桜ほうさら 宮部みゆき

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「人には大きな口を叩かず、一途に生きる道がある」by 坂崎

【あらすじ】
江戸深川の富勘長屋に住む古橋笙之介は上総国搗根藩から父の汚名を晴らすためにやってきた。
笙之介の父は全く身に覚えのない賄賂を受け取った罪を着せられたのだ。
証拠は父、宋左右衛門からの賄賂の受け渡しや額が書いてある文書だった。
宋左右衛門は身に覚えがないが、その文書の字は自分の手跡なのである。
何者かにはめられた宋左右衛門は切腹し、介錯は兄の勝之助だった。
お家は取り潰しとなり、母と兄は母の実家に身を寄せていた。

笙之介は留守位役の坂崎を訪ね富勘長屋に住み、貸本屋の治兵衛からの写本の仕事を生業としている。
長屋からは一本の桜の木が見える。
まだ桜に花が咲き始めた頃に笙之介は桜の木を眺めるおかっぱ頭の少女を見かける。
桜の精のようだ…笙之介と和歌とが出会った瞬間だった。

江戸でただ住んでいるだけでは何も手がかりが掴めない笙之介は治兵衛に他人の文字をそっくりそのまま書ける人に心当たりはないか知人に聞いて欲しいと頼む。
笙之介自身も代書屋を巡り、同じ様に聞いてまわっていた。
そんな笙之介の長屋にある日、酒臭い男が訪れる。
自身を押込御免郎と名乗るその酔っ払いは自分が探している代書屋だと言うのだ。
怪しむ笙之介。
本当にこの男が探している男なのか?
押込は字を書き始めた…。

PHP研究所より引用

【感想】
文庫本で上下巻になる大作です。
父親の仇の話だけではありません。
同姓同名「古橋笙之介」を訪ねてくる奥州の武士の話。
貸本屋の治兵衛が懇意にしている貸席屋の娘が誘拐された話。
などが途中で入っています。

それぞれの話から笙之介と和歌の距離が少しずつ縮まってきます。
全体を通して書かれているのは、親と子、夫婦の在り方です。
宋左右衛門と笙之介、宋左右衛門と勝之助、笙之介と里江
和歌と母、お吉と母、治兵衛と亡き妻
親子だからこそ思ったことを相手に伝えることの大切さが第三章の拐かし(かどわかし)を読んで思います。

宮部さんは悪党にもそうならざるをえない状況を匂わせる文章を書くのが上手い小説家です。
それはきっと宮部さん自身が人を信じることができる人なのではないか…。
そんなことを思いました。
ラスト近くでは涙ぐんでしまいました。

表紙や挿画の三木謙次さんの絵が可愛くて、お話を引き立てています。

おススメ度
★★★★

時代小説やミステリー好きな人におススメです。
人情噺でもあります。

【目次】
第一章 富勘長屋
第二章 三八野愛郷録
第三章 拐かし
第四章 桜ほうさら

PHP文芸文庫
412ページ(上巻)
428ページ(下巻)
2016年1月5日第1刷発行
本体価格 上下巻共740円

著書 宮部みゆき
1960年(昭和35年)、東京生まれ。

87年、「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。

92年、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、93年、『火車』で山本周五郎賞、97年、『蒲生邸事件』で日本SF大賞、99年、『理由』で直木賞、2007年、『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞。 

著書時
『<完本>初ものがたり』
『あかんべえ』
『孤宿の人』
『荒神』
「ぼんくら」
「三島屋変調百物語」
『模倣犯』
『小暮写眞館』
『ソロモンの偽証』など多数

PHP文庫 「桜ほうさら」ページ

上記サイトに入ると、人物相関図や宮部みゆきさんのインタビュー記事も読めますよ。

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