有栖川有栖『幻坂』角川文庫

LINEで送る
Pocket

「2017上半期ベスト本」

大阪府 ラジオネーム   四十路の働き蜂

有栖川有栖『幻坂 まぼろしざか』角川文庫

① この本のオススメどころ

『幻坂』は大阪にある天王寺七坂を舞台に、それぞれの坂をモチーフにしたストーリーが綴られた怪奇譚です。懐かしさと切なさ、そしてちょっとだけホロ苦さをブレンドした短編小説集になってます。

この本のおすすめポイントは、なんと言っても『これでもかぁ〜っ‼︎』というくらい詰め込まれた大阪出身・有栖川さんの地元愛。

それが、浪花っ子の私にはすごく嬉しくて

あとがきでもご本人が書いておられるのですが、

『長い歴史を持つ街なのに、大阪は怪談とはあまり縁がない。だったら、大阪で生まれ育った物書きとして、“ないなら自分が作ってしまえ”と思った』

というくらい、有栖川さんの大阪愛がビシバシと伝わってくる作品なのです。

ですので、小説に描かれた風景も、実際の風景そのままでした。

天王寺七坂のあるあたりは大阪でも有数の神社&お寺の密集地帯で、都会のド真ん中にありながらも、庶民的で静かな場所。七つの坂道の風景がなんとも余情のあるエリアです。みなさんのイメージするコテコテな大阪とは少し違うかもしれません。

三浦しをんさんの『仏果を得ず』に出てくるラブホ街もここ。

ニシカナさんの『通天閣』や、織田作之助の『木の都』に出てくる坂道も天王寺七坂のひとつ。

朝井まかてさんの『阿蘭陀西鶴』に出てくる神社もあったり、古くは仁徳天皇や聖徳太子とも縁がある。

長い歴史を持つがゆえに、“ 民家という俗な世界 ”と “ 神社仏閣、墓地というこの世でない場所 ” が隣り合うエリア。生と死がすぐ近くにある場所を舞台にしているからなのか、物語は時空を超えたようで、どこか幻想的な感じも漂っています。読み終えた後も余韻に浸りたくて、本を片手に七坂を散歩しました。

 

② この本との出会い

ジュンク堂大阪本店の大阪地本祭(5/15〜7/30)で『編集者が選ぶ!大阪本・ビブリオバトル』というイベントがありました。そのイベントを観に行った時に、チャンプ本になったのが『幻坂』で、その場で即購入しました。

 

③ ご自身の上半期ベスト3を教えて下さい

1位 幻坂(有栖川有栖)

2位 おもちゃ絵芳藤(よしふじ)(谷津矢車 やつやぐるま)文藝春秋

幕末〜明治に活躍した浮世絵師・歌川芳藤のお話。芳藤の師匠は歌川国芳です。

時代の変化への戸惑いや葛藤、兄弟弟子の活躍を目にした時の焦り、生き方を模索する苦悩が描かれ、読み応えのある歴史小説でした。谷津矢車さんは、まだまだ若手ですが、『曽呂利! 秀吉を手玉に取った男』など、独特の視点で面白い時代小説を描いてて、注目してる作家さんです。

3位  遥かなる水の音    村山由佳 集英社文庫

「僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな」という印象的な一文で始まります。

亡き日本人青年のために、姉、同居していたフランス人、幼馴染(2人)の4人に途中からモロッコ人ガイドが加わり、故人の願いを叶えるためにフランス〜モロッコを旅する物語です。

イスラム圏や欧州・日本、それぞれの文化・価値観が相容れない難しさも上手く描かれていました。

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

LINEで送る
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください