谷津矢車 おもちゃ絵芳藤

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「おススメの時代小説」

大阪府 ラジオネーム 四十路の働きバチ

谷津矢車 おもちゃ絵芳藤
①この本のおススメどころ

浮世絵師としては芽が出なかった人物を取り上げ、あまり知られていない『おもちゃ絵』に焦点を当てたこと。

また、幕末から明治へと価値観が大きく変わる時期で、時代についていがなければ…という焦りを感じながらも、絵師としての矜持(きょうじ)を忘れずに生きようとする主人公の生き様が描かれています。

物語は歌川国芳が亡くなった1861年春から始まります。主人公は国芳の弟子・歌川芳藤。兄弟弟子がどんどん成功していく中で、浮世絵師として一本立ちできない芳藤は、入門歴の浅い弟子が請け負う『おもちゃ絵』を、死ぬまで描き続けました。

おもちゃ絵とは子供向けの絵で、切ったり組み立てたりして紙工作として遊ぶものや、福笑い、双六などがあります。一般的にイメージされる美人画や役者絵と違って子供を相手にした玩具なので、子供の『知りたい、遊びたい』という気持ちを誘うよに描かれています。そのため、絵師の間では『子供騙し』の仕事と考えられ、格下の仕事とされていたようでした。

そんな格下の仕事からなかなか抜け出せない一方で、師匠・国芳の画風や技術を後世に伝えたいと、兄弟弟子の面倒を見ながら国芳の画塾(今で言う絵画教室)をなんとか残そうと奮闘します。

しかし、時代は江戸から明治へ。
武士の時代が終わり、価値観や生活様式も大きく変わり始めて、江戸っ子に人気を博した浮世絵も西欧化の波で見向きもされなくなりました。瓦版は新聞へ、印刷技術は版画から活版へ。写真の技術も普及し、浮世絵を描く仕事は淘汰される厳しい時代。世の中の変化に遅れまいと筆を折る仲間もいたようです。
でも、芳藤は時代に流されるなんてことができませんでした。師匠の名の重みを受け止め、絵師としての矜持を貫いた彼が人生の終焉で彼自身が気づいたこと。
浮世絵師の中でも格下とされていた『おもちゃ絵の絵師』こそが自分の居場所なのでした。

②この本に出会ったきっかけ

本屋さんで偶然見つけました。
その時に『おもちゃ絵』という言葉に初めて出会い、『おもちゃ絵って何だろう』と興味を持ったこと。また、本の帯に書かれていた『あたしは絵師だ。死ぬまで絵師だ。死んでも絵師だ。』の力強いフレーズに惹かれて読み始めました。

③時代小説

時空を超えて、当時の暮らしを疑似体験できるところが面白いです。
特に史実をベースにした小説では、教科書で習った見方だけでなく、関係者の視点を通して違った方向から歴史的事件を見ることができたり、当事者たちの心の内に触れることができます。テストに出てきたあんな事件、こんな出来事も、視点を変えて見ることで『へ〜、そうだったのか』と新たな発見もありました。

美術に全然興味のなかった私が、江戸時代の絵師や浮世絵に興味をもち、色々な展覧会に足を運ぶようになったのは、時代小説で絵師の人生に触れることができたから。小説を通して知的好奇心が刺激されて、世界が広がりました。
小説を読んだ後で登場人物が描いた絵を見ると、展覧会も、より、楽しめます。

 

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