京都祇園もも吉庵のあまから帖 志賀内泰弘

「仕事いうんは、頑張るもんやない。気張るもんや」by もも吉

【あらすじ】
タクシードライバーの美都子はもも也という名前で元祇園の芸奴だった。
母親のもも吉も元芸奴で花街のお茶屋の女将をしていた。
美都子の母親は今はお茶屋を閉め、改装し一見さんお断りの甘味処「もも吉庵」を開いた。

祇園に「仕込みさん」としてお茶屋にする奈々江は、初めて美都子に会った時から叱られたので会うだけで緊張していた。
関西の出ではないのでイントネーションも違い、そのことでも怒られた。

美都子はある日、安井金毘羅さんで奈々江を見かける。
仕事を抜け出して金毘羅さんに行く奈々江に対して美都子は「何サボッてはるの?」と咎められたのだ。
奈々江は美都子に自分を重ねる。
あの日、奈々江は二つ下の妹を強く叱りつけ、妹は泣きながら登校した。
それが、妹との最後の別れだったのだ。

もも吉は美都子に奈々江の話をする。
奈々江が小学校三年生の時に、あの津波はやってきた。
家族で生き残ったのは奈々江と祖父は体育館の避難所から仮設住宅に移った。
奈々江が高校生になって祖父が肺炎で入院し、漁師に戻るのは無理だと医者に言われる。
その日にテレビで京都の舞妓を見、住み込みで働きお金がいらない事を知った奈々江は舞妓になる決意をし、学校を辞めて京都祇園にやってきたのだった。

安井金毘羅さんは一人祇園で仕込みさんとして働き、辛くなったときにお参りをし、自らを励ましていたのだった。
そんなある日、芸奴学校から奈々江が出ると、美都子が待っていた。

k*********************pさんによる写真ACからの写真 

【感想】
連作短編集です。
私は大阪に住んでいるので京都は馴染み深く、出てくる地名も「あぁ」と合点がいきます。

一言でいうと「粋」な小説です。
もも吉や美都子だけでなく、出てくる人たちの言動や振る舞いが「粋」なのです。
現代の話ですが祇園が舞台だからでしょうか、ちょっと時代小説の様な雰囲気が漂います。

花街、会社、一話一話には単なる「粋な話」だけでなくビジネスで必要なことが書かれています。それは「おもてなしの心」だったり「相手を思いやる」ことだったりします。
話に出てくる人は皆、真面目で真っすぐな人達です。
仕事は「頑張る」のではなく「気張る」
京都ならではなの名言です。
作者の人を見る目の温かさが感じられます。

どの話にも毎回もも吉さんが「帯から扇を抜いたかと思うと、小膝をポンッと打った。まるで歌舞伎役者が見得を切るように見えた」というくだりがあります。
水戸黄門の印籠を出すシーンの様で、それ毎回いるのかな??
と思いました。
このシーンがあるから、時代小説のように感じたのかもしれません(笑)

読むと作品に出てくるもも吉さんが作る「麩入りぜんざい」が食べたくなりますよ。
おススメ度
★★★★
「粋」を感じたい人におススメです。

【目次】
第一話 桜舞う 都をどりのせつなくて
第二話 悩み秘め 恵美須神社に願いごと
第三話 寺社めぐり 小春日和の栗ぜんざい
第四話 節分会 粋なお兄さんに恋をして
第五話 葛汁粉 春遠からじ吉田山
エピローグ 春ふたたび

PHP研究所
249ページ
2019年9月6日第1刷発行
本体価格 700円
電子書籍あり

著者 志賀内泰弘
名古屋市在住。
金融機関を2006年8月に退職後、強力な異業種ネットワークをベースに、コラムニスト、俳人、飲食店プロデューサー、経営コンサルタント、ボランティアなどの活動を展開。
その代表格が「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動。
思いやりでいっぱいの世の中をつくろうと東奔西走中。
月刊紙「プチ紳士からの手紙」を発行し、編集長もつとめる。
また、大学院から小学校、老年大学、異業種交流会、ロータリークラブ、商工会議所、上場企業などで講演会、セミナー、社員研修などを行なっている。

著書
『なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?』
『「いいこと」を引き寄せるギブ&ギブの法則』
『他人と比べない生き方』など