目撃 西村健

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「いったいマル対は、何を見てしまったんだろう、犯人からつけ狙われるような、何を」by 足立

【あらすじ】
戸田奈津美は電気の検針員。
娘の満里奈を幼稚園に預け、夫とは別居して離婚調停中である。
検針員の仕事は割り当てられた地区を毎日歩く。
各家に月に一度ほぼ同じ時間にメーターを見て数字を入力した検針票をポストに入れる。

奈津美の担当する地区で強盗殺人事件が起こった。
「ヒルズ」と呼ばれる豪邸が続く一角の笠木夫人が被害者となった。
その前には近くで立てこもり事件もあり、幼稚園のママ友の間でもこの話は持ち切りで、奈津美に「犯人は現場に戻るっていうから気をつけてね」と言うママ友まで居た。
それ以降、奈津美は後ろから見られている気配を感じるようになった。
警察に相談に行き、対応した穂積刑事は奈津美の担当地区や自宅周辺をパトロールすると告げる。

雑誌記者の諏訪部は大きな事件があると周辺を聞きこんで記事を書いている。
実は諏訪部には他人が留守の時に入り、本人が気づかないものを盗む空き巣の習癖があった。
記者という職業を活かし、マークした家を徹底的に調べ上げる。
そのために大きな事件が発生した周辺で住民から聞き込みをして空き巣を繰り返していた。
笠木邸は絶好の家だった。
入って物色していると思いもかけずに夫人が帰ってきた。
諏訪部は用意していた特殊警棒とサバイバルナイフを取り出した。

穂積刑事は今回の事件で容疑者が何も痕跡を残していないことに疑問を抱いていた。
警察署の中では「見立て屋」と呼ばれ、ファイリングから事件を見立てる一匹狼である。
ナイフで突き刺しているので返り血を浴びているはずの犯人が日中にも関わらず、目撃情報一つ無いのである。
犯人はかなり用意周到な人間で笠木邸に入るときから衛生服を着ていたのではないか?
と、見立てていた。

奈津美は相変わらず後ろから視線を感じていた。
ある日、自宅のポストに脅迫状が入っていた。
警察が調べたところ指紋は発見されなかった。
奈津美は何を見たのか何度も思い返すが、思い当たることは何もなかった。
その後、奈津美への脅迫状は仕事で使う自転車に貼られ、ついには自宅にも忍び込まれた。
夫との離婚調停も全く進まず、精神的に追い込まれていく奈津美。

穂積は衛生服から諏訪部にまでたどり着くのか。
奈津美は諏訪部の餌食となるのか。
事件は意外な展開を見せる。

【感想】
この小説では早い段階で犯人が明らかになっています。
刑事の穂積も早い段階で犯人を見立てています。
見立てを確信に変えるために様々な仕掛けをしていることが伏線となっています。
章によって奈津美が主役であったり、諏訪部であったり、穂積になったりと視点が変わるので、早く続きを読みたい気持ちから次々とページをめくっていきました。
同じ場面で奈津美側からの書き方と穂積刑事側からの書き方があり、これも「どうなっていくの?」と思わせます。

事件が真相に近づくにつれ、どうなっていくのか…とワクワクしましたが最後の展開に今一つ納得できませんでした。
あれほど慎重で用意周到な諏訪部が第三者に犯行をいとも簡単に知られるのだろうか?
読み返してみても、何故犯人だと知ったのかというくだりがありませんでした。
伏線の張り方や奈津美の追いつめられ方が丁寧だったので残念でなりません。
ミステリーが大好きなので次の作品を期待しています。

講談社
416ページ
2019年5月21日第1刷発行
本体価格 1800円
電子書籍あり

著者 西村健
1965年、福岡県生まれ。
東京大学工学部卒。
労働省(現厚生労働省)勤務後、フリーライターに転身。
1996年、『ビンゴ』で小説家デビュー。
2005年に『劫火』、2010年に『残火』、2011年に『地の底のヤマ』で3度日本冒険小説協会大賞を受賞。
また『地の底のヤマ』は翌年吉川英治文学新人賞を受賞した。
2014年『ヤマの疾風』で大藪春彦賞を受賞。

著書
「脱出」
「突破」
「バスを待つ男」など多数

最後まで読んで頂きありがとうございます。
当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。

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