波のうえの魔術師 石田衣良

 

「マーケットに恋はできない」

俺、白戸則道。
大学を1年留年して5年通い卒業した。
就職できず親父にもう一年間だけ仕送りを頼み
毎日パチンコ屋に通っていた。

ある日、開店を待っていたら右翼の街宣車が
通りの先にあるパチンコ屋の新装開店を反対していた。
1人の身なりのいい老人が、特攻服とガードマンの間に割って入っていった。
老人に叫ぶスキンヘッドを街宣車から「ヤメロー」と兄貴分の男、辰美が叫ぶ。
辰美は老人に平謝りして帰って行った。
それが、俺とジジイ「小塚泰造」との出会いだった。
数日後、ジジイから日当1万円で秘書として働かないかと持ち掛けられた。
次の日、言われた場所に行くとジジイは部屋の中でいくつものディスプレイを眺めていた。
投資家だったのだ。
俺は新聞を読み、なじみのある「まつば銀行」の株価をノートに書きこむ。
これが仕事だった。
マーケットを一から叩き込まれた俺は、ジジイがたくらむ計画に巻き込まれていく。

 

この小説は1998年の春から始まっています。
銀行が生命保険会社と組んで売り出した融資付き変額保険で
お金が返せなくなった老人に担保にしていた土地を取り上げ多くの老人が命を絶ったことをベースにしています。
小塚氏は友人をこの変額保険で亡くしてしまいます。
そのリベンジを企て相棒として白戸くんに白羽の矢を立てたのです。
投資やマーケットの事がわからなくても読めます。
読んだ後はスッとし白戸くんの成長物語でもあります。

燃えつきるまで 唯川恵

 

「愛人でもセカンドでも、何でもいい、愛されるならどんな立場でも忘れられるよりずっとマシ」

ハウジングメーカーに勤める怜子は31歳。
チーフにもなり仕事に充実感を持っていた。
5年間付き合った恋人、耕一郎からは数年前からプロポーズされていたが、
当時はチーフになったばかりで待ってもらっていた。

そろそろ結婚もいいかなと思っていた矢先、
耕一郎から別れを告げられる。
またいつもの喧嘩と同じ、すぐに謝ってくる。
いつも先に謝るのは耕一郎だもの。
そう、たかをくくっていたが、いつまでたっても耕一郎からの連絡はない。
本気の別れだった。
失恋のショックで仕事にも身が入らない怜子。

なんども電話し会ってよりを戻して欲しいと懇願するが受け入れられなかった。
あんなに順調だった仕事も穴をあけてしまう。
そんな怜子に耕一郎と共通の友人から耕一郎に新しい彼女ができたと聞いた怜子は…。


いろいろな女性が登場するけれど、女って怖い…と思いました。
独身の頃や今もそうですが、同性で同世代の友人が少ない私には
なかなか理解しがたい女同士のやり取りが綴られてました(;^ω^)

「チーム」 堂場瞬一

 

「俺のために走ってくれ」

箱根駅伝の出場をかけて行われる予選会。
出場できなかった大学から好タイムを出した選手が選ばれる
「学連選抜」チーム
監督は予選会11位美浜大の吉池
その吉池から「終わりじゃない。俺と一緒に箱根に行こう」
と、声をかけられたのは、城南大4回生の浦大地。
浦は膝を故障して1回生の時に箱根のメンバーに選ばれていたが回避。
3回生で初めて箱根10区を走るが7位で襷をもらったが
途中で失速し最下位。
昨年の自分を吹っ切るために浦は学連選抜で走る決意をする。

 

学連選抜、最初の練習日。
浦は吉池からキャプテンを命じられる。
寄せ集めチームでミーティングを行うが、その中で一人不機嫌全開の
東京体育大の山城は予選会でもトップでゴールをする天才的ランナー。
しかし、周りを一切寄せ付けず見下した態度でマイペースを貫きとおす。
「こんな寄せ集めどこがチームだ」と吐き捨てミーティングの途中で席を立つ。

合宿、直前の練習で寄せ集めから少しずつチームになっていく学連選抜。
目標は「優勝」
いよいよ箱根駅伝がスタートする。
PICK-UP TEAMの学連選抜は果たして何位でゴールするのか?

 

箱根駅伝物は「風が強く吹いている」に続いて2作目。
それも「学連選抜」という特異なチーム。
浦が昨年のリベンジが出来るのか?
後半のレースは読みごたえがあり、テレビの前で応援している様な感覚になりました。
この小説が発表された翌年に学連選抜が総合9位、復路3位となり話題になったとか。
来年の箱根は学連選抜にも注目しちゃおうと思った1冊でした。