日日是好日 森下典子

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「決まりごとを離れたとっさのアドリブこそが、人としての実力の見せどころなのだ」

森下典子さんのエッセイです。
副題に「『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」とあるように
森下さん自身が二十歳から習い始めた
茶道の二十五年間を綴ったものです。


 

 

 

先生との関係や二十歳のころからの
疑問に思ったことや習った一つひとつを
丁寧に描いています。

森下さん自身はまず「お茶の心得」を
学ぶところから始まるのでは…
と思っていましたが、実際は
帛紗(ふくさ)の使い方でした。

只々、お茶のたてかた…お点前の作法を習うだけ。
森下さんは「なぜ、手首をくるりとやるんですか?」
「なんで?」と動作の意味を先生に尋ねますが
先生は「意味なんかわからなくても、そうするの」
というだけです。

学校教育では「わからないことはその都度、わかるまで聞きなさい」
と言われてきたのに、ここでは
「わけなんか、どうでもいいから、とにかくこうするの。
お茶ってそういうものなの」
森下さんは戸惑います。

このことを理解するのに十年以上の月日を要するのでした。
「先生は、私たちの内面が成長して、自分で気づき、
発見するようになるのを、根気よくじっと待っているのだった」

学校とお茶との違いも書かれています。
「学校もお茶も、目指しているのは人の成長だ。
けれど、一つ、大きくちがう。
それは、学校はいつも『他人』と比べ、
お茶は『きのうまでの自分』と比べることだった」

「個性を重んじる学校教育の中に、
人を競争に追い立てる制約と不自由があり、
厳格な約束事に縛られた窮屈な茶道の中に、
個人のあるがままを受け入れる大きな自由がある」

掛け軸や美しい和菓子、床の間に飾られる今朝つんだばかりの花
茶碗や道具など、どれ一つとってもそこに季節があり
その日のテーマと調和がある。
それがお茶のもてなし。

季節のサイクルに沿った日本人の
暮らしの美学と哲学を、自分の体に経験させながら
知ること…。

森下さん自身の生活の変化とお茶のお稽古の関わりなども
書かれています。

私自身、お茶を習ったことが無いので
このエッセイを読むことで
若き日の森下さんと一緒にお茶のお勉強をしているようでした。

「心を入れる」
「自分と人と比べない」
「今の気持ちを集中させる」
「学びとは自分を育てること」

お茶を通して自分と向き合う時間を作ることの
大切さをこの本から学びました。

 

 

 

 

【目次】

まえがき
序 章  茶人という生きもの
第一章  「自分は何も知らない」ということを知る
第二章  頭で考えようとしないこと
第三章  「今」に気持ちを集中すること
第四章  見て感じること
第五章  たくさんの「本物」を見ること
第六章  季節を味わうこと
第七章  五感で自然とつながること
第八章  今、ここにいること
第九章  自然に身を任せ、時を過ごすこと
第十章  このままでよい、ということ
第十一章 別れは必ずやってくること
第十二章 自分の内側に耳をすますこと
第十三章 雨の日は、雨を聴くこと
第十四章 成長を待つこと
第十五章 長い目で今を生きること
あとがき
文庫本あとがき
解説   柳家小三治

 

新潮文庫
252頁
著者 森下典子
1956年、神奈川県横浜市生まれ
日本女子大学文学部国文科卒業
大学時代から「週刊朝日」連載の人気コラム
「デキゴトロジー」の取材記者として活躍。
著書
「典奴どすえ」
「典奴ペルシャ湾を往く」
「ひとり旅の途中」など

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