遥かなる水の音 村山由佳



今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

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テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

ラジオネーム ゆみこさん

「村山由佳さん」

①村山由佳さんのおススメどころ
最近は官能的な側面ばかりクローズアップされている由佳さんですが、本質は深く“人”を描く人。
柔らかくしなやかで、でも心はジュッと焦げそうに熱い人となりも大好きです。

②おススメの作品
直木賞受賞作の「星々の舟」もとてもいいけど、一番は何と言っても「遥かなる水の音」。 

③気になる作家さん
最近出会った作家さんでは一木けい(いちき けい)さん。
ビュー作の「1ミリの後悔もない、はずがない」がど真ん中でした。
次作の「愛を知らない」はちょっと物足りなかったけど、これからが楽しみな作家さんです。

「遥かなる水の音」
パリで、ひとりの青年が死んだ。
最期をともに過ごした同居人は、ゲイの中年フランス人だった。
青年の遺言は、「遺灰をサハラにまく」こと。
フランス、スペイン、モロッコ―。
青年の姉、友人のカップル、同居人のグループは、様々な思いを抱えたまま、遺言を叶える旅に出るが…。

村山さんと深夜特急シリーズの沢木耕太郎さんとの対談が集英社のサイトにあります。

https://www.shueisha.co.jp/harumizu/taidan/index.html

村山由佳 プロフィール
1964(昭和39)年、東京都生れ。立教大学卒。
1993(平成5)年『天使の卵―エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。
2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞した。

著書
『アダルト・エデュケーション』
『放蕩記』
『天使の柩』
『ありふれた愛じゃない』『La Vie en Rose ラヴィアンローズ』『嘘 Love Lies』『ミルク・アンド・ハニー』『燃える波』など。

著者 一木けい

1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。
2016年、「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2018年、受賞作を含む単行本『1ミリの後悔もない、はずもない』(新潮社刊)でデビュー。
現在、バンコク在住。

「1ミリの後悔もない、はずもない」
【あらすじ】
「俺いま、すごくやましい気持ち……」わたしが好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。あの日々があったから、そのあと人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられた――。
ひりひりと肌を刺す恋の記憶。
出口の見えない家族関係。
人生の切実なひと筋の光を描く究極の恋愛小説。
R-18文学賞読者賞受賞作。

夢も見ずに眠った 絲山秋子

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマ「新刊が出るとつい買ってしまう作家」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

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ラジオネーム 星の王子さま
「新刊が出るとつい買ってしまう作家」
絲山秋子さん

① 絲山秋子さんのおススメどころ
私と同じ群馬県高崎市在住の絲山秋子さん。
出版不況が叫ばれている今、特に純文学のジャンルは書き手も読み手も絶滅危惧種ではないかと思ってしまうぐらいですが、絲山秋さんはご自身の信念に基づいて常にぶれず、様々なテーマで純文学を追求されている作家さんです。
その文章は簡潔でありながらも淡々と書かれており、独特な世界感を作り上げています。

② おススメの作品
芥川賞受賞作の「沖で待つ」や、「袋小路の男」など代表作が多数ありますが、今一番のオススメは最新長編「夢も見ずに眠った」です。
この作品は夫を熊谷市に残し、札幌市へと単身赴任した妻のふたりが、お互い離れて暮らすうちに次第にすれ違っていきながらも新たな場所にたどり着く物語です。

③ 今、注目している作家
水墨画家であり作家の砥上裕將(とがみひろまさ)さん。水墨画をテーマにした最新刊「線は、僕を描く」は今年読んだ本の中でナンバー1です。

「夢も見ずに眠った」あらすじ

夫の高之を熊谷に残し、札幌へ単身赴任を決めた沙和子。
しかし、久々に一緒に過ごそうと落ち合った大津で、再会した夫は鬱の兆候を示していた。高之を心配し治療に専念するよう諭す沙和子だったが、別れて暮らすふたりは次第にすれ違っていき…。
ともに歩いた岡山や琵琶湖、お台場や佃島の風景と、かつて高之が訪れた行田や盛岡、遠野の肌合い。そして物語は函館、青梅、横浜、奥出雲へ―土地の「物語」に導かれたふたりの人生を描く傑作長編。

河出書房新社
304ページ
2019年1月26日第1刷発行
本体価格 1750円 
電子書籍あり


プロフィール
1966年東京都生れ。
早稲田大学政治経済学部卒業後、住宅設備機器メーカーに入社し、2001年まで営業職として勤務する。
2003年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞、2004年「袋小路の男」で川端康成文学賞、2005年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、2006年「沖で待つ」で芥川賞を受賞。

著書
『逃亡くそたわけ』『ばかもの』『妻の超然』『末裔』『不愉快な本の続編』『忘れられたワルツ』『離陸』など多数。

絲山賞について

絲山賞とは、一年間で絲山秋子が読んだもののなかで 一番面白かった本に差し上げている賞です。
年末にweb日記上で発表されます。(第一回のみエッセイの中で発表)
本人への連絡等はしません。 (出版社が連絡している場合は多い)

名誉、ありません。正賞、副賞、ありません。
つまるところ「我が家の十大ニュースってなんだっけ」と 年末の食卓で語られるような、そんな程度の賞です。
単行本の帯や、対談等に採用されることがありますが、 これは受賞者側の「粋な計らい」によるものです。

2018年
第15回絲山賞は、内田洋子著『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)です。
本屋大賞に、新たにノンフィクション本部門が創設され、その大賞候補に、『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』がノミネートされました。

人知れぬ山奥に、本を愛し、本を届けることに命を懸けた人たちがいた。
小さな村の本屋の足取りを追うことは、人々の好奇心の行方を見ることだった。これまで書き残されることのなかった、普通の人々の小さな歴史の積み重なりである。
わずかに生存している子孫たちを追いかけて、消えゆく話を聞き歩いた。
何かに憑つかれたように、一生懸命に書いた。

イタリアで暮らすジャーナリストである著者が、人から話を聞いてこれまで知らなかった村に出かけて行った。つまり旅の話です。本を愛する著者の視線とフットワークによって村の良さもゆかりの人々の魅力も、どんどんひらいていくように感じられます。
( 絲山秋子 オフィシャルウエブサイトより引用 )

絲山秋子 オフィシャルサイト

色彩 阿佐元明

「仕事が片付いたら、俺の家へ夕飯を食べに来ないか」by 千秋

第35回太宰治賞 受賞作の小説です。

「太宰治賞」
三鷹市と筑摩書房が共同で主催する公募新人文学賞である。
第1回から第14回までは筑摩書房のみで行っていたが業績悪化に伴い休止、太宰治没50年の1999年より現在の形となり、年1回発表されている。
受賞は選考委員の合議によって決定され、受賞者には正賞として記念品、副賞として100万円(2008年実績)が授与される。
選考委員は加藤典洋・荒川洋治・奥泉光・中島京子の4名。
締め切りは12月10日。

Wikipediaより引用

【あらすじ】
千秋は元ボクサー。
目を悪くしてボクシングは辞めて幼なじみの高俊に誘われ、塗装業の親方の元、三人で現場を回っていた。

隣町にあった同業者が廃業し、仕事が忙しくなったためもう一人雇うことになった。
求人を出してしばらくして、細くて頭の形になでつけた短髪の豆電球の様な青年。
名は加賀。
加賀は芸術の専門学校で油絵を専攻していたが、就職はしていなかった。

長く三人だったので、新しく加賀が入るために車を掃除し机を配置して迎えた。
加賀は塗装のスジがよく、塗りむらがない。
丁寧な仕事ぶりに三人とも加賀の動きに見入っていた。
歓迎会をすると、加賀はジョッキに入った酒を飲んではトイレで吐くのを繰り返した。

千秋は結婚していてもうすぐ父親になる。
千秋の妻、亜佐美は千秋が話す加賀の様子に興味を持ったようだ。
「家に呼んで夕飯をご馳走しよう」という亜佐美に千秋はすんなり同意しなかった。
親方や高俊も加賀には好意的だ。
なんとなく千秋は面白くなかった。
つい、加賀に強くあたってしまう千秋。

千秋、高俊、加賀の三人で、注文を受けた仕事を丁寧に仕上げていく。
ある会社の社長から「倉庫の壁に空の絵を描いてくれ」という仕事が入った。
加賀は壁を眺めて微動だにしない。
この仕事は加賀が中心に始まった…。

【感想】
静かな作品です。
加賀が仕事を通じて成長していく姿が淡々と描かれています。
そんな加賀を見ながら、焦りを感じる千秋。
千秋の心の葛藤も丁寧に描かれています。

半径4kmほどの中で起こる、親子の関係や夫婦の関係、同僚の関係。
焦り、戸惑い、同情など人が生きていると感じる負の感情を
「ああ、そういう気持ちわかる」と読んでいて感じました。

おススメ度
★★★★

筑摩書房
221ページ
2019年9月18日第1刷発行
本体価格 1500円

著者 阿佐元明
東京都出身、在住。
1974年生まれ、44歳、男性。

シークレットペイン 夜去医療刑務所・南病舎 前川ほまれ

「今日は失格でも、明日合格ならいいじゃないですか」by 愛内

【あらすじ】
精神科医の工藤は週に二日、夜去医療刑務所に勤務することになった。
初日から同じ精神科医の神崎に連れられて、観察室から回ることになった。
観察室は一般質とは違う特別な造りになっている。

工藤は受刑者を番号で呼び、自分の名を名乗らず診察をする。
一方神崎は受刑者の名前を呼び、冗談を交えながら診察をしていく。
観察室には工藤の幼なじみの滝沢が居た。
滝沢は殺人を犯して服役中で自殺企図があるため夜去に送られてきた。

あくまでも決められた期間内に淡々と仕事をこなす工藤。
北病舎には内科医の愛内が居て工藤を献香式…亡くなった受刑者を弔う式に誘う。
仕方なく参加する工藤。
愛内は緩和ケアもしているが工藤には受刑者に緩和ケアは必要ないと言い切る。

そんな工藤だが日が経つうちに滝沢との小学生時代の思い出がよみがえり少しずつ会話をするようになる。
ある日、神崎から作業療法を見に行くように言われる。
作業療法にはダウン症や自閉症スペクトラムや高齢者の受刑者4名が作業をしていた。
工藤はそのうちの一人と深海魚について話をするが、ダウン症の二人が喧嘩を始めたのをきっかけにパニックになってしまう。
このことをきっかけに刑務官の西川と話をするようになる。

診察をするうちに滝沢が癌に罹っていることがわかる。
心が揺れる工藤。
滝沢は工藤に「泉屋のいなり寿司が食いてぇ」とつぶやく。
工藤は滝沢の代わりに松島にある泉屋へ向かう…。

【感想】
率直な感想として軽いあまり真面目ではない感じで書かれている神崎が実は患者に寄り添った医療を展開したり、主人公の工藤が名を名乗らず受刑者を番号で呼び、冷徹な情に溺れない設定なのに、急に人間味溢れる医者に変わった感が否めないのが残念。
工藤の変化はもう少し丁寧に描いても良かったのではないだろうか?

とはいえ前半には医療刑務所の実態が所長の相沢によって語られる。
一人あたりかかる経費は400万円。
それが全て税金で賄われている。
矯正医療に関する否定的なコラムの話も出てくるが、そもそも何故否定的になるのか。
それは今、国民が医者にかかると3割を負担しなければならない。
自分達は有料なのに罪を犯した受刑者には無料で提供されることへの反発なのではないだろうか。

以前はサラリーマンなら初診時に800円払えば後は無料。
高齢者も老人医療証があれば無料だった。
それが今は個人の負担額がどんどん増えているために受刑者が無料であることに反対する人がいる。

物語の中盤には刑務所には高齢者や知的障がい者が増えていることが書かれている。
そ故か?
一般社会では就職もできず住むところも無く、出所時に渡されたお金もすぐに無くなるため、窃盗で捕まり刑務所に戻ってくるのだ。
工藤を通して今の刑務所の実情や医療刑務所の実態が描かれ骨太な内容にもなっている。

おススメ度
★★★

ポプラ社
381ページ
2019年9月19日第1刷発行
本体価格 1700円
電子書籍あり

著者 前川ほまれ
1986年生まれ。宮城県出身。
看護師として働くかたわら、小説を書き始める。
2017年、「跡を消す」で、第7回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。

前川ほまれ ツイッター

空は逃げない まはら三桃

「森羅万象の呼吸を味方につける」by 光徳

とある大学の陸上部。
棒高跳びの練習をするA太郎とB太郎。
A太郎こと佐藤倫太郎とB太郎こと佐藤林太郎。
AとBは血液型に由来している。

B太郎は高校の時から棒高跳びで好記録を出していて陸上界でも注目の的。
そんなB太郎を羨む気持ちもあるA太郎だが、二人は仲がいい。
芸術学部の絵怜奈が、いつもスケッチブックを持ち二人の跳ぶ姿を描いている。

時は現代。
リンタロウは車いす生活になり写真家として修行中。
もう一人のリンタロウは母校の大学で陸上部、それも棒高跳びの鬼コーチ。
絵怜奈はメキシコで日本人観光客を観光案内して暮らしている。

大学時代のある日、絵怜奈は「自分も棒高跳びをする」と言い出す。
全くの初心者で鉄棒で逆上がりすらできない絵怜奈には無理とA太郎もB太郎も諭すが、絵怜奈はじゃあ…と逆上がりの練習から始める。

陸上競技大会でB太郎は空に吸い込まれる様な跳躍をする。
見ていた絵怜奈は思わずB太郎が心配になり駈け出そうとするがA太郎に止められる。
B太郎は無事に着地したのだ。
絵怜奈は落ち着きA太郎に小学生の頃に友達が自ら命を絶った話を始める。
B太郎の跳躍と過去の出来事が絵怜奈の中でリンクしてしまったのだ。

写真家のリンタロウはアシスタントのコウがマラソン大会に出るのに誘われる。
車いす部門もあるのだ。
リンタロウは選手として登録するよりランナーを撮影することにした。
大会にはリンタロウの大学の後輩が出場することを知り、被写体になってもらうために母校を訪れる。
コーチのリンタロウとも久しぶりに再会。

大学時代にB太郎は久しぶりに師匠に会いに行く。
有名な陶芸家である光徳は滅多に人前には出ない。
光徳は竹のポールで刑務所の壁を飛び越えた逸話があるのだ。
B太郎はA太郎を誘い、その話を聞いた絵怜奈も着いてくる。
3人は光徳の話を聞き、帰りには絵怜奈がどうしてもと欲しがり竹のポールを持って帰ることになった。
A太郎は竹のポールで練習を始め手ごたえを感じ、新しい練習方法を思いついた。

リンタロウが撮った写真は写真家の間では有名な賞を受賞する。
そこで大学時代から初めてA太郎B太郎絵怜奈が揃って顔を合わすこととなった。

Wikipediaより引用

【感想】
最近、よくある技法?ですが、過去の話と現代の話が行き来します。
A太郎とB太郎、車いすの写真家になったのは?
陸上部のコーチになったのは?
読者にどちらがA太郎かB太郎か想像して読ませる設定になっています。
著者も「漫画や映像ではできそうにない仕掛けをしました」とウエブサイトで言っていました。


小説丸 この本私が書きました まはら三桃



いつも一緒だった3人が自分たちの道を大学在学中から進んで行くきっかけになったのは、光徳との出会いです。
人生には「自分の人生の進む方向が決まる」出会いがあります。
小説の3人は大学生の時。
その時には気付かなくても、後になって振り返ると「あの時!!」と思えます。

私自身も「自分の人生の進む方向が決まる」出会いがありました。
それも50歳目前で(笑)
それまでは、ただただ目の前の仕事や家事をこなす毎日でした。
「定年になったら犬を飼って、散歩したいなぁ」ぐらいしか思っていなかったのです。

49歳で次々と新しい出会いがあり、小学生の頃に思っていた夢が実現しました。
「ラジオのDJになりたい」「記者になりたい」
40年の歳月でテクノロジーが発達し、その頃だと「DJ」も「記者」も一握りの人しか慣れませんでしたが、今はネットを通じて可能となりました。

人生の先輩、一歩先を進んでいる人、何事か成し遂げている人、自分より先を行っている人との出会いによって自分の人生を切り開くことができる可能性があります。
人生100年時代も到来します。
何歳になっても夢を持ち続けること。
一歩踏み出す勇気を持つこと。
この小説を読んで、そんな事を思いました。

おススメ度
★★★★

小学館
226ページ
2019年9月11日第1刷発行
本体価格 1400円
電子書籍あり

著者 まはら三桃(まはらみと)
1966年、福岡県北九州市生まれ。
2005年、講談社児童文学新人賞佳作を受賞。
『鉄のしぶきがはねる』(講談社)で2011年度坪田譲治文学賞、第四回JBBY賞を受賞。

著書
『白をつなぐ』 など

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

カシコギ  チョ・チャンイン

今回は私のラジオ番組「ホンスキー倶楽部」で紹介した本です。
テーマは「あなたの号泣本」

インターネットラジオゆめのたね放送局
関西チャンネル
毎週日曜午前11時~11時

試聴はこちらから

https://yumepod4.xsrv.jp/wp-content/uploads/2019/08/9-2_honsuki-kurabuheyokoso_20190807.mp3

ラジオネーム 冷麺マン4世

チョ・チャンイン「カシコギ」

① この本のオススメどころ

変わった習性を持った、カシコギという魚がいます。
母カシコギは子どもを産むと家族を去り、残った、父カシコギが、食べず眠らずで外敵から子どもを守ります。
やがて子どもが成長すると、父は岩に頭を打ち付け死んでしまうのだそうです。

本書は、それを人間の家族に当てはめた小説です。
作中に出てくる言葉は、折に触れ思い出しては、自分を戒めています。
「あなたが虚しく過ごした今日は
昨日、死んでいったものたちが
あんなにも生きたいと願った明日」

② この本との出会い

大学時代に、「文章演習」の恩師が、この作者の二作目(灯台守)を翻訳した際に、紹介してくださったのが、出会いのきっかけです。

まず、一読して、涙が止まらないどころか、嗚咽からの号泣コース。
告白すれば、映画でも小説でも泣いたことがなかったので、せっかくの涙が勿体ないと思い、もう一度、ラスト付近を読み直し、もう一度、号泣しちゃいました。
ちなみに、再読でも、やはり泣けました。きちんと、泣いたのは、この、1冊だけです。

③ 直近の号泣した出来事

そんなわけで直近というには、あまりに昔の20年前で、「カシコギ」を読んだとき、となりますかね(笑)
普段、泣くことがないので?!
あ。夫婦喧嘩のあとの、仲直りかな。なんちゃって?
号泣する準備ができたら、ハンカチとカシコギを手に、ぜひお試し下さい。

【あらすじ】
白血病で入院中の息子、タウムを必死で看病する詩人のチョン。
彼は幼い時、母親は出奔、その後父親から心中を持ちかけられるという悲惨な過去をもつ。

それだけに家庭と息子への思いは強かったが、妻は現実に目覚め、自らの望みをかなえるために大学の恩師のもとに走り、フランスに発ってしまう。

世間とうまく折り合えず、不況で仕事も失い、それでもひとり、息子のために必死に尽くすチョン。
終わりのない過酷な闘病のなかで、タウムは言う。

「パパ、あとどのくらい苦しめば死ねるの。こんなに苦しんだんだから、もう死んでもいいじゃない」

だが、奇跡的にタウムに適合する骨髄ドナーが見つかった。
絶望に沈む父と子に一筋の光が差す。しかし……


著者 チョ・チャンイン
韓国の中央大学及び同大学院で文学を専攻。
雑誌社、新聞社の記者として勤務した後、作家に転身。
2000年父と息子の愛情をテーマとした「カシコギ」を発表。
200万部のベストセラーとなり、テレビドラマ化され、劇場でもロングラン上演を果たすなど“カシコギ・シンドローム”を巻き起こした。
2011年同作は日本で「グッドライフ」としてテレビドラマ化される。