谷中の街の洋食屋 紅らんたん 濱野京子

「富美さん、夢を失ったかもしれないでしょう」by 千佳

【あらすじ】
奈留美…紅らんたんでアルバイトをしながら就職先を探している。
千佳…紅らんたんのオーナー、コーヒー担当、74歳
真崎…紅らんたんのマスター、コーヒー以外のメニューを作る。千佳とは昔からの知り合い

ふとしたきっかけで「紅らんたん」で働くことになった奈留美。
「紅らんたん」のお客様はご近所の高齢の方がほとんど。
常連客の一人、富美さんの家に千佳と奈留美は訪問する。

富美さんはご主人に先立たれて独り暮らし。
その富美さんに再婚を考える人が現れた。
相手は観葉植物を販売する会社の社長。
亡くなったご主人は生前に「俺か死んだら再婚してもいいんだよ」
と言っていたにも関わらず、富美さんの夢枕に立つのだ。
何度も。
奈留美は寝室へ案内されると気配を感じた。

数日後、富美は相手を連れて「紅らんたん」にやってきた。
食事を終えたころ、店に富美の息子からの電話があった。
富美が先に家に戻ってしばらくしてから再度、電話がかかる。
富美の息子が話をしたいと言っているのだ。
男は二人分の食事代を払って、そのまま行方をくらました。
(三 夢枕にたつ人)

【感想】
連作短編集です。
「紅らんたん」に集まる常連客の人々が皆、個性的です。
話が進むにつれて、千佳と娘の話になります。

いくつになっても恋がしたい。
女学生の様な仲の良い二人の老女。

イケメンで周りの女性にモテモテの征一。
征一の友人でぽっこりお腹の和夫。

人が60年以上生きていると様々な事があり、
今を形成しています。
いつまでも〇〇な自分でありたい…。
そんな人たちの息遣いが聞こえてくる小説です。

自分に正直に生きること。
年齢を重ねた今だから、周りに知人がいることの大切さ。
今は地域の人たちが集う、純喫茶が少なくなっています。
「紅らんたん」の様な喫茶店がこれからは求められるのではないでしょうか。

【目次】
プロローグ
一 古い手紙
二 恋模様
三 夢枕に立つ人
四 母と娘
五 千佳さんの休日
六 怪我の功名
七 汚部屋の住人
八 ワトソンがんばる
エピローグ

ポプラ社
245ページ
2019年10月4日第1刷発行
本体価格 660円

著者 濱野京子
熊本県に生まれ、東京で育つ。
児童文学作家
『フュージョン』で第2回JBBY賞、
『トーキョー・クロスロード』で第25回坪田譲治文学賞を受賞。

著書
『その角を曲がれば』
『レッドシャイン』
『碧空の果てに』
『甘党仙人』
「レガッタ!」シリーズなどがある。

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