小説 アルキメデスの大戦 佐野晶

「ここは末期を汚さぬことがせめてもの矜持です」by 平山

もともとこの原作は「ドラゴン桜」で有名な三田紀房氏の漫画です。
2015年からヤングマガジンで連載されています。
映画化にもなっており2019年7月26日公開です。
この小説は映画の内容となっています。

【あらすじ】
主人公の櫂直(かいただし)は幼少の頃から、物を見れば測っては手帳に数字を書き込んでいた。
父親との散歩は「計測の旅」だった。

1933年初夏。
山本五十六はこれからは空母の時代と睨んでいた。
大きな戦艦ではなく空母と艦載機とでこれからの軍事力の要は航空戦力だと自論を持っている。
部下の藤岡が空母計画案を作り上げた。
新型戦艦建造計画会議では、藤岡の空母計画案と海軍技術研究所所長の平山による大型戦艦案との一騎打ちとなっていた。

空母の藤岡案より大型戦艦案の方が見積もりが安く計算されており、このままだと平山案が通ってしまう…。
山本五十六は焦っていた。
空母案を通す作戦を練るためにいきつけの料亭に行き、女将に芸者衆を頼むと今日は全員お座敷がかかっているという。
主は帝大の学生。
その学生こそが櫂直だった。

櫂のたぐいまれな数学の知識と計算の速さを知った山本は櫂を海軍に招き平山案の正確な予算を計算するように伝える。
詳しい資料は何もない。
軍隊そのものが嫌いな櫂だが、実際に戦艦を見てその姿の美しさに惹かれ、計測を始める。
次の会議まで1週間。
櫂は平山案の大型戦艦の予算を出すことができるのか…。

【感想】
櫂が平山案の予算を出していく過程はスピーディな展開で次々とページをめくっていました。
山本五十六氏など実在した人物が登場するので櫂直も実在の人物なのか?と思うくらいリアリティはありました。
もう少し櫂のお父さんとのエピソードや平山の背景なども読みたいなと感じました。
この小説を読んだから、映画ではどんな風に表現されているのか興味を持ち予告編も見てみました。
封切り後は映画館に足を運びます。

映画「アルキメデスの大戦」予告編

講談社文庫
256ページ
2019年6月13日第1刷発行
本体価格 620円
電子書籍あり著者 佐野晶
東京都生まれ。
大学卒業後、会社勤務を経て、フリーのライターとして映画関係の著作に携わる

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

死神の浮力 伊坂幸太郎

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「雨」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時半
「ホンスキー倶楽部」

試聴はこちらから
https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/05/6-2_honsuki-club_20190520.mp3

ラジオネーム ジョナ

伊坂幸太郎 「死神の浮力」文春文庫

① この本のオススメどころ
タイトルに浮力とあるように、体が軽く浮かぶように、軽快で愉快な読み心地がします。
その秘密は、主人公の死神の、ちょっとずれた言動の可笑しさにあります。
「醜い?」と訊ねる女性に、「いや。見やすいぞ」と答えたり、「大名行列みたいだ」と表現する人に、「大名行列か、懐かしいな」と話したり。
死神の仕事は、人間になりすまし、調査対象が死ぬか生きるかを判定することです。
彼らが、仕事をしているときは、決まって雨が降るのです。

② その本との出会い
「死神の浮力」は長編ですが、かつて「死神の精度」という短編集が出ていて、その作品で、シリーズのファンになりました。
白状すれば、伊坂幸太郎のデビュー作を読んで以来、すべての作品を単行本→文庫の順で、数回ずつ読み返すくらいにハマっています。

③ 雨の思い出
「死神の浮力」を読んでいる数日間、雨でした。やっぱり、そうか、と感じました。

あと、大学の頃、海外研修でイギリスに一月ほど短期滞在したことがあるのですが、ロンドンはすぐ雨が降るためか、天気予報が時間単位だったり、誰も傘を持たずに、濡れるままに過ごしていたのが、印象に残っています。

「走っても、先は雨だよ」と話したとされる宮本武蔵の言葉が思い浮かびました。

【あらすじ】
娘を残虐に殺された小説家の山野辺は苦しみのなかにいた。
著名人であるが故にマスコミからの心無い取材にさらされ、さらに犯人とされていた男・本城が第一審で無罪になったのだ。

しかし、山野辺は彼が犯人であることを「知っていた」。
彼はサイコパスと呼ばれる反社会的人格者で、 自分が犯人である証拠を、山野辺宛てに送ってきていたのだった――。

控訴の猶予期間は二週間。
山野辺とその妻、美樹は一時的に自由の身になった本城を探し、動き始める。
そこに千葉という男が現れ「本城の居場所を知っている」と言う。
実は千葉は人間の生死を判定する〝死神〟だった。
山野辺夫妻は半信半疑ながらも、千葉と行動を共にすることにする。

山野辺夫妻・千葉チーム対サイコパス本城の勝負の行方は?
そして今回、千葉が「担当している」のは誰なのか?  そして調査の結果は?

