テロリストのパラソル 藤原伊織

「破壊だけを目的とする道具は弱者のためにある」by 桑野

この小説は私が大好きな作家、塩田武士・伊兼源太郎、両氏が人生が変わった小説として挙げていました。
史上初、江戸川乱歩賞と直木賞を受賞した作品です。 

おススメ度
★★★★★
ミステリーの中では、前半にばらまいた伏線を回収しきれないままに終わってしまう話があるのですが、この小説は見事です。
題名に入っているパラソルは???と思っていたら、ちゃんとありました。
ミステリー好き、ハードボイルド好きな人におススメです。

【あらすじ】
小さなバーの雇われバーテンの島村は、朝10時に目覚めると近くにある公園に行き、ウイスキーを飲むのが日課。
ある日、いつもの様に公園でウイスキーをあおっていると、小さな女の子が話しかけて来た。
将来バイオリニストになるのだと言う。
女の子が父親と去り、布教活動で話しかけてきた青年も去って、ウトウトとしかけたその時だった。
地響きが伝わってきた。
続いて悲鳴が…。
爆薬が炸裂したのだった。
周りは死者と死者の破片が散らばっている。
その中で島村は見つける、バイオリニストになりたい女の子を。
女の子の後に話しかけてきた青年に女の子を託し、その場を離れる島村。
この爆発で大学時代の友人、桑野の腕も見つかり新聞で死亡と伝えられていた。

島村は大学自体に全共闘に参加しており、桑野と共に車で爆発事故を起こしていた。
桑野が爆弾を作り、車で移動中に事故を起こして爆発したのだった。
この時から桑野と島村はテロリストとして指名手配される。
時効にはなっているが島村は警察と関わることは極力避けてきた。

島村は単独で今回の爆発を起こした張本人を突き止めようと動く。
そこにやくざの浅井、大学時代の彼女だった園堂の娘が絡んでくる。
店の周りには警察が張り込み、やくざにボコボコにされ、馴染みだった者が一人、また一人と死体で見つかる。

公園の爆発は一体なんのために?
島村は狙われたのか??

【感想】
爆弾の犯人は意外な人でした。
数々の伏線がひとつ残らず活かされています。
出てくる登場人物にもすべてに意味があり、そこがそう繋がるのか…と後半は途中で読むのを中断することに後ろ髪をひかれました。
何故、題名にパラソルなのか…。
あ、そこからなのか(ネタバレになるので書きませんが)
読んでいて、あれはどうなったんだろう?
と思っていたモヤモヤがすべて解決されます。

大学時代、多感な年ごろを全共闘で、それも安田講堂事件の真っただ中で、一つの時代を共有した人たちは、その後の人生にも少なからず影響を与えるのだろうか…。
少なくとも、島村・桑野・園堂の3人は引きずったまま、それぞれの人生を歩んでいたように感じます。

一人ひとりの人生が交錯する中で起こるすれ違い…。
ミステリーでハードボイルドなのに昭和の青春も感じさせ、ちょっとノスタルジックな小説でした。

角川文庫
374ページ
2007年5月25日第1刷発行
電子書籍あり

著者 藤原伊織
1948年大阪生まれ。
東京大学文学部フランス文学科卒業。
電通に勤務する。1977年、「踊りつかれて」で野性時代新人文学賞佳作を受賞。1985年、『ダックスフントのワープ』で第9回すばる文学賞受賞する。
その後、原稿依頼を断っているうちに注文が来なくなり、発表が途絶える。
1995年『テロリストのパラソル』を江戸川乱歩賞に応募し、受賞する。
翌年、同作で直木三十五賞も受賞した。
それまでに乱歩賞受賞作が直木賞の候補になったことや、乱歩賞受賞作家が直木賞を受賞した例はあったが、同一の作品で二賞を受賞したのは史上初であった。2002年、電通退社。

2007年5月17日、食道癌のため東京都品川区の病院で死去。
享年59歳。著書
『ひまわりの祝祭』
『雪が降る』
『てのひらの闇』など

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