「何があっても、あの襖の奥を開けて中を覗くことはなんねえぞ」by 弥兵衛
【あらすじ】
弥兵衛は父親母親を相次いで亡くし一人暮らし。
ある日、庄屋が弥兵衛の元を訪ねる。
弥兵衛の父親が庄屋に借金をして母親が機を織って少しずつ返してきたが、その母親も亡くなったので弥兵衛に返済を迫る。
返済を待ってくれという弥兵衛に庄屋は父親と母親を罵り、借金が返せないなら村から追放するとまで言った。
父母を罵られて我慢できない弥兵衛は隠しておいた鍬を掴んで庄屋を殺してしまう。
庄屋の死体を機織り部屋の奥の部屋に隠した直後に、つうがやってきた。
数日前に罠から助けてくれた弥兵衛の元に機を織るためにやってきたのだった。
機織り機を拒む弥兵衛を説得したつうは機織り部屋に行くときに
「つうが機を織っている間は障子を閉めたまま決して中を覗かないでください」と言うと弥兵衛は機織り部屋の奥にある襖を見て思いもよらない言葉を発した。
「何があっても、あの襖を開けて中を覗くことはなんねえぞ」
つうが織った反物は高く売れ評判も良く弥兵衛は毎晩つうに機を織る様に命じる。
次第に言動が荒くなる弥兵衛につうは従うしかなかった。
一方、庄屋が帰ってこなくなり村中は大騒ぎ。
殺されたのではないかという噂が流れ、犯人を捕まえた者が次の庄屋になれる…。
村の男、権次郎は弥兵衛の父親に借金があったことを突き止め、弥兵衛が殺したのではないかと疑う。
権次郎は弥兵衛を問い詰めるが「庄屋の死体を見つけてこい」と白を切り通した。
弥兵衛の家に、あずきという娘がやってきた。
あずきを嫁にし、つうの事は機織り女だと言い切る弥兵衛。
弥兵衛に思いを寄せていたつうは怒るが、反対に弥兵衛に暴力を振るわれる。
隣に住む勘太に助けられてつうは勘太に感謝し鶴の姿に戻り夜空に飛んでいく。
ここで物語は終わらず話は勘太の息子「弥兵衛」の話になる…。

【感想】
この本は有名な昔ばなしをアレンジした短編ミステリーです。
よく知っている話だけに「こんな展開が…」とのめり込んで読みました。
あらすじを紹介したのは「つるの恩返し」が元になっています。
「決して覗くな」のセリフをつうだけでなく弥兵衛も言うのですが、
覗いてはならない理由が庄屋殺しの他にもあり、良い意味で読者を裏切ってくれます。
「一寸法師の不在証明」はずる賢い男とそれを守る忠義の話
「花咲か死者伝言」はより忠実に復元しようとするおばあさんの話
「密室竜宮城」は用意周到な計画による復讐劇
「絶海の鬼ヶ島」は愚直な男の話
「密室竜宮城」は竜宮城の見取り図、「絶海の鬼ヶ島」には鬼ヶ島の地図が描いてあり、さらにイメージが膨らみますよ。

【目次】
一寸法師の不在証明
花咲か死者伝言
つるの倒叙がえし
密室竜宮城
絶海の鬼ヶ島
双葉社
248ページ
2019年4月19日第1刷発行
本体価格 1300円
著者 青柳碧人(あおやぎあいと)
1980年、千葉県生れ。
早稲田大学教育学部卒業。
早稲田大学クイズ研究会OB。
2009(平成21)年、「浜村渚の計算ノート」で「講談社 Birth」小説部門を受賞し、デビュー。
小説執筆だけでなく漫画原作も手がけている。
著書
「浜村渚の計算ノート」シリーズ
「ヘンたて」シリーズ
「朧月市役所妖怪課」シリーズ
「西川麻子は地理が好き。」シリーズ
「ブタカン!」シリーズ
「彩菊あやかし算法帖」シリーズなどがある。
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