著者 伊坂幸太郎
1971年生まれ
千葉県松戸市出身
宮城県仙台市在住
東北大学法学部卒業

受賞歴
1996年 第13回サントリーミステリー大賞佳作(『悪党たちが目にしみる』、大幅に改訂されて『陽気なギャングが地球を回す』として祥伝社から出版)
2000年 第5回新潮ミステリー倶楽部賞(『オーデュボンの祈り』)
2004年 第25回吉川英治文学新人賞(『アヒルと鴨のコインロッカー』)
2004年 第57回日本推理作家協会賞 短編部門(『死神の精度』)
2006年 平成17年度宮城県芸術選奨 文芸(小説)部門
2008年 第21回山本周五郎賞、第5回本屋大賞(『ゴールデンスランバー』)など

終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ 標野凪

「気づかないふりをしていただけなのだ。現実を見ないように、いつまでも変わらないと」

博多にある一軒のお店。
福岡薬院の裏通り、古いビルの2階にある小さなお店「文月」は《本が読めて手紙が書ける店》
それは1か月のうち三日月から満月まで営業する不思議な店。
外にある小さな看板には《おつかれさまのちょいごはん どうぞ》と書いてある。
そんな文月にまつわる9つの話。

葵の場合

葵は天神の百貨店に勤める50代で独身の女性。
25歳を過ぎても結婚せず仕事に夢中になる葵を思い、母は葵の直属の上司に「行き遅れてしまうから仕事を減らして欲しい、できれば昇進しないように会社に進言してほしい」と懇願したことを上司から知らされ、一人暮らしを始める。
たまに実家に行っても母の小言がうるさく滞在時間は数時間。

ある日大学時代の友人、藍子から連絡があり久しぶりに藍子の家に遊びに行く。
話題は葵の母の話。
葵の父親は昔気質の九州男児、家では何もせず買い物に行っても何も持たかった。
母親の口癖は「男の人をたててこそ立派な女性」
葵はそれが美徳とは思えなかった。
そんな父親も亡くなって来年が七回忌になる。

藍子と藍子の母との友達親子の様な様子を見て、葵は自分の母親と比べてしまう。
藍子たちをうらやましがる葵が居た。
藍子の家をあとにして、カフェ行こうとしたときに病院から電話があった。
葵の母親が怪我をして救急車で運ばれたと知らされ、病院にかけつけた。
足をくじいただけだが検査も行うため数日入院することを告げられる。

病院からの帰り道にふと路地を入ると小さな看板が目に入った。
《おつかれさまのちょいごはん どうぞ》
店に入りちょっとしたおつまみの「こつまみ」とビールを飲んで実家に帰った後、ソファに横になると、とても不思議な夢を見たのだった…。

【感想】
「食堂」「女性」「連作短編集」
私がつい買って読んでしまう小説はこの3つの条件があります。
この本は3つとも満たしているドンピシャな小説です。

この本に出てくるのは、ちょっと人生に立ち止まっている人たち。
「文月」で「こつまみ」を食べて少し元気になって
また自分の人生に戻っていきます。

私は何回かは博多や天神に行ったことがあるので、知った地名が出てくるうえに詳細な風景描写なので、本当にこのお店はあるんじゃないかと思わせます。
「文月」の女主人、文月がお店をオープンするに至った経過も最後のお話に載っていて興味深く読みました。
出てくる食べ物も美味しそうですが、お酒も詳しくお話に登場します。
作者の標野さんはお料理好きでお酒もたしなむ方だと勝手に想像しました。

最後にはレシピもついています。
おさかなのスープは作ってみたい !!

