ショパンの心臓 青谷真未

「あの絵は、俺にとって“ショパンの心臓”なのだ」by 村山

【あらすじ】

羽山健太は大学を卒業したばかり。
在学中に就職が決まらず、母親に叱られ再び就職活動を始める。
会社面接に行った帰りにふと目に留まった木彫りの仮面。
看板には「よろず美術探偵」とある。

「何か気になるものでもあったかな?」
店主の南雲に声をかけられ、従業員も募集していると聞き
とりあえず健太はバイトとして働き始める。

健太がこれまで就職出来なかった理由の一つに
面接前に会社の概要を一切読まなかったことにもある。
文章を読むことが苦手なのだ。

「よろず美術探偵」に一人の客が来る。
美術館に勤務している立花貴和子。
用件は画家の村山光雄が生前に「ショパンの心臓」と称していた絵を探して欲しいとのことだった。
南雲はこの案件を健太に任せると公言する。

貴和子自身が集めた資料を持ち帰った健太。
しかし資料を読めず「ショパンの心臓」をネット検索するとヒットした。
ショパンはパリで亡くなったが心臓だけは遺言で故郷のポーランド、ワルシャワの教会にある。
そこから村山が言う「ショパンの心臓」はある絵の一部ではないかと仮説を立てる。

仮説は立てたもののどこから手をつけて良いかわからず健太は、とりあえず貴和子の勤める美術館に行き村山光雄の絵を見せてもらおうと思いつき美術館まで行く。
アポイントも取らずいきなり現れた健太にあきれながらも数点の絵を見ることができた。

あらためて資料を読み始めると村山の絵がデパートの美術画廊に出展することになり、そこで絵が無断で切断されてしまい、激怒した村山は以後どの画廊にも絵を貸すことはなかったという記述を見つける。

健太は藤橘屋デパートの本店が山形にあることを調べ、現地に調査に行くことを決める。
店長の南雲からも承認を得、意気揚々と山形に向かう健太。
藤橘屋デパートで画廊コーナーは無くフロアマネージャーに村山の絵の事を聞くが、今は一枚も無く、何の情報も得られなかった。

南雲からはきちんとした報告書でなければ、出張費は自費になると言われ慌てる健太。
「ショパンの心臓」の絵は見つかるのか???

【感想】
この小説では読んでいて不甲斐ない健太の成長記の様で実は、一枚の絵を通して3組の親子が描かれています。
村山光雄と父親
立花貴和子と父親
羽山健太と両親
親が子に向ける愛情が額面通りに子に受け取られることは無いことをあらためて感じさせられます。
親が子を思う気持ちがありながらも、表現方法を間違えると誤解が生じてしまいます。

もう一つのキーワードは「出自」
このことで人の一生が左右されることが語られています。

最初の書き出しと書かれているテーマとのギャップがこの作品の面白さです。

ポプラ文庫
285ページ
2019年1月4日第1刷発行
本体価格 660円
電子書籍あり

著者 青谷真未
東京都出身。
『鹿乃江さんの左手』で第二回ポプラ社小説新人賞・特別賞を受賞し、銅座区でデビュー。
『ショパンの心臓』(ポプラ社)や『君の嘘と、やさしい死神』(ポプラ文庫ピュアフル)など、ミステリから青春者まで多彩な表現力で注目を集めている。

著書
「となりのもののけさん」
「神のきまぐれ珈琲店」
「夏の桜の満開の下」など