色彩 阿佐元明

「仕事が片付いたら、俺の家へ夕飯を食べに来ないか」by 千秋

第35回太宰治賞 受賞作の小説です。

「太宰治賞」
三鷹市と筑摩書房が共同で主催する公募新人文学賞である。
第1回から第14回までは筑摩書房のみで行っていたが業績悪化に伴い休止、太宰治没50年の1999年より現在の形となり、年1回発表されている。
受賞は選考委員の合議によって決定され、受賞者には正賞として記念品、副賞として100万円(2008年実績)が授与される。
選考委員は加藤典洋・荒川洋治・奥泉光・中島京子の4名。
締め切りは12月10日。

Wikipediaより引用

【あらすじ】
千秋は元ボクサー。
目を悪くしてボクシングは辞めて幼なじみの高俊に誘われ、塗装業の親方の元、三人で現場を回っていた。

隣町にあった同業者が廃業し、仕事が忙しくなったためもう一人雇うことになった。
求人を出してしばらくして、細くて頭の形になでつけた短髪の豆電球の様な青年。
名は加賀。
加賀は芸術の専門学校で油絵を専攻していたが、就職はしていなかった。

長く三人だったので、新しく加賀が入るために車を掃除し机を配置して迎えた。
加賀は塗装のスジがよく、塗りむらがない。
丁寧な仕事ぶりに三人とも加賀の動きに見入っていた。
歓迎会をすると、加賀はジョッキに入った酒を飲んではトイレで吐くのを繰り返した。

千秋は結婚していてもうすぐ父親になる。
千秋の妻、亜佐美は千秋が話す加賀の様子に興味を持ったようだ。
「家に呼んで夕飯をご馳走しよう」という亜佐美に千秋はすんなり同意しなかった。
親方や高俊も加賀には好意的だ。
なんとなく千秋は面白くなかった。
つい、加賀に強くあたってしまう千秋。

千秋、高俊、加賀の三人で、注文を受けた仕事を丁寧に仕上げていく。
ある会社の社長から「倉庫の壁に空の絵を描いてくれ」という仕事が入った。
加賀は壁を眺めて微動だにしない。
この仕事は加賀が中心に始まった…。

【感想】
静かな作品です。
加賀が仕事を通じて成長していく姿が淡々と描かれています。
そんな加賀を見ながら、焦りを感じる千秋。
千秋の心の葛藤も丁寧に描かれています。

半径4kmほどの中で起こる、親子の関係や夫婦の関係、同僚の関係。
焦り、戸惑い、同情など人が生きていると感じる負の感情を
「ああ、そういう気持ちわかる」と読んでいて感じました。

おススメ度
★★★★

筑摩書房
221ページ
2019年9月18日第1刷発行
本体価格 1500円

著者 阿佐元明
東京都出身、在住。
1974年生まれ、44歳、男性。