【目次】
プロローグ
月夜のグリューワイン
森のカクテル
本とおさかなのスープ
池田飲みとしろくま
柚子と適燗
スルメとてんとう虫
バレエシューズとうすぎりショウガハイボール
新茶と煮物
七月のみかづき
みかづきレシピ

ポプラ文庫
301ページ
2019年6月5日第1刷発行
本体価格 680円

著者 標野凪
調べましたが著者に関するプロフィールを見つけることができませんでした。

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

ショートショートガーデン プチコン受賞作品集 新生活 田丸雅智(編)

「短くて不思議なショートショートの世界」

この作品は、400字を上限にしたショートショートの投稿サイトで開催されたコンテスト「プチコン3 新生活」の最優秀作、優秀作の15作品を収録した本です。
テーマは「新生活」


「新生活」というテーマからゲーム、AI、恋愛や家庭…。
読後がほんわかするものから、ブラックなものまで
15ある作品のうち似通ったものはありません。

400字なのですぐに読めてしまうのですが
話によってはサラッと読み流すと最後に「?」となり
再度読み直して「そういうことか」と納得する話もいくつかありました。
400字ならではの醍醐味です。
余分な文字をそぎ落としているので、
ゆっくりと文章を脳内で画像に変換して読むことをおススメします。

15作品のうち私が好きなのは「眼窩の空」です。

この本は電子書籍版のみです。
kindleで無料で読むことができます。
pixivノベルでも無料で読むことができます。

pixivノベル 

【目次】
はじめに
ダンボリス
朝ご飯
人間の塔
新社会人
断捨離キャリー
そこは白線につき
ショートショート「内来種」
また、ふたりで
眼窩の空
新生活入荷しました
桜前線の桜庭さん
ハローライフ
随筆「新生活」に寄せて
アパートの花子さん
ニューライフセーバー
おわりに


編者紹介 田丸雅智
1987年愛媛県生まれ
東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒
現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、
「ショートショート大賞」を自らが発起人となり設立。
全国各地で創作高座を開催するなど幅広く活動。

著書
「オバペディア」
「夢巻」
「芸能人ショートショート・コレクション」など

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

死ぬくらいなら会社辞めればができない理由  汐街コナ/ゆうきゆう

「まだ大丈夫だと思ってた」

この本は著者自身が残業続きで過労のため、危うく自殺をしかけてしまった経験から書かれてあります。

「できない」と「頑張っていない」はイコールじゃない

・冷静に「できない」原因を特定し、解決策を練る
・人に相談する
・「がんばること」を目的としない
→「できるようになること」が大切
★月平均80時間以上残業をしてまでがんばることはやめる

普段どおりのことができない時点で十分におかしい

・ある日突然、起きられない動けなくなる
・悲しくないのに勝手に涙がでてくる
・食欲不振、不眠はうつの初期症状
・自分が今ストレスを受けていると自覚することが大切
・身体が丈夫な人ほど自覚しづらい
→会社を休んで自分の心と身体をメンテナンスしよう
★何があっても大丈夫な人は存在しない

逃げるが勝ち

・自分を犠牲にするのはほどほどにする
・「まだマシじゃん、私なんて…」の不幸競争には参加しない
・考えても解決しないことは考えなくていい
・足が骨折したら病院に行き治療を受けて休む、心も折れたら治療受けて治す。
★日常生活で支障がでるようなら心療内科やメンタルクリニックを受診する
 ・眠れない状態が1週間以上続く
 ・好きな料理を目の前にしても食欲がない
 ・会社に行く日の朝が憂鬱、吐き気のような症状がでる
 ・好きなことや趣味が楽しく思えない
 ・死について考えることが増えてきた
 → 以上の5点のうち3つ以上当てはまるなら受診する

自分の命と人生を優先に考える


・家族を養わないと…
・会社や顧客に迷惑がかかる
・親に心配をかけられない
・すぐに辞めたと家族に言えない
・できない奴だと思われたくない
→ 他人を中心に考えない
  会社はあなたの身体のことを考えてくれない
  自分の身体は自分で守る
・俺がやらねば誰「か」やる
★過度のストレスを受けると、逃げ出すという選択肢が見えなくなる
★「休む」「辞める」の選択肢が見えているうちに行動してみる

辞めたら辞めたでなんとかなる

・まずは自分をいたわる
・転職はできる
・「立つ鳥跡をにごしてもいい」と開き直る
★世界で一番あなたのことを理解しているのは、あなた自身

【感想】
この本を読むまで「死ぬくらいなら会社を辞めればいいのに」と思っていた一人です。
なぜ「辞める」という決断ができないのか…。
その判断ができないところまで追いつめられていることが、イラストでわかりやすく書いてありました。

