川っぺりムコリッタ 荻上直子

「ご飯ってさ、ひとりで食べるより、やっぱり誰かと食べた方が美味しいよね」by 島田

映画「かもめ食堂」「めがね」 「彼らが本気で編むときは、」の 監督が贈る、書下ろし長編小説です 。


ムコリッタ(牟呼栗多) 仏典に記載の時間の単位のひとつ 
1/30日=2880秒=48分 
「刹那」は、その最小単位 

【あらすじ】
「お前とはもうこれで終わりだよ」
主人公の山田は高校生の時にそんな一言で二万円を渡され、母親に捨てられた。

家賃が払えなくなり町で出会った人の家を転々として生きる。
罪を犯して刑務所に入り、出てきた時には30歳。
出所者の就労を支援している人から北陸地方のイカの塩辛工場を紹介される。

工場の社長から「ムコリッタ」という名前のアパートを紹介された山田は、昼は塩辛工場で働き夜はアパートで過ごす生活で、初めての一人暮らしを満喫していた。

山田の隣の部屋には自称ミニマリストの島田という男が住んでいた。
島田は自分の部屋の風呂が壊れているから風呂に入らして欲しいと無理矢理山田の部屋に上がりこみ、自家製の野菜を持ってきてご飯も食べて帰った。
なんだかんだと島田は山田にまとわりつき、山田も気が付けば島田のペースに巻き込まれ、野菜作りを手伝い、山田の部屋で島田とご飯を食べるのが普通の生活になってきた。
島田の他には同じアパートには小学生の娘と二人暮らしの大家の南さん、201号室の溝口父子が居た。

塩辛工場ではイカをさばく単調な仕事だが、2か月続き社長からほめられ、山田専用の作業着を渡される。

ある日、役所から電話があり父親が亡くなったので遺骨を取りに来て欲しいと山田に連絡が来る。
父親の思い出が何もない山田は「関係ない」と電話を切ってしまう。
その話を島田にすると「山ちゃんの父親がどんな人だったとしても、いなかったことにしちゃダメだ」と厳しい表情で言われた。
ある日、工場から休みをもらった山田は長距離バスのターミナルに向かう…。


【感想】
山田、島田、溝口、大家の南。
皆、それぞれ過去があり現在があります。
お互いがそれぞれの過去を受け止め、今を共に過ごす。
みんな心に傷があるから、相手のちょっとした変化にも気付く。
とてもとても温かい話でした。

人は弱くてもいい、自分らしく生きることが大切なんだ…。
人は一人では生きてはいない。
誰かと繋がって生きている。
それを感じる一冊でした。

講談社
194ページ
2019年6月27日第1刷発行
本体価格 1500円
電子書籍あり

著者 荻上直子(おぎがみ・なおこ) 

 1972年、千葉県生まれ。
映画監督・脚本家。
千葉大学工学部画像工学科卒業。
1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学び、2000年に帰国。
2004年に劇場デビュー作「バーバー吉野」でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞受賞、2017年に「彼らが本気で編むときは、」で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞など、受賞多数。
他の監督作に「恋は五・七・五!」「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」「レンタネコ」

著書
『モリオ』