女はコタロウが心配でいつもは土間で寝ているが今は自分の寝床で一緒に寝ていると言う。それを聞いて凌雲は「コタロウのために何かしてやりたいのなら、あんたがコタロウに合わせて一緒に土間に寝てやってはどうだ」
そして、元気だった頃と同じ様に接して見送ることを勧める。
女は凌雲を睨みつけて毛玉堂を去って行った。

何日かして女が凌雲にお礼を言いに来た。
コタロウは安らかに永遠の眠りについたと…。
そして凌雲に言われた通りに土間で一緒に寝ると、子どもの頃にいつも土間で一緒に遊んでいたときのことを思い出し、最後には自分の手から焼き芋を一口食べて、そのまま動かなくなった事を伝えた。
凌雲は動物にも名医であった。

美津はとあるところで凌雲が他の女性と結婚する予定だったと聞き心がざわつく。
凌雲に真相を聞くことができない美津は…。

【感想】
この物語は美津の目線で書かれています。
凌雲と美津は夫婦であってもまだまだぎこちなく、お互いを思いやる余りに遠慮してしまうところがあり、読んでいてこちらがやきもきしてしまいました。
善次の出生の秘密やお仙の恋の行方も織り交ぜていて、次はどうなるのか???
と楽しみながら読みました。
凌雲の相手が動物でも人と同じ様に、相手の立場に立って接する場面はとても好感を持ちます。

【目次】
第一章 捨て子
第二章 そろばん馬
第三章 婿さま猫
第四章 禿げ兎
第五章 手放す

講談社
258ページ
2019年7月24日第1刷発行
本体価格 1450円
電子書籍あり

著者 泉ゆたか

1982年神奈川県逗子市生まれ。
早稲田大学、同大学院修士課程卒。
2016年に『お師匠さま、整いました!』で第11回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。軽妙な筆致と、立体的な人物造形が注目の若手女性作家。著書
『髪結百花』

見えざる網 伊兼源太郎

「連絡先を知っていることが繋がりのすべてじゃない」by 凛太郎

第33回(2012年)横溝正史ミステリ大賞受賞作
伊兼源太郎氏のデビュー作
「新たな犯罪手法のアイデアが秀逸」とは選考委員の綾辻行人氏の選評です。

おススメ度
★★★★
ミステリー好きな人にはおススメ。
最初のストーリーの展開に引き込まれます。

【あらすじ】
今光凛太郎は30歳。
一人暮らしをしている会社員。
本物志向のモデルガンの開発をしている。
「いつもはっきりした形でつながっている必要があるんですか」
テレビの街頭インタビューで「SNSを利用していますか」と聞かれて答えた内容だ。
凛太郎はその後も言葉を続けていたが編集されていた。
現に凛太郎は今時の若者には珍しくSNSをほとんど利用していなかった。

真夏のある日、出勤するために最寄りの駅のホームについた凛太郎は、いつもと違いホームが混んでいることに気付く。
その殆どが、いつもはこの時間には見ない若い男たちである。
若者の集団がスマートフォンを眺めながら、一斉にホームを時計周りに歩き出した。
ホームの最前列にいた凛太郎は背中から押される状態になりあわやホームに落ちるところだった。
この事をきっかけに凛太郎は車に惹かれそうになったり、頭上から植木鉢が落ちてきたりと不穏な出来事が続くようになった。

会社が夏休みに入る前日、凛太郎は学生時代にアルバイトをしていた店「ダニーボーイ」に顔を出すのが恒例になっていた。
ダニーボーイには凛太郎の後に中学の同級生で警察官の末松千春が現れた。
千春と会うのは8年振り。
次の日、千春と凛太郎は凛太郎の実家の寺に墓参りに行った。
凛太郎はこの間起きた出来事を千春に伝えるが、警察としては事件が起きていないので取り合わないとの事。
その日は千春と凛太郎そしてもう一人、引っ越してしまったサッカー部のキャプテン野崎との三人の思い出を語り合った。

これまで3回、凛太郎は危険にあった。
そのどれもに小さな影があった。
少年は凛太郎の監視役なのだろうか?
確かめるためにわざわざ特殊なルートで新宿に出て少年を待ち伏せた。
少年は偶然だと言い張り、その場を去った。

その日の新宿駅はお盆休みで旅行に出かける人が多く、いつもより混雑していた。
ルートを変えて逆行しコンコースまで戻ったときにそれは起きた。
甲高い悲鳴と地響きの様な音が続いた。
凛太郎が振り向くと、ホームの階段に人間が折り重なって倒れていた。
さらに悲鳴と共に大勢がなだれ落ちてきた。
凛太郎達がルートを変えなければ、確実に巻き込まれていた。

自分のせいで大勢の人が巻き込まれた。
凛太郎は一人でまず自分を監視している人物を見つけることにした。
池袋駅で同じ様に背中から圧を感じた。
振り返ると混雑するホームを力ずくで突っ切る集団がいた。
集団の先頭の男は立ち止まり携帯電話に何かを打ち込んでいた。
凛太郎は男に声をかけた。
ホームを走った理由を問い詰めると「フローラポイントだよ」
お金として使えるフローラポイントを貯めるために若者はホームを突っ切ったのだ。

フローラ社から送られてくるメッセージ通りに行動した者にポイントが与えられる仕組みだ。
1ポイントは100円に換算される。
なぜ、凛太郎の行く先々で事故が起こるようなメッセージが送られてくるのだろうか?

池袋駅で一番下になっていた女子中学生が死亡したとSNSのトップニュースが流れた。

フローラ社は何の目的で凛太郎を狙うのか?
これは始まりにすぎなかった。
そして凛太郎は自分と同じ現場にいつも現れる少年「ハチミツ」と対峙する。

【感想】
以前紹介した「金庫番の娘」の著者、伊兼源太郎氏のデビュー作です。

「金庫番の娘」

今回は「SNS」に焦点を当てています。

お金はないが時間はあり欲しいものを手に入れるためにポイントを集める若者たち。
ポイントのために送られてきたメッセージ通りの行動したために、大きな事故が起きる。
若者たちは自分たちの行動が事故を起こしたとは思っていない。

今でもポイントを集めるサイトはたくさんあります。
実際には起きてはいませんが、ありえる話です。
町中には歩きながらスマートフォンを見ている人は無数にいるからです。
読みながらゾっとしました。
スマホを使っているつもりが、使われている…そんなことになっていませんか?

「情報は使い方次第」
この一文にこの小説が伝えたかったことが凝縮されています。
後半の展開は「あ~、やっぱり」と思うところもありましたが、伊兼さんはコンプリートしたい作家さんの一人になりました。

角川文庫
404ページ
2015年9月24日第1刷発行
本体価格 680円
電子書籍あり

著者 伊兼源太郎
1978年東京都生まれ。
上智大学法学部卒業。
新聞社勤務などを経て、2013年に『見えざる網』(受賞時「アンフォゲッタブル」を改題)で第33回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。

著書
『事故調』
『外道たちの餞別』
『密告はうたう』
『地検のS』など

面白い対談を見つけました。
真藤順丈×塩田武士×伊兼源太郎 「いま」と「小説」