暴力は絶対だめ! アストリッド・リンドグレ-ン/石井登志子 訳

今回は5月5日放送のラジオ「ホンスキー倶楽部」で紹介した1冊です。
テーマは「子ども」です。

京都府 ラジオネーム よんたくん
アストリッド・リンドグレ-ン/石井登志子 訳
荒井良二 カバー絵
『暴力は絶対だめ!』岩波書店

① この本のおすすめどころ
この本は、1978年にドイツ書店協会の平和賞授賞式で、リンドグレ-ンが行ったスピーチが一冊の本にまとめられたものです。
「子どもと子どもに関わる全ての人を希望へと導く名演説」であり、「子どものしつけに暴力はいらない」と力強く訴えたものです。

当時、まだまだ「鞭(むち)を惜しむと子どもはだめになる」と体罰を良しとする風潮が強かった時代でした。
実際リンドグレ-ンのこの演説の原稿はもっと穏便なもの、つまり体罰主義者や権威主義者の気持ちを逆撫でしないものに差し替えるようにとの要望が出されていました。
しかし彼女はこのような圧力に決然と抵抗し、「このスピーチができないなら、授賞式へは出席しない」とはっきり返答したのです。
ドイツ書店協会から、説得のエージェントが派遣されもしましたが、最終的には彼女の思い通りのスピーチをする条件で、授賞式への出席が叶ったのです。

この本の「おわりに」で小児科医で作家のラ-シュ・H・グスタフソンは「このスピーチがいかに時代を超越しているか」について述べています。

訳者の石井登志子さんも、スピーチで述べられたリンドグレ-ンの「憤り」は1945年の『長くつ下のピッピ』出版時には、確かにすでに存在していたとおっしゃいます。

子どもは、いかなる理由でも、おとなからの暴力や言葉の暴力で傷つけられるものであってはいけないのです。
「家庭内の独裁者」から子どもを、子どもの命を守るために、私たちは知恵を絞らなければならないのだと思います。
この本は、書店に、図書館に、学校に、あらゆる公共の場に、そして家庭に、一冊あってよい本だと思います。

② この本との出会い
美術館「えき」KYOTOで「長靴下のピッピ」展があった折に、訳者のお一人、石井登志子さんがミュ―ジアムト―クで紹介されていました。

③ こどもの頃の思い出
兄弟が四人、両親祖父母。自営業でお店のひとも数人いてガヤガヤと育ったことが今もとても懐かしく、有り難い環境でした。
父はむかっ腹で、ぶっ飛ばされたことも多々ありましたが、基本的には情の厚い人ですので憎めはしませんでした。
けれどそのような小さな暴力がなければ、私はもっと父を尊敬できていたと思います。

岩波書店
40ページ
2015年8月7日第1刷発行
本体価格 900円

著者 アストリッド・リンドグレ-ン
1907~2002年。
スウェーデンのヴィンメルビューに生まれる。
田園地帯の小さな農場で4人兄弟の長女として、幼い頃から大自然とともに幸福な子ども時代を過ごしたという。
1944年『ブリット・マリはただいま幸せ』で出版社主宰の少女コンテストの二等賞を得てデビュー。
以降、児童書の編集者として働きながら多くの作品を発表し続けた。
1945年には、彼女の娘の為に話して聞かせていたという『長くつ下のピッピ』を執筆、以降『やかまし村の子どもたち』『名探偵カッレくん』のシリーズ、『ミオよ、わたしのミオ』『はるかな国の兄弟』(以上岩波書店)など、彼女が生み出した世界中で愛されている物語は130作品以上にのぼり、「こどもの本の女王」と呼ばれた。
1958年には『さすらいの孤児ラスムス』で国際アンデルセン賞を受賞。
2002年には、スウェーデン政府が彼女を記念して、児童青少年文学賞である「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を創設。
2005年に日本人初としてこの本のカバー絵を担当した荒井良二が受賞した。

訳者 石井登志子
1944年生まれ。
日本の児童文学の翻訳家。
同志社大学卒業。
スウェーデンのルンド大学でスウェーデン語を学ぶ。
ベスコフやリンドグレーンの作品など北欧の児童文学作品を多数翻訳している。

カバー絵 荒井良二
1956年山形県生まれ。
絵本の制作を中心に、イラストレーション、小説の装画、挿絵、広告、舞台美術、アニメーションなど幅広く活躍中。
『ルフランルフラン』で日本絵本賞を、『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったのでまどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を受賞するほか、ボローニャ国際児童図書展特別賞、小学館児童出版文化賞、講談社出版文化賞絵本賞など受賞多数。
2005年には日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。また、NHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを担当、14年より「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」アーティスティック・ディレクターに就任するなど、その活動の幅を広げている。