阪堺電車177号の追憶 山本巧次

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「いつの間にか、レトロやとか古風やとか味があるとか、変に持ち上げられるようになっとったわ」by177号

この小説は大阪で唯一残っている路面電車「阪堺電車」の177号が主役です。
2018年大阪ほんま本大賞受賞作です。
私は大阪に生まれて、今も大阪に住んでいます。
自分が住んでいる町が舞台の小説は、ついつい手が伸びてしまいます。

この本は6つの話からなる連作短編集です。
冒頭には必ず177号の呟きから入ります。
私の好きな話は第三章の「財布とコロッケ」です。

榎本章一はあべの食堂のコック。
アベノ食堂のクリームコロッケは美味しいと噂になるほどである。
章一は通勤で乗る阪堺電車で気になる女性が居た。
女性の名は寺内奈津子。
ある日、奈津子が電車の中で財布を落とす。
章一が拾ってこれで声をかけようかと思いめぐらせている間に
奈津子は電車を降りてしまい、財布は小学生の男の子が拾って違う駅で降りてしまう。

ネコババをするに違いないと章一は後日、小学5年生の池山典郎を待ち伏せするが
逃げられてしまう。
章一は電車が同じになった奈津子に声をかけ、事情を説明して典郎に会いに行こうと誘う。
奈津子の財布は就職に合わせて、母がプレゼントしてくれたものだった。
章一と奈津子は典郎から「家を出た母親が同じ財布を持っていたから…」
と返さなかった理由を話した。
章一は典郎を自分の店に誘い、コロッケをごちそうする。
章一が誘ったのは目的があった。
その目的は…。

 

 

 

 

 

【感想】
心温まる話があったり、スカッとする話もありました。
177号が初めて運転を開始する時代から引退するまでの85年間に起こった
特徴的なエピソードが載っています。
読み終えると実は第一章から第六章まで関わっている人物がいることに気づきました。
少し残念だったのは、よくあるのですが
もう今はそんな大阪弁は使わない…というフレーズが多くみられたことです。
平成になってまで「〇〇でっか」とか言う人は少なくても私の周りには居ないなぁ。

私は普段出かけるときは車ではなくて電車を利用します。
家が駅から2分の所にあることと
利用度に比べて維持費用がかかるので車を手放したのです。

小説に出てくる阪堺電車も何度が利用しました。
路面電車は普通の電車と違い道路を走るので
町並みがより身近に感じます。
特に広島で乗った広電こと広島電鉄は路線も多く
ずっと景色を見ながら乗っていました。

今回この本を読んでまた路面電車に乗りたくなりました。
住吉さんにお参りに行こうと思います。
大人の「きかんしゃトーマス」の様な話です。
表紙もステキですよ。

大阪ほんま本大賞の過去の受賞作品も下記にあるので
未読の方はぜひそちらも読んでみてください。

 

 

 

 

 

【目次】

プロローグ 平成二十九年三月
第一章 二階の手拭い 昭和八年四月
第二章 防空壕に入らない女 昭和二十年六月
第三章 財布とコロッケ 昭和三十四年九月
第四章 二十五年目の再会 昭和四十五年五月
第五章 宴の終わりは幽霊電車 平成三年五月
第六章 鉄チャンとパパラッチのポルカ 平成二十四年七月
エピローグ 平成二十九年八月

ハヤカワ文庫
292ページ

著者 山本巧次
1960年、和歌山県生まれ。
中央大学法学部卒。
現在は鉄道会社勤務(2017年9月当時)
第13回「このミステリーがすごい!」大賞隠し玉となった
『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』で2015年にデビュー。
2018年、『阪堺電車177号の追憶』で第6回大阪ほんま本大賞を受賞。

 

著書
〈大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう〉シリーズ
『開化鐵道探偵』
『軍艦探偵』
『江戸の闇風 黒桔梗 裏草紙』など

大阪ほんま本大賞
主宰 Osaka Book One Project実行委員会
大賞 「大阪に由来のある著者、物語であること」「文庫であること」「著者が存命であること」の3条件を満たすもの
第1回受賞 高田郁 「銀二貫」
第2回受賞 三浦しをん 「仏果を得ず」
第3回受賞 朝井まかて 「すかたん」
第4回受賞 増山実 「勇者たちへの伝言ーいつの日か来た道」
第5回受賞 有栖川有栖 「幻坂」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

当ブログの記事があなたの読書のお役に立てれば幸いです。
また読みに来ていただけると嬉しいです。
グッドレビュアー

プロフェッショナルな読者

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