当事者の実体験と精神科医の先生とのコラボなので、心療内科へのかかり方やどのタイミングで通院すればよいのかなども、各章の後にコラムとして掲載されていまする

私も以前職場でパワハラにあって、うつの診断がされ仕事を休みました。
パワハラ以外にもサービス残業もあり、休みの日も研修などでゆっくりすることが少ない職場でした。
一番忙しいときに休み、当時管理職だったので、復帰してからも他の社員と信頼関係を取り戻すに時間がかかりました。
一年後には配置転換をしてもらい心機一転で臨むことができました。
結局はその2年後にはその会社を辞めて、今は自分のライフスタイルに合った職場に再就職しました。

自殺までは考えませんでしたが、朝仕事に行くことが出来なくなったその日に心療内科に通院して休職の診断が出たときはホッとしたのを覚えています。

今、残業ばかりで自分の時間が持ててない人、そんな人が家族や友人に居る人
ぜひこの本を読んでください。



【目次】
プロローグ 昔、その気もないのにうっかり自殺しかけました。
第1章 なんで死ぬまでがんばりすぎちゃうの?
第2章 心のSOSに気がついて
第3章 がんばらない勇気
第4章 自分の人生を生きるために
第5章 世界は本当に広いんです
最終章  自分を犠牲にしてがんばりすぎちゃう人へ

あさ出版
160ページ
2017年4月10日第1刷発行
本体価格 1200円
電子書籍あり

著者 汐街コナ
広告制作会社のグラフィックデザイナーを経て漫画・イラストの活動を開始。
装丁画・挿絵・ゲームキャラクターイラスト等をてがけている。
デザイナー時代に過労自殺しかけた経験を描いた漫画が話題になり書籍化。


汐街コナ公式サイト

https://shiokonako.wixsite.com/illust-home

監修 ゆうきゆう
精神科医。
ゆうメンタルクリニック総院長。
医師業のかたわら、心理学系サイトの運営、マンガ原作、書籍執筆なども手がける著書
「5秒で好かれる心理術」
「ゆうきゆうのこころのサプリ」
「2秒で本音がわかる心理術」ほか多数

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

「12歳の文学」 小学館文庫

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」5月12日放送で紹介した本です。

東京都 ラジオネーム 泰子さん
『12歳の文学』小学館文庫


➀ この本のおすすめどころ
小学生作家さん達が書いた小説ですが、同年代の方が読む事で、共感できる部分もあるのではないかと思いました。 
また、大人の立場で読むと、当時の自分を振り返ったり、子供の気持ちに寄り添う事が出来たりするのではないかと思いました。
小学生作家さん達が、時を経てこの本を、自分の作品を振りかえって書いた文章もあり、とても興味深かったです。

② この本との出会い
『12歳の文学』は読書メーターで、読み友さんの投稿を見て知りました。

➂ 子どもの頃の思い出
子供の頃は、交われない子だったと思います。
一緒に遊んだりしましたが、興味の対象が周囲と違う…(今もそういう部分がありますが)この本を読み、読書が大好きだった(他に楽しめる選択肢が少なかった)小学生時代を思い出しました。

父が買ってくれた『少年少女世界の名作文学全集全50巻』?だったと思いますが、これが読書が好きになったきっかけでした。
読書が好きだった当時のメリットとして、国語の成績は、漢字の書き取り以外はほぼ満点。デメリットとして、勉強はしなくても何とかなる…という、安易な考えがどこかに根付いたようで、高校時代は陸上競技に熱中し、成績は散々でしたが、ミュージシャンという仕事と、子育てから解放された後、再び本を読むようになりました。

書く事を考えるようになったのは、中学3年の時の英語の先生との出会い。
詩も書いていた先生に抱いた淡い思いが懐かしいです。
今は読書感想文しか書きませんが。
ごめんなさい、話がそれてしまいました。

【12歳の文学】

小学生限定・新人公募文学賞として二〇〇六年にスタートして以来、多くのメディアで取り上げられ注目されている「12歳の文学賞」初代受賞作・上位作品を収録した本です。
「さよなら田中さん」の著者鈴木るりかさんもこの賞の受賞者です。
なんと鈴木さんは、小学4年生から6年生まで史上初の3年連続大賞を受賞し、受賞作をまとめたデビュー作『さよなら、田中さん』には、大賞受賞作の2作も収録されています。

小学校を卒業する”12歳”を迎えられた機会に、「12歳の文学賞」自体が「卒業」というかたちで、区切りをつけたいと考えています…ということで終了しています

12歳の文学賞サイト

https://sho.jp/12sai