注文をまちがえる料理店 小国士朗

「認知症である前に、人なんだよな」

「注文をまちがえる料理店」は期間限定のお店です。
ここで注文を取り料理を運ぶのは、認知症がある方達です。
なので、注文を間違えたり忘れたり、お水を2つ持ってきたりします。
でもお客さんは誰一人怒りません。
それどころか、間違えずに持ってくると残念がったりするのです。
そんなお店ができるまで、そしてそこであった一人ひとりのものがたりが語られている1冊です。

おススメ度
★★★★★
ノンフィクションやドキュメンタリーが好きな人
モノづくりに興味がある人
高齢者の介護に興味がある人
特におススメです。

認知症になっても最期まで自分らしく生きていく姿を支える

著者の小国氏はテレビ局のディレクターです。
2012年ある認知症のグループホームを取材していました。
ここに入居している認知症の方々は、買い物から料理・掃除・洗濯も自分でできることはできる範囲でやっています。

ある日の午後、お昼ご飯の献立はハンバーグ。
でも食卓に並んでいるのはなんと餃子。
小国氏は「あれ?今日はハンバーグでしたよね?」という言葉を飲み込みました。
食べた餃子は美味しかった。
そのときに「注文をまちがえる料理店」というワードが浮かんだのです。

仲間になってもらいたい人の「三つの条件」

「注文をまちがえる料理店」のプロジェクトを進めるにあたって小国氏は仲間を集めます。
認知症の方が働くレストラン。
ともすれば、認知症の人を見世物にする…そんな意見だってでてきます。

今回、小国氏は仕事ではなくてプライベートのプロジェクトとして進めていくことにしました。
仲間を集めるにあたっては三つの条件をまとめました。
① 100%おもしろがってくれる人
  「不謹慎だけど面白そう」と「ニヤリ」と笑ってくれる人
② 僕にできないことができる人
  ミッションを一人で背負わない
  自分が不得意なことを書き出していく
③ 自分の利益を捨てられる人
  「最後は目的のためにその利益を捨てられるよ、こんちきしょう」という粋な人

大事にしようと決めた「二つのルール」

メンバーが集まり、実行委員会形式で中身を具体的に考えていくことになり、ルールを決めました。
◆料理店としてクオリティにこだわる(オシャレであること、料理がおいしいこと)
 ・どうやったらみんなが「行ってみたい」と思うお店になるのか
 ・どうやったらお客様が心からワクワクできる空間を作れるのか
 ・料理の料金は均一にする
 ・お客様の期待を超える料理を提供する

◆間違えることが目的ではない。だからわざと間違えるような仕掛けはやらない
 ・お客様の中には間違えることを期待する人もいる
 ・エンターテイメントとしての料理店
 ・喧々諤々の議論をかわし「やっばり認知症の方が間違えるような設計をするのは本町転倒」と意見が一致
 ・認知症の家族の方に意見を聞く
  「間違えちゃうかもしれないけど、許してねっていうコンセプトはとてもいいと思う。でも妻にとって、間違えるということは、とてもつらいことなんですよね」
 ➡ 間違えないように最善の対応を取りながらそれでも間違えちゃったら許してね(てへぺろ)という設計にしようとメンバーで一致

間違えることを受け入れて、間違えることを一緒に楽しむ

実際に「注文をまちがえる料理店」で働いた認知症の当事者の様子から
◆元美容師のヨシ子さん
 ・接客業の経験があるので言葉遣いも丁寧でとても慣れた様子。
 ・料理を持って行くテーブルを間違えることもありました。
 ・ヨシ子さんにとって重要なのは「仕事ができる」という事実
 ・後日、ヨシ子さんはいつもは行かない近所のコンビニに行き、働いた謝礼金の封筒からお金を出してお買い物。
 → 自分で稼いだお金で、なんでも好きに買える。それができることがヨシ子さんにとって大事なことだったのではないでしょうか。
◆飲食店で働いていたテツさん
 ・オーダーを間違えないか心配している仲間に「これを渡してお客様に書いてもらおう」と素晴らしい解決策を出しました
 ・飲み物を出すタイミングをお客様の食事の様子を見ながらはかっているテツさん
 ・初日の帰りに「私一人だったら何も役に立てなかったね。仲間がいっぱいいてくれたからできたのよ」
 ・「みんながいたからがんばれた」「仲間ってほんとに大切よね」と繰り返してスタッフに話すテツさん
 → いつも明るくて、冗談もよくいうテツさんですが、深い話を聞かせてくれたてのも、教え諭すように話す様子を見たのもはじめてでした。

♥ 開店の前の朝、みんなで確認しあったこと
「働く人も、お客様も、僕たち裏方も、『やってよかったね』と笑って帰れるようなレストランにしよう」

注文をまちがえる料理店 公式ホームページ

【感想】
読んでいて「こんなレストランいいな」から「こんな地域がいいな」「こんな日本がいいな」と思いました。
「間違えること」が✖(ペケ)の風潮が強い日本。
レストランで注文と違うものが出てきたらクレームものですよね。
でもここは違う。
「間違っても大丈夫な空気がありました」…当日のアンケートの言葉です。
誰だって間違えたくて間違う訳じゃない。
心のゆとりが必要です。

これまで「認知症」というと「ご飯を食べたことを忘れる」など大変だなぁというイメージでした。
この本を読んで周りの支えがあれば認知症でも普通の暮らしができる。
そして「人の役に立っている(=仕事がある)」ことが生きていく上でどれだけ重要なことなのかを、あらためて感じました。
それは認知症の方だけでなく、全ての人にとってです。

【目次】
Prologue 「注文をまちがえる料理店」ができるまで
第Ⅰ部  「注文をまちがえる料理店」で本当にあったものがたり
第Ⅱ部  「注文をまちがえる料理店」のつくりかた
Epilogue 「注文をまちがえる料理店」のこれから

あさ出版
239ページ
2017年11月9日第1刷発行
本体価格 1400円
電子書籍あり著者 小国士朗
2003年テレビ局入局。
情報系のドキュメンタリー番組を中心に制作。2013年に9か月間、社外研修制度を利用し大手広告代理店で勤務。
その後、番組のプロモーションやブランディング、デジタル施策を企画立案する部署で、ディレクターなのに番組を作らない“一人広告代理店”的な働き方を始める。
スマホアプリやSNS向けのサービスの企画開発の他、個人的プロジェクトとして、認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」などをてがける